スズキ車において、世界でもっとも売れているモデル、「スイフト」。そんなスイフトのフルモデルチェンジが、いよいよ今年2023年に計画されています。現行スイフトには、マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドの2タイプが設定されていましたが、ストロングハイブリッドは2020年に販売を終了しています。
燃費性能の重要性が増しているなかにおいて、次期型スイフトにもライバル車に負けないストロングハイブリッドは必要だと思われます。はたしてスイフトは次期型で、ストロングハイブリッドを復活させるのか!?? 可能性について検討しましょう。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:ベストカー編集部
写真:SUZUKI、ベストカー編集部
出力10kW/トルク30Nmの駆動用モーターと5速AGSを使ったパラレルハイブリッドだった
軽快な走りと200万円を切るリーズナブルな価格設定が魅力で、2000年の誕生以来、長く人気を堅持しているコンパクトカー、「スイフト」。モデルチェンジのたびに走りに磨きをかけ、3代目では減速エネルギー回生のエネチャージやアイドルストップなどの採用によって、燃費向上も図ってきました。
2017年1月に登場した現行(4代目)のスイフトでは、補機ベルトでISGを駆動させるマイルドハイブリッドを設定。ISG(Integrated Starter Generator)とは、スターターと発電機(オルタネーター)を統合した補助駆動装置のことで、12V電源で駆動し、エンジンを始動させたり、アイドルストップ時の再起動や、加速時にエンジン出力をアシストする役目を担う装備のこと(モーター単独によるEV走行はできない)。その後、同年7月に、ストロングハイブリッドが追加で設定されました。
上記のマイルドハイブリッドに、100V駆動の出力10kW/トルク30Nmの駆動用モーターと4.4Ahの駆動用のリチウムイオン電池を追加し、トランスミッションに5速AGS(自動MT)を使ったパラレルハイブリッドで、これにより、モーターのアシスト領域が拡大し、平坦路では車速60km/h程度までEV走行が可能となり、燃費と加速性能が向上しました。
マイルドハイブリッドに対して、コスパが劣っていたことが生産終了の原因か
しかし、冒頭で触れたように、現行スイフトのストロングハイブリッドモデルは、2020年8月に販売を終了しています。なぜストロングハイブリッドだけが販売終了となったのか。現行スイフトのマイルドハイブリッドとストロングハイブリッドのコストパーフォーマンス(対費用効果)を比較してみましょう。
・ガソリン車XL(1.2L 直4 NAエンジン)
JC08モード燃費:24.0km/L、車両価格:1,559,520円
・マイルドハイブリッド車RS(1.2L 直4 NAエンジン+2.3kWモーター)
JC08モード燃費:27.4km/L、車両価格:1,787,400円
・ストロングハイブリッド車SL(1.2L直4 NAエンジン+10kWモーター)
JC08モード燃費:32.0km/L、車両価格:1,949,400円
マイルドハイブリッド車は、ガソリン車に対して燃費が14%向上し、車両価格は約23万円上昇。ストロングハイブリッドは、マイルドハイブリッドに対して燃費は17%向上、車両価格は16万2000円ほど高いです。ガソリン価格160円/L、1年間の走行距離1万kmと仮定すると、マイルドハイブリッドの年間ガソリン代は5万8400円、ストロングハイブリッドは5万円となり、その差額は8400円となります。両モデルの車両価格差16万2000円を単純にガソリン代の差額で挽回しようとすると、19年もかかってしまいます。
このようにスイフトのストロングハイブリッドは、コストパーフォーマンスが低いため、マイルドハイブリッドの方が販売台数で上回り、これがストロングハイブリッド販売中止の理由のひとつだったのかもしれません。
「ストロング」といえども、「マイルド」に近かった
次期型では、当然ながら優れた燃費性能が求められ、燃費の良い本格的なストロングハイブリッドがほしいところですが、上述のように、現行モデルで採用していたストロングハイブリッドでは十分な燃費低減は期待できず、ライバル車に太刀打ちできません。
コンパクトハイブリッドの代表格トヨタ「アクア」は、スイフトの10kW/トルク30Nmのモーターの約5倍の出力に相当する45kW/169Nm(最新は67kW/120Nm)の駆動用モーターを装備しています。スイフトは、車速60km/h程度までEV走行可能というものの、実際のところ電池容量も小さいので、加減速があれば頻繁にエンジンが起動して、アクアに比べればEV走行の領域は狭いことは避けられません。
結果として、スイフトのストロングハイブリッドの燃費32km/Lは、アクアの38.0km/L(2017年時点のJC08モード、現在はさらに向上)や、フィットハイブリッドの38.6km/L(2020年モデル)に対して、大きく劣っています。ストロングハイブリッドと称しながらも、実際の走りや燃費性能は、マイルドハイブリッドに近いハイブリッドだったのです。ちなみにスズキは、当初使っていたストロングハイブリッドという表現を公式にやめて、ただのハイブリッドという言い方に改めています。
次期型では、ミディアムなハイブリッドを搭載か
では、次期型スイフトでは、どのようなハイブリッドシステムが考えられるのでしょうか。昨年4月に、同社のコンパクトSUV「エスクード」のマイナーチェンジで、駆動用モーターの出力を10kWから24.6kW、トルクを30Nmから50Nmへと増強したハイブリッドが搭載されました。スズキのハイブリッドシステムとしては最大のもので、これをスイフト用に手直しして、次期スイフトに搭載することが考えられます。
ただしこれでも、アクアの67kWやフィットハイブリッドの80kWと比べると、モーターの出力としては見劣りします。新しいハイブリッドをストロングハイブリッドと呼ぶかどうかは微妙ですが、モーターの出力がすべてを決めるわけではありません。燃費一番にはなれないかもしれません(それを目指すクルマではありません)が、改良されたエンジンと低コストの6速AGSを組み合わせたミディアムなハイブリッドによって、走りと低コストを両立させたスイフトらしいハイブリッドが誕生する可能性は十分にあります。
また、スズキはトヨタと業務提携を結んでいるので、THS IIを採用することも不可能ではありません。ただ、THS-IIシステムをそのまま転用するにしても、スイフトのコンパクトな車体に収めるには、大変な苦労が想像つきますし、生産能力的にも困難と思われます。また、ダイハツがロッキーに、独自に開発した「e-SMART HYBRID」のシリーズハイブリッドを採用していることを考えると、スズキとしても、独自性をアピールしたいところではないかと思われ、可能性は低いと考えられます。
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スイフトは、次期型でも、アクアやフィットで採用されているようなストロングハイブリッドが搭載される可能性はないと思われます。コストを重視してマイルドハイブリッドに留めるのではないでしょうか。さらにその先、2029年あたりに登場するスイフトにて、一気に電動車へと変換するシナリオだと予想します。
次期型スイフトは、ストロングとはいかないまでも、ライバル車とは一味違う、軽快な走りと安価を両立させた、スイフトらしいミディアムなハイブリッドの登場を期待したいですね。
【画像ギャラリー】次期型でストロングハイブリッド復活はある!?? 世界でもっとも売れているスズキ車「スイフト」の現行モデル(14枚)画像ギャラリー投稿 2023年登場濃厚!! スズキの大黒柱 新型スイフトには最新HV仕様が準備される…はず!!! は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。