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 メーカーのアライアンスが進むとともに、メーカーをまたいだ兄弟車というのが増えた。代表的なのはトヨタルーミー、ダイハツトール、スバルジャスティだろう。この場合お買い得なのはどのメーカーのクルマなのだろうか?

 かつては生産元のメーカーとOEM供給を受けているメーカーを戦わせて、商談を有利に進めるという手法があったが、令和の今、この方法は通用するのか。多種多様になった兄弟車の買い方についてディーラーを直撃した!

文/佐々木 亘、写真/Toyota、Daihatsu、Mazda、Subaru、ベストカー編集部

■ワゴンRとAZワゴンが代表格!かつてあったOEMの利点

2008年に発売された最終型マツダAZワゴン。ベースとなったのは同年発売の4代目スズキワゴンRだ

 資本提携や子会社化など、自動車メーカー各社では、アライアンス(同盟)を作る動きが加速している。トヨタ・ダイハツ・スバルや日産・三菱のように、それぞれの強みを生かし、弱点を補う上で、こうした協業は有効かつ最善の策だ。

 アライアンスが進んだ結果として、メーカーをまたいだ同一車種、いわゆる兄弟車と呼ばれるものが増えてきた。大ヒットしているルーミー(トール・ジャスティ)やライズ(ロッキー・レックス)、カーオブザイヤーを受賞した日産サクラと三菱eKクロスEVなど、「売れるクルマ」や「今年の顔になるクルマ」にも、兄弟車が挙がってくる。

 ここで一つの疑問が浮かび上がる。非常に似通ったクルマ同士だが、各メーカーで「個別に見積もりを取ることで、購入条件を有利に出来るのか」というものだ。

 1990年代後半から2000年の初め頃は、メーカーエンブレム以外は全く同じで、エンブレムを隠されると見分けがつかない兄弟車が多かった。スズキ・ワゴンRとマツダ・AZワゴンは、その最たる例と言っても良いだろう。

 ワゴンRと比べると、AZワゴンのネームバリューは小さい。しかし、クルマの質はワゴンRと同じだ。マツダは、本家ワゴンRよりも人気で劣るAZワゴンを、本家よりも少しお得に買えるクルマとして販売した。結果としてAZワゴンは、マツダの中でも売れ行きの良い軽自動車になった形だ。

 新車市場で人気が無ければ、中古車としての評価も厳しくなる。かつてのOEMは、新車・中古車ともに「人気が無い分だけ安く買える」というのがメリットだった。

■相見積もりは効果なし?兄弟車で価格の優位はあるのか?

兄弟車のトヨタライズとダイハツロッキー。グリル形状をはじめ想像以上にデザインの違いは大きい

 現在のOEMや共同開発車では、かつてのようなエンブレムだけを取り替えたというモデルはほとんど存在しない。ライト形状やグリルの形状、さらには装備の質などを少しずつ変え、OEM提供を受ける側のメーカー色に合わせたクルマ作りを行っている。

 ルーミー・トール・ジャスティは、エンブレムを隠されても見分けることができるし、ライズ・ロッキー・レックスは、取り扱うグレードや仕様などにも大きく差が設けられた。日産サクラと三菱ekクロスEVに至っては、もはやメカニズムが共通なだけで、同じクルマとは思えないくらい、デザインや装備が違う。

 兄弟車ではあるが、もはや別のクルマとしての認知がされており、今はかつてのように、OEMだからといって不人気車というわけではなくなった。つまり安く売る必要が無くなったのだ。また、OEMであっても、営業マンには「自社のクルマ」という意識が強くなってきており、兄弟車との明確な違いを武器に、商品説明や商談に挑んでいる。

 つまり、「ワゴンRがいいんだけど、安くなるならAZワゴン買うよ」的なノリは通用しない。逆に今なら、ライズがいいBRZがいいと、兄弟車の中でも「このデザイン」「この装備」が良いから、このクルマを選ぶという意思を示したほうが、商談が優位に動くことが多くなった。

 OEM元だから、OEM先だからという価格の違いはほとんど無くなっている。価格差が出るとすれば、それは販社ごとに違う売り方の差であろう。

 令和の今は、ユーザー自ら兄弟車の違いを調べ、そのクルマを選んだ理由までを営業マンに伝える方が、買いたい熱量が伝わり、良い商談が進められる。似たクルマがあっても、買いたいクルマへの熱量を伝えるのが、現代における兄弟車の買い方だ。

■正直、兄でも弟でもいい!こんな時はどんな結果になる?

最初はトヨタのルーミーとタンク、そしてダイハツトールの3兄弟だったが、タンクが廃止となった。そしてスバルのジャスティが追加された

 先述した通り、熱量を伝えることが大事だが、そもそも「どれでもいい」「違いがよくわからない」という場合にはどうなるのか。実際に筆者がいくつかのお店をまわってみたので、結果をお伝えしよう。

 半導体不足などで新車納期が厳しさを増す中、ある程度安定供給が見込める、ルーミー・トール・ジャスティで比較してみた。

 トヨタ・ダイハツ・スバルの各販売店には、コンパクトトールワゴンが欲しいということを伝え、候補に兄弟3車種があることを伝えておく。それぞれの違いはある程度わかるが、デザインなどでは決め手に欠くということにした。

 各社複数店舗で話を聞いてみたが、販売条件が大きく変わるということはほとんど無かったというのが正直なところ。

 その上で「是非うちのクルマを」とネームバリューを売りするのは、トヨタ販売店に多かった。ダイハツでは、トールを進めながらも、タントやムーヴキャンパスといった軽自動車を候補に含めてはどうかという複数車両の提案が多い。ジャスティを扱うスバルでは、納期の早さを売りにしている。

 新車納期が長くかかる今だからこそ、納車の早さは、販売価格以上に価値があるものかもしれない。ルーミーとトールは同程度の納期案内だったが、ジャスティは1か月以上早くクルマが来るという案内を受ける。

 実際にルーミーやトールを扱う際に、どのような値引き交渉が多いのかを聞いてみると、単純な相見積もりよりも、納期差を利用した価格交渉が増えてきたという。人気のあるモデルほど納期は長くなる傾向があり、ルーミーよりもトール、トールよりもジャスティの方が、納車までの期間は短くなる傾向が強いようだ。

 トヨタ・ダイハツ陣営では納期が少し長い分、5万円程度値引きを多めにする、下取りの査定額を上げるなどして契約を取っていくケースもあるらしい。兄弟車のどれでもいいというユーザーは、各車の納期を調べて比較すると、商談の糸口が見えてくるかもしれない。

 また、兄弟車間でクルマの差が少なくても、お店や営業マンなど、クルマ以外の差はどこかに生まれてくる。現代版、兄弟車の買い方は、価格差へのフォーカスを外し、納期に注目したい。さらに、人やお店の「良い」と感じたところで買うことだ。これが、令和版兄弟車の買い方である。

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