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統一地方選は9日夜、大阪府知事選、大阪市長選で維新公認の2人が早々と当確。大阪府議選(定数79)と市議選(同81)の開票も10日未明にかけて進み、維新は府議選で過半数を制し、市議選も過半数の悲願を達成する「完勝」となった。

一方、大阪自民(自民大阪府連)は府議選で勢力が半減。市議選も減らした。15の小選挙区で全敗した衆院選に続き、壊滅的な事態に追いやられた。選挙戦中の「ディズニーリゾート」誘致公約をはじめ、迷走を深めた大阪自民だが、同じように都政を小池知事・都民ファーストの会に奪われながらも持ちこたえている東京自民(自民都連)とは対照的だ。

東京・永田町の自民党本部。東京都連事務所はこの1階に入居(kawa*******mu /PhotoAC)

小池都政でも持ちこたえた東京自民

共にローカル野党に転落してきた大阪自民と東京自民。後者は2016年都知事選で小池百合子氏に完敗し、翌17年都議選でも都ファに第1党を奪われ、戦後初めて第3党にまで転落する憂き目を見た。小池人気はその後ピークアウトするものの、20年都知事選は候補者擁立を断念。この点は今回の大阪府知事選で自力で候補を擁立できなかった大阪自民と相似形だ。

しかし21年都議選は入院療養中だった小池氏が終盤に登場する“奇襲”に遭って伸び悩んだが、自民は選挙前の25から33に上積み。その4年前の勢力(57)や過半数(64)には遠く及ばないとはいえ、ギリギリ第1党の座を取り戻した「粘り腰」は、維新にやられっ放しの大阪自民とは大きな違いだ。東京自民は持ちこたえたことで、今年71歳になる小池氏が遠くない将来、知事を退任した後の「完全奪還」を虎視眈々と狙える位置につけていると言える。

大阪自民と東京自民の違いは何か。まず誰も思い浮かぶのは、前者は知事時代の橋下徹氏に同調した若手・中堅がまとまって流出。後の維新の隆盛につながる余地を許した。一方、小池都政は当初自民の切り崩しを狙ったが、都ファ側に移ったのは選挙が強くない数人の都議のみだった。

いまや総理候補目前の萩生田氏(画像は経産相時代、出典:経産省サイト)

この点は、徒党を組むのが苦手な小池氏のキャラクターに助けられた側面も大きいだろう。国会議員も、ともに安倍元首相の有力側近である下村博文元文科相、萩生田光一政調会長(現都連会長)、岸田首相の懐刀、木原誠二官房副長官など柱となる人材がいる。そして地方議員にも内田茂氏(22年死去)のように党本部幹部も一目置く「ドン」がいたことも大きかった。

大阪自民と東京自民「最大の違い」は?

他方、大阪自民は本来ならば今ごろ組織の中核を担っているはずだったメンバーが維新に流出したことで、2011年のダブル選挙以降、重要な選挙で負けが込むたびに組織・人材の劣化が進んだ。気がつけば大阪府内で18の首長の座も奪われ、市町村議会でも劣勢に立たされることが増えた。国会議員もかつては「塩爺」の愛称で知られた塩川正十郎元財務相など大臣を歴任する大物もいたが、今では大臣経験者がゼロに。

顔ぶれを見ると、世襲が多く新陳代謝が進まない。親が大臣経験者という人は何人もいるが、維新府政・市政が長期化するにつれ小粒化した印象が拭えない。この点は先述した東京自民には、下村氏、萩生田氏のように非世襲で、地方議員から実力でのし上がれる余地が多少あった。

もちろん東京自民は当初、お世辞にも世代交代が十分だったわけではない。しかし小池都政が長引くことは都議の代替わりという点で悪いことばかりではなかった。特に21年都議選を経て、都議会自民は現在の三宅正彦幹事長になってから若手の活躍が目覚ましい。

Colabo問題では発信力のある川松真一郎氏(42歳)を先頭に、新人の浜中義豊氏(39歳)らが都を舌鋒鋭く追及。特に川松氏が福祉保健局の予算執行をただした質問は、ネットで「野党の質問はこうあるべきと、国政の立民に見習わせたい」と唸る声が出た(関連記事)。

しかも三宅体制になってからは都民税減税まで主張し、従来の「大きな政府」的な印象とは異なる姿勢も見せ始め、小池都政に不満を持つ保守中道層の共感をつかみ始めている。Colabo問題や減税など「公金」に対する律した姿勢は、明らかに小池都政以前より変わった。個人的にはこれが大阪自民と最大の違いだと思う。今回のディズニー騒動でまさにその思いを深めた。

大阪自民は斜陽をとめられるか?(Sean Pavone /iStock)

グッドルーザーになれるか?

突き詰めていくと、まずは再建可能な野党になるかどうかは、グッドルーザーとして虚心坦懐に現実を認められるかどうか。そして組織の都合や利権ありきではなく、民意が何を考えているのかに敏感であるかどうか。企業で言えば、顧客ニーズよりも企業側の都合を優先する「プロダクトアウト」ではなく、顧客の声に耳を傾け、真に必要とされるものを提供する「マーケットイン」の発想になるかどうかだろう。

少なくとも多少の批判記事を書かれたくらいで、逆ギレし報道機関に提訴をちらつかせる「リーガルハラスメント」を安易にやるようでは大阪自民の再建の道はほぼ不可能だろう。ましてや情報源を探るために法的措置をすることを選挙中あからさまにSNSで発信する候補者がいること自体、「堕ちるところまで堕ちた」としか言いようがない。

大阪の選挙は終わったが、こちらは大阪自民とのバトル第2幕があるとの想定でいる。法廷で全面反論するのはもちろんのこと、法廷闘争のルポ企画、記者会見からSNS発信まで楽しみが尽きず、「ドラゴンボール」の孫悟空のように“オラ、ワクワク”している。党幹部の1人が大阪自民の出方を懸念し始めているとの噂も聞くがこちらの知ったことではない。

グッドルーザーとして立て直しの一歩を踏むのか、それとも衆院選まで泥沼の法廷・情報戦に突撃してしまうのか。大阪自民「最後の一線」が試されている。