バス趣味には見るだけで頭が痛くなりそうな、数字記号とアルファベットを組み合わせた「型式」がどうしても付いて回る。この型式、タダの文字の羅列ではなくちゃんと意味を持っていて、ちょっと手を加えるだけで割と簡単に解読できるようになる。果たしてその方法とは!?
文・写真:中山修一
分からなければ、バラしてみよう
2PG-MP38FKFV……なんて突然書かれてもサッパリ分からなくて当然である。こんな時に使えるのが「分解」の発想だ。
バスのメーカーごとに型式の付け方が異なるため、全て一緒とまでは行かないが、各社のバスの型式をよーく観察してみると、ある程度の法則性が見えてくる。
バスの型式は、XXX-XXXXXXのように、途中でハイフンで区切られているものがほとんどだ。上記の型式を例にすると、まず「2PG」と「-」と「MP38FKFV」に分けられる。
最初の2PGが何を意味するのか。実は自動車排出ガス規制の識別記号になっている。国が定めているものであり、この3文字はどのメーカーのバス車両の型式にも、該当する数字かアルファベットが割り当てられている。
2PG-の部分はこのさい無視で良いとして、そうなると車両本体の型式名称はMP38FKFVということになりそうだが、もう少し分解できる雰囲気だ。
大抵の工業製品の型式や品番にはよく「アルファベット+数字」の組み合わせが使われるので、MP38が純粋な車両本体の型式ではないかと推測できる。
推測に留めず裏を取ると尚良いので、そろそろメーカーカタログから助言を得ることにしよう。2PG-MP38FKFVは三菱ふそう製の現行エアロスターであるが、カタログを開くと「MP38F」が型式の中で車両本体を表す幹の部分だと確認できた。
ここまで解読すれば、長い型式からオイシイところだけ抽出して車種を識別できるようになるので、残りのKFVは細かいバリエーションを表していると思っておけば、深入りしなくても通常なら事足りるハズだ。
せっかくなので、最後まで分解して見てみよう。
【2PG-MP38FKFV】
2:平成28年排ガス規制適合
P:非ハイブリッドのディーゼル車、重量車燃費基準5%達成
G:車両総重量3.5トン超
-:ハイフン
MP38F:バス本体の型式名称
K:車体の長さ(K尺・10.5mクラス)
F:シートレイアウトの仕様(都市型)
V:エアコンなどの仕様
長くてかなわないバス型式の文字列には、なんとこれだけの情報が隠されていたのだ!!
他のバス車両の型式を解読すると?
現行車では三菱ふそう、日野自動車、いすゞが大型路線バスを製造している。では日野自動車といすゞのバス車両の型式はどうだろうか。
【日野ブルーリボン 2KG-KV290N3】
2:平成28年排ガス規制適合
K:非ハイブリッドのディーゼル車、重量車燃費基準達成
G:車両総重量3.5トン超
-:ハイフン
KV290:バス本体の型式名称
N:車体の長さ(N尺・ホイールベース5,300mm)
3:マイナーチェンジモデル(KV290の3代目)
【日野ブルーリボンハイブリッド 2SG-HL2ASBP】
2:平成28年排ガス規制適合
S:ハイブリッドのディーゼル車、重量車燃費基準15%達成
G:車両総重量3.5トン超
-:ハイフン
HL2A:バス本体の型式名称
S:車体の長さ(ホイールベース6,000mm)
B:マイナーチェンジモデル(2代目)
P:メーカーコード(日野自動車製)と思われる
【いすゞエルガ 2KG-LV290N3】
2:平成28年排ガス規制適合
K:非ハイブリッドのディーゼル車、重量車燃費基準達成
G:車両総重量3.5トン超
-:ハイフン
LV290:バス本体の型式名称
N:車体の長さ(N尺・ホイールベース5,300mm)
3:マイナーチェンジモデル(LV290の3代目)
【いすゞエルガ ハイブリッド 2SG-HL2ASBD】
2:平成28年排ガス規制適合
S:ハイブリッドのディーゼル車、重量車燃費基準15%達成
G:車両総重量3.5トン超
-:ハイフン
HL2A:バス本体の型式名称
S:車体の長さ(ホイールベース6,000mm)
B:マイナーチェンジモデル(日野ブルーリボンハイブリッド2代目相当)
D:メーカーコード(いすゞ製)と思われる
やはり、前述の三菱ふそうエアロスターと似たような分け方で車両本体の型式を抽出できた。ちなみに日野ブルーリボンといすゞエルガの型式がそっくりなのは、両車が共通設計になっている(外観も殆ど同じ)ためだ。
【日野ポンチョ 2DG-HX9JLCE】
2:平成28年排ガス規制適合
D:非ハイブリッドのディーゼル車、重量車燃費基準末達成
G:車両総重量3.5トン超
-:ハイフン
HX9J:車両本体の型式名称
L:車体の長さ(ロングボディ)
C:マイナーチェンジモデル(HX系の3代目)
E:???
※HX系ポンチョの型式はどれも末尾がE。
小型バス・日野ポンチョの長い型式も、文字列を分解すれば大型バス同様に車両の性質がおおむね見えてくる。C=マイナーチェンジ(3代目)とあり、じゃあ2代目はBだったのかと言えばその通り、HX9JLBEである。初代はHX6JLAEだ。
上記の例を踏まえると、車両本体の型式名称の後ろに付くアルファベットは全て、車体の長さを示すために使われているとも分かる。
長さ(ホイールベース)を表すアルファベットは、三菱がM、K、Pなど。日野がH、L、N、Q、S、いすゞではN、Q、Sなどがある。
バスの型式を見ていくと、鉄道車両の「クモハ」のような形式名称の意味に通ずるところがある。こんな視点と発想からアプローチしてみれば、複雑なバスの型式だってもう怖くない!?
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