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 修理や整備で、ディーラーがクルマを預かる期間が長くなった時に活躍するのが代車だ。クルマを預かっている間、ユーザーに不便がないよう、ディーラーが貸し出すクルマが代車だが、最近全国のディーラーで、代車が不足している。

 この背景には、半導体不足や新車納期長期化がある。また、クルマの保有年数が長くなっていることも一因だ。ディーラーにとって、代車を用意するということが難しくなってきている昨今、その様子を取材した。

文/佐々木 亘
アイキャッチ写真/Artinun – stock.adobe.com
写真/Adobe Stock

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■いつ必要になる? どんなクルマが代車になる?

台数の決まっている代車は、短期間で効率よく貸し出すことを想定して準備してあるため、ディーラーとしては長期貸し出しをしたくないのが本音(xiaosan – stock.adobe.com)

 代車の取り扱いには、ディーラーごとにさまざまなルールがある。お店の規模(来店客数や保有客数)によって、代車の台数は概ね決まっており、それを融通し合っているのが通例だ。

 代車が必要になるタイミングはさまざま。王道は車検(宵越しの預かり)や長時間かかる整備(リコール対応など)になる。ディーラー側としても、この2点に絞って代車を提供したいというのが本音だろう。

 基本的に台数の決まっている代車は、多くのユーザーに利用してもらえるように運用していく。ひとりのユーザーに、長期間貸し出すということは、効率が悪いため本音としては行いたくない。例えば、自動車事故による作業で、修理に1カ月以上かかる場合、ディーラーは代車を出すのを渋りたくなる。

 ディーラーが代車を出してくれるから、自動車保険のレンタカー特約は結ばなくてもいいと思っている人は、ここで一度立ち止まっていただきたい。

 代車提供の壁は年々高くなっている。長期修理ではなおさら、代車の提供を受けられない場合があるため、日常的にクルマを必要とする生活をしている場合には、自動車保険のレンタカー特約を結んでおいてほしい。

 話が少し脱線したので本線に戻そう。

 試乗車と代車はまた別物だ。試乗車は、新車販売をするうえでの商売道具であり、店舗に常駐させて「売り」の活動に使いたい。つまり、代車には代車専門のクルマが用意されており、よほど困った状態にないかぎりは、試乗車を代車に出すことはないのだ。

 台数が決まっている代車は、店舗内でも取り合いだ。場合によっては数カ月先まで、代車の予定がびっしりというお店もある。代車を利用して整備を受けたいという場合には、早めの予約が必須である。

■代替サイクル長期化による代車の需要増

 展示車や試乗車が手に入りにくくなった昨今、コロナや半導体不足の波は、代車不足にも追い打ちをかける。さらに、クルマが丈夫で長く使えるようになったことが、代車不足の原因になっているというのだ。

 乗用車における平均使用年数は、令和3年で13.87年となっている。1台のクルマを長く使えることはいいことなのだが、すなわちこれは同時に重い整備案件の数も増えていることになるのだ。

 昨今、ディーラーでの点検整備には、基本的に代車を必要としない「待ち」作業が主流だ。法定点検なら1時間程度、車検でも初回や2回目くらいまでなら2時間もあれば作業が終わる。ショールームの快適性を高め、作業時間中はお店の中で待ってもらえるように、店舗運営にも工夫をしているところが多い。

 しかし、3回目以降の車検では、交換部品などが増えていき、2時間という時間制限内で作業を終わらせることは難しくなる。さらに長く使用されたクルマでは、エンジンや足回りなど、交換や整備に時間がかかる不具合が増えていくため、整備の度に代車が必要となってしまう。

 クルマの寿命が長くなればなるほど、代車のやりくりが難しくなる。ディーラーの代車事情は、さらに厳しさを増していくだろう。

■すでに代車事情はパンク状態! 苦肉の策にレンタカーを出すお店も

ディーラーが、代車を用意するということが難しくなってきているため、代車としてレンタカーを用意するケースが起きている(Edler von Rabenstein – stock.adobe.com)

 新車販売で安定的な利益を上げることが難しくなってきた近年では、整備や点検などのサービス事業に注力し、利益を確保しているディーラーが多い。

 整備を中心にお店を回すため、商売道具である試乗車も続々と代車に回されるケースが後を絶たない。さらに、それでも足りず、ディーラーがレンタカーを借りて、ユーザーに貸し出すという事態も起きてきた。

 代車を貸し出す際に、1時間〇円という使用料を取ることはないはずだ。ほとんどは無料サービスの代車だから、代わりに用意するレンタカーでも、その利用料をユーザーが払うことはない。現に、レンタカー費用はディーラーの負担となっていることが多いのだ。

 このレンタカー代が利益を圧迫する。レンタカーを出すことで、整備利益がほとんどなくなることもあると、関係者は嘆き節だ。

 ここ数年、ディーラーにとって代車を用意するということは、金銭的にも精神的にも負担が大きい。

 誰もが厳しさを感じるこの時代。ディーラーもユーザーも、厳しい立場なのは変わらない。ディーラーの窮地を救うためには、待ち作業での整備を増やす、レンタカー特約に入るなど、ユーザー側で協力できることもいろいろとあるだろう。できることは協力しながら、この難局をユーザーとディーラーが一緒に乗り越えていきたいものだ。

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投稿 代車はあればありがたいけど……ディーラーにとって代車の用意は果たして負担になっているのか?自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。