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今回、タイプ992の911シリーズに加わったカレラTの「T」は、「ツーリング」の意。ただし、その始祖は1968年にホモロゲーションを取得したライトウェイトを旨とするピュアスポーツモデルにまで遡る。シリーズ内のポジショニングとしてはカレラ以上、カレラS以下。ただ贅肉を削ぎ落しただけのプリミティブなモデルではないのだ!

カレラTに乗るなら7速MTで決まりだ

タイプ992ベースのカレラTが搭載するエンジンは3L水平対向6気筒ツインターボで、最高出力は370ps、最大トルクは450Nmとベーシックスペックのままだが、トランスミッションを基本7速MT(8速PDKも搭載可)とし、空車重量を1,470kg(8速PDKのカレラは1,505kg)に抑えているのがポイントだ。さらに軽量化に向けた手立てはリアシートの省略や軽量ガラスの採用、防音材の簡略化などまでにおよぶ一方、走りに関わる装備は充実。

アクティブスポーツサスのPASMやトルクベクトリングのPTV、スポーツクロノパッケージなどはもれなくスタンダードで、車高は10mmローダウンとなる。エクステリアにはスポイラーなどの目立った付加物はないが、ドアミラーや前後フィニッシャー、ウィンドートリムなどはアガートグレーにペイント。左右ドア下部には、オプションで”911・カレラT”のデカールを大胆に配することもできる。

【写真14枚】まさに、クルマと会話をしているような感覚! 「ポルシェ・911カレラT」 

レザーと”Sports-Tex”のコンビとなるドライバーズシートに腰を落としてイグニッションを捻ると、やや大き目なボクサーサウンドがスポーツエキゾーストシステムを介して耳に届く。およそ1㎝ショートストローク化されたシフトノブをローに送り込みスロットルを踏み込むと、パワーウエイトレシオ=3.85kg/psのカレラTはいきおい軽快な加速を開始する。その刺激的なビートだけでなく、シフトアップのたびにトップエンドまで上り詰める加速フィールはまさに911のそれ。スピードメーターのデジタルカウンターがあっという間に米国ハイウェイの法定速度に達してしまう。

続いて向かったアンヘレス・クレスト・ハイウェイは、現地の自動車メーカーがシャシー開発に利用する有名なワインディングだが、ここでカレラTは本領を発揮。持ち前の身軽さに加えて万全のシャシーコントロールにより、ライトウェイトスポーツのようにヒラリヒラリと向きを変えつつ路面を確実に捉えてステップを踏んでいく。まさに、クルマと会話をしているような感覚で、大小様々なコーナーの連続を駆け抜けていけるのだ。

市街地に戻り、ストップ&ゴーの渋滞時でもおよそ45マイル/時を7速でカバーしてしまうフラットシックス・ターボのフレキシビリティにあらためて感心してしまうが、同時に気になったのはアイドリングストップからの再スタートで、常に機械的なショックをともなう点である。ポルシェは重量増加を理由に頑なに48Vのマイルドハイブリッドシステムを採用しようとしないが、もはや現代の高級スポーツカーにチープな身震いは似合わない。もっとも、スイッチをカットオフしておけば済む話ではあるのだが……。

なお、今回のテストでは8速PDK仕様も試したが、こちらは7速MTに対して20kgの重量増。数値でいえば些細な違いではあり、それがパフォーマンスに現れるのかといえば厳密なことはいえないが、カレラTのキャラクターを考えると、手足を駆使してリズミカルに走らせたほうが気分は上がる。

911カレラTの価格は、7速MT/8速PDKのいずれも1640万円。食指が伸びている方は大いに悩んでいただきたい。ただし、すでに予約注文はスタートしているが、デリバリーはドイツ本国とほぼ同じ来春先になるはずだ。

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