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このご時世にHV廃止!! スカイラインがHV仕様を廃止して選ぶ「生き残る道」

 日産が「スカイラインを含むセダンの新型車の開発を中止する」という情報が世間をざわつかせたのは、2021年の6月のこと。報道からわずか3日後に、日産の星野朝子副社長が「日産自動車はスカイラインを決して諦めない」とコメントしたことで、事態は収束。これでひと安心と思いきや、スカイラインは、シーマとフーガが2022年夏に生産終了となったあとも、確かにモデル自体は存続しているが、実はハイブリッドモデルは2022年5月にひっそりと受注終了となっている。

 なぜスカイラインハイブリッドは受注終了となったのか!? 諦めないんじゃなかったのか!?? そこには、こんな事情があると推察される。

文:吉川賢一
写真:NISSAN

競争力のないハイブリッドシステムであるうえに、シーマ/フーガの生産終了が追い打ちをかけた

 「なぜハイブリッド(だけ)がカタログ落ちしたのか」に関して、日産自動車の公式な発表はないが、おそらく、スカイラインハイブリッドに搭載されていたハイブリッドシステムに競争力がなかったことが原因だろう。

 スカイラインハイブリッドのWLTCモード燃費は、14.4km/L。3L超えのV6エンジンがベースのハイブリッドなのだから(しょうがない)と思うかもしれないが、ライバルであるレクサスIS 300hは18.0km/Lをたたき出している。また、スカイラインハイブリッドに搭載の3.5L V6エンジン+モーターのハイブリッドユニットは、2010年11月に登場したフーガハイブリッドのユニットと同じで、かなり古いユニット。シーマとフーガが生産終了となると、スカイラインのためだけに、台数がそれほどでないハイブリッドユニットをつくり続けなければならない(無駄が多い)、ということもあって、このタイミングでの生産終了となったのだろう。

スカイラインハイブリッドの14.4km/L(WLTCモード燃費)という燃費は、競合車に対して競争力が無くなっていた

FR車向けの新パワートレインを開発しても儲からない

 現時点のスカイラインのエンジンは、ベースモデルである300psのV6ターボと、「400R」の405psのV6ツインターボの2種類(エンジン自体は同じで、CPUチューニングで差別化)。ただ、ライバルメーカーのベースグレードはみなダウンサイジング化をして燃費とパフォーマンスの両立を狙い、その一方で、パフォーマンスモデルは大振りし、400p超高性能ハイパフォーマンス専用モデルを「別モノ」として用意している。AMG C63SやBMW M3、アウディRS4、などがそうだ。

 当然スカイラインにも、他車と戦えるダウンサイジングハイブリッドの企画提案はあったはずだが、日産は、そもそも台数が売れない後輪駆動車向けの新パワートレインを開発しても儲からないと考えたのだろう。e-POWERのヒットも、ダメ押しとなったのかもしれない。

スカイラインが生き残る道は、「スカイラインGT-R」の復活しかない!!

 ここからは、スカイラインの未来について考えていきたい。「スカイラインには、ハイパワーなエンジンが必要」としてしまうと、残念ながらスカイラインには将来はない。今はまだ、400馬力級のツインターボの響きは素敵に響いているが、いずれは日産が目指すクリーンなイメージを邪魔する「謀反者」となってしまう。次期型スカイラインでは、プラグインハイブリッド化や、バッテリーEV化などが求められる。

300psのV6ターボのベースモデルの方が、ハンドリング性能や乗り心地、NVH、動力性能などのバランスが取れており、走りが楽しいと筆者は思っている

 また、次期型スカイラインが今のようなスポーツセダンとして登場できるかどうかも怪しい。日本では、ミニバンやコンパクトカー、SUVなどの、ユーティリティに優れたクルマが好まれる。数少ないセダンの需要に対しては、レクサスやドイツ御三家といった強力なライバルと戦わなければならない。

 そんななかでスカイラインが生き残ることができる道は、もはやひとつ。「スカイラインGT-R」を復活させるシナリオだ。具体的には、GT-Rの第3世代といわれるR35 GT-Rの後継、第4世代の「スカイラインGT-R」として、スペシャルスポーツカーに引き上げる方法だ。日産ブランドのフラッグシップカーとして、ある意味、その存在自体を「神格化」する。パフォーマンスは「世界一」がマストだが、車両価格も現在のR35 GT-R並みまでは許容できるはずだ。併せて、一時期噂の立った「4ドアのスカイラインGT-R」という企画も追加してもよいと思う。

スカイラインGT-R」は海外でも知名度バツグン。ぜひとも、スカイラインGT-Rブランド復活を望みたい!!

 パワートレインは、時代が間に合えば3.0L級のV6ツインターボもありだとは思うが、アリアの電動AWDシステム「e-4orce」を改良した「ハイパワー電動AWD」の搭載が適していると筆者は考える。前後輪のトルク配分を制御できるので、例えば、後輪側へのトルク配分を増やし、疑似的に後輪駆動車のような特性にもできるはずだ。お客さまに感動を与えることができる新世代スカイラインGT-R。十分あり得る路線ではないだろうか。

スカイライン生誕40周年記念モデルとしてオーテックが製作した、4ドアタイプのR33型スカイラインGT-R(1998年)。販売期間はわずか1年弱、400台程度しか世に出回っていない希少車だ

「クロスオーバー」にはならないと信じている!!

 かつて、スカイラインの開発に携わった筆者としては、スカイラインブランドが細々としていくのは見ていられない。スカイラインの次期型プロジェクトは、何かしらのかたちで動いているはず。日産の星野副社長が「スカイラインは諦めない」と発言された言葉を信じたいと思う。筆者の予想通りになるかはわからないが、スカイラインが、クロスオーバーSUVになる、なんて安直なことは日産はやってこないと信じている。「技術の日産」のイメージリーダーとしてふさわしい次期型スカイラインの登場を期待している。

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