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軽商用EVは「200万円以下200kmの航続距離」が必達か!? 三菱/ホンダ/ダイハツ/スズキの軽商用EV戦争勃発! 次に出る軽EVとは

 2022年12月7日、ホンダはN-VANベースの軽商用EVを2024年春に発売すると発表し、発売に向けて実用性を検証していくという。

 では、三菱、ホンダ以外のメーカー、ダイハツ、スズキの軽EVはどうなるのか、迫ってみたい。

文/渡辺陽一郎
写真/ホンダ、三菱、ダイハツ、スズキ、ベストカーWeb編集部

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■三菱ミニキャブ・ミーブが11月24日から再販売開始

2022年11月24日から販売される三菱 ミニキャブ・ミーブ。価格は据え置きで2シーターが243万1000円~、4シーターが245万3000円。10.5kwh仕様やミニキャブ・ミーブトラックの再販売はなし

 2022年5月に発表された日産サクラと三菱eKクロスEVは、EVとして異例ともいえる売れ行きになった。

 直近は納期の遅延で受注停止に至ったが、2022年9月はサクラが4247台、eKクロスEVは1058台、10月はサクラは1880台、eKクロスEVは480台、直近の11月はサクラが3497台、eKクロスEVが310台。9月の売れ行きは、同月のリーフは1177台だから、サクラだけでも4倍近い売れ行きとなった。

 では日産サクラ&eKクロスEVに続いて投入される軽EVはどのモデルなのか? 今後、市場に投入される軽EVは、サクラなどの一般人向けの5ナンバー、軽乗用ではなく、配達などに使われる4ナンバーの軽商用EVの投入が加速していきそうだ。

 まず2022年11月24日に再販売が開始されたミニキャブ・ミーブ。搭載される駆動用バッテリーはリチウムイオン電池で、総電力量が16kWh、一充電あたりの航続距離はWLTCモードで133km(JC08モードは150km)、モーターの出力は41ps/196Nm(20.0kgm)となっている。

 一充電あたりのWLTCモード航続距離は133km(JC08モード燃費は150km)。

 一方、日産サクラ&三菱ekクロスEVは、47kW(64ps)/195Nm(19.9kgm)を発生するモーターを備え、リチウムイオン電池の総電力量は20kWh、一充電あたりのWLTCモード航続距離は180kmと、ミニキャブ・ミーブはeKクロスに比べて67km後続距離が短い。

 EVというと、床下にバッテリーが配置されるため、荷室容量が犠牲になっているのでは思ってしまうが、ミニキャブ・ミーブは航続距離と荷室容量のバランスを考えて荷室容量の減少を最小限に抑えており、ガソリン車の軽バンと同等の大容量荷室を確保。

 価格は従来モデルからの価格が据え置きで、ハイルーフ2シーターが243万1000円、ハイルーフ4シーターが245万3000円。月販目標台数は400台。

 ミニキャブ・ミーブの1充電あたりの133kmは短すぎるのではと思う人が多いのではないだろうか。

 実際、物流会社における軽商用バンの配達は「ラストワンマイル(最後の1マイルという距離的な意味ではなく顧客にモノ・サービスが到達する物流の最後の配送区間)と言われており、1日の走行距離の目安が付けやすく、例えば100kmで足りるなら、それに必要なだけのバッテリー容量を計算すればいい。

 そうしたことから、急速充電をほぼ使わずに、夜間に8時間充電すれば問題ないといわれている。

■2023年度中にスズキ、ダイハツが、2024年春にホンダが軽商用EVを発売

2022年12月7日にホンダが発表したN-VANベースの軽商用EV。2024年春の発売を目指すという

 では次に出る、EVはなにか? 現段階ではっきりわかっているのは、2022年12月7日に発表されたホンダの軽商用EVだろう。ホンダは2050年のカーボンニュートラル実現に向けてグローバルで30種類のEV展開を予定している。

 日本市場においては、ホンダは人々の生活を支える暮らしに欠かせない軽自動車にこそ、EVの普及を優先すべきと考えており、なかでも商用車のEVは環境負荷低減の観点で企業の電動化に対するニーズが高いことから、ホンダはまず軽商用EVを先に投入し、軽EVを展開していく考えだ。

 今回発表された軽商用EVは、N-VANベースで、1充電あたりの航続距離は200kmを目標としており、価格はガソリン車と同等の100万円台からの設定とすることで、カーボンニュートラル実現に向けて普及を進めていくという。

 このN-VANベースの軽商用EV(名称はe:N-VANか?)の実証実験を重ね、2024年春に発売された後、N-BOXベースの軽乗用EVが発売されるのではないだろうか。

 軽商用EVに搭載するリチウムイオン電池は、日産リーフの電池を供給している中国系エンビジョンAESCグループから調達する方針だ。

■スズキ、ダイハツ、トヨタ、CJPT4社が共同開発した軽商用EVが2023年度に登場予定

2022年6月22日、ダイハツが特許庁に「e-ATRAI」、「e-HIJET CARGO」、「e-SMART ELECTRIC」を商標登録していたことがわかった

 2022年7月19日、スズキ、ダイハツ、トヨタ、CJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)の4社は2023年度に商用軽EVバンの導入を目指して取り組みことに合意している。

 コストパフォーマンスに優れたBEV商用軽バンを実現するために、CJPTも企画に参画し、スズキとダイハツが培った小さなクルマづくりのノウハウとトヨタの持つ電動化技術を組み合わせ、スズキ、ダイハツ、トヨタの3社で軽商用車に適したBEVシステムを共同開発。

 この4社が共同で取り組むBEV商用軽バンは、福島県と東京都で社会実装プロジェクトが行われるという。

 2023年度の導入を目指すことが明らかになっているが、現段階では、この4社が開発中の軽商用EVがどのようなモデルになるのかは未発表。EVのパワートレインやバッテリーはどうするのだろうか。

 過去を遡ると2021年12月20日、新型アトレー、ハイゼットカーゴの報道発表会にて、ダイハツ工業の取締役社長奥平総一郎氏は、軽EVについても言及している。

 「シリーズハイブリッドの利点を生かしたBEVを開発し、2025年までに投入していきたい。バッテリーやモーターはトヨタグループと協力して足並みを揃えて開発、共同調達をすることになると思うが、モーターに関しては軽自動車のEVはかなり低い容量のモーターで済むため、内製も視野に入れている。

 軽自動車の商用EVの価格に関しては補助金を含め100万代に抑えておかないと買っていただけないのではないか」とコメント。

 この軽商用EVは、すでに日本の特許庁に特許申請されており、e-アトレー、e-ハイゼットとして販売されるようだ。

特許庁に登録され、公開されたダイハツの商標登録

 さらに2022年11月11日にはダイハツは世界最大のリチウムイオンバッテリーメーカー、中国のCATL社と提携を発表。またCTP(Cell-to-Pack)やBMS(バッテリーマネジメントシステム)などの高度なバッテリー技術の実現に取り組む予定と発表。

 ちょっと話が逸れてしまうが、ハイブリッドに関しては次期ムーヴに搭載される見込み。ハイブリッドシステムは、ロッキー&ライズに採用されたe-スマートハイブリッドの軽自動車版だ。マイルドハイブリッドと違って、エンジンは発電、モーターが駆動を担当するから、燃費の向上率も高い。

 ロッキーの場合、e-スマートハイブリッドの燃費数値は、ノーマルエンジンの135%だ。

 ムーヴは現行型のガソリンエンジン車が20.7km/Lだから、e-スマートハイブリッドの燃費数値が135%なら27.9km/Lだが、システムの改善で30km/Lの達成を目指す。そうなるとアルトマイルドハイブリッドの27.7km/Lを上まわる。

 次期ムーヴe-スマートハイブリッドは、価格も割安に抑える。ロッキーの場合、e-スマートハイブリッドとガソリンエンジン車の価格差は、プレミアムG同士の比較で28万9000円だ。軽自動車がコンパクトカーと同様のメカニズムを採用する場合、価格をコンパクトカーの70%前後に抑えることが多い。

 そうなると次期ムーヴのガソリンエンジンとハイブリッドの価格差は約20万円だ。この価格差は、軽自動車のノーマルボディと、エアロパーツを装着したカスタムとの差額にも相当して、ハイブリッドを設定する時の限界的な価格になる。

 つまりエンジン車とハイブリッドの価格差が20万円を超えると、割高感が強まって売りにくくなる。その意味でも次期ムーヴハイブリッドは、WLTCモード燃費が30km/Lを達成して価格アップは約20万円になると思われる。

 肝心の軽EVの発売は、2024年の後半になりそうだ。具体的な車種は、e-アトレーやe-ハイゼットカーゴが商標登録されているから、軽商用バンから開始する可能性も高い。

 アトレーやハイゼットのような軽商用バンでは、積載性の観点から床を平らに仕上げ、床の位置を持ち上げる。そのために床下(前後輪の間)に、駆動用電池を搭載するスペースも確保しやすい。

 e-アトレーやe-ハイゼットカーゴは、特許庁に提出されたレイアウトを見る限り、前席の下側に搭載されたモーターで前輪を駆動する。

 ガソリンエンジン車のハイゼットでは、エンジンを床下に搭載して、プロペラシャフトを介して後輪を駆動するから駆動方式は異なる。床下に駆動用電池を搭載するe-アトレーやe-ハイゼットカーゴではプロペラシャフトを使わない前輪駆動が合理的だ。

■スズキはエブリイベースの軽商用EVを発売すると明言

 スズキは2021年7月、トヨタ、いすゞ、日野自動車、ダイハツが資本参加しているコマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ社に加わっているが、同年11月、鈴木俊宏社長は2025年までに軽EVの販売を目指し、JFEスチールと共同で車体開発を進めていることを明らかにしている。

 価格についても「補助金含め実質100万円台に下げることが必要」と言及。2022年2月には、鈴木社長はエブリイをベースにしたBEVを今後数年以内に発売することを明らかにした。

■佐川急便は中国製EVを導入

日本のEVベンチャーASFが車両を企画し、中国で生産される佐川急便専用の軽EVバン。従来の常識にとらわれた車両企画ではコストが高く、中国勢にその隙を狙われる状況になりつつある

 そのほか、佐川急便が2021年4月、自社の配送車両約7200台を2022年9月から順次、中国製EVに置き換えると発表している。

 この軽商用EVバンは、佐川急便と日本のベンチャー企業のASFが2020年6月から共同開発。中国・広西汽車が2021年9月から量産を開始し、2022年9月から佐川急便各営業所へ順次納車している。1充電あたりの航続距離は200km。

 同社はカーボンニュートラル実現のため、2030年までにすべての軽自動車の配送車両をEV化する方針だ。

*   *   *

 ホンダが突如、このタイミングで軽商用EVバンの写真と発売時期を2024年春と発表した背景には、日本の約6割を占める軽商用バンを使用する運輸・物流業界に「ホンダは100万円台で1充電あたりの航続距離200kmのN-VANベースの軽商用バンを2024年春に発売する」と、早くからアピールし、購入してほしい狙いがあったと思われる。

 この発表後、ダイハツやスズキが追従し、それぞれの軽商用EVがどんなモデルになるのか、明らかにするかもしれない。ダイハツ、スズキの軽商用EVの導入時期は、2023年~2024年あたりになることが予想され、100万円台で1充電あたりの航続距離は200kmというのが目安になりそうだ。

 一般ユーザーの私たちから見れば、サクラ/ekクロスEVに続く、軽乗用EVの発売が待ち遠しい。

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