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 ナビなどの情報が視界に浮かび上がるスマートヘルメット「OPTICSON(オプティクソン)」が、ついに市販スタート。実際の使い勝手はどうなのか、公道でテストしまくった!

文/沼尾宏明、写真/小川裕之(OGA)、市本行平、沼尾宏明


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4年の歳月を経て、大手メーカー初のスマートヘルメットが市販化

 スマホとの通信システムを内蔵し、HUD(ヘッドアップディスプレイ)に情報を表示できるスマートヘルメット。ベンチャー企業から発売されたケースもあるが、大手ヘルメットメーカーからは市販されていなかった。

 そんな中、世界トップブランドの一角であるSHOEIがスマートヘルメットの「オプティクソン」を販売を開始。12月17日から公式ショールームのSHOEIギャラリー各店で試験的に限定販売している。

カラーはルミナスホワイトとマットブラック、サイズはM(57cm)、L(59cm)、XL(61cm)。価格は13万7500円で、専用バッテリー1万1000円が別途必要だ。JIS規格に対応

 初出から実に4年近い歳月を経て、ようやくの市販化となる。2019年1月に米国の家電見本市で試作版を初公開し、2022年の大阪&東京MCショーにオプティクソンを初披露。マツダやダイハツなどの車載メーター&HUDメーカーである「NSウエスト」と共同開発した。

 当時から、某漫画で有名な「スカウター」とHUDがソックリとあって、大いに話題になった。仕組みとしては、アゴ(チンガード)にブルートゥースモジュールや投影装置などのデバイスを収納。チンガード上部から右目のスクリーンに向けて、プロジェクターのように映像を照射し、ライダーの目には虚像として情報が浮かび上がる。

 ヘルメットとスマホはブルートゥースで接続し、スマホのナビアプリ、時計、電話とメールの着信、バッテリー残量などの情報を表示。ナビタイムジャパンが開発したアプリ「ツーリングサポーター」の「プレミアムプラス」コース(月額800円または年額8000円、1か月間の試用期間あり)に別途加入する必要がある。

走行前に内装調整と専用アプリの入手が必須

 さっそく都内のSHOEI本社に赴き、テストさせてもらった。製品を購入すると、まずSHOEIギャラリーでSHOEIパーソナルフィッティングシステム(P.F.S.)で内装を調整する。これはライダーの頭をサイズ測定し、専用パッドを用いてジャストフィットする内装を作成するもの。

 P.F.S.が必須なのは、右目のスカウター=コンバイナの表示は見える位置がピンポイントなのが理由。頭の位置が少しズレただけで見づらくなるので、フィッティングが非常に大事なのだ。同様の理由でコンバイナなどのシステムを既存ヘルメットに後付けすることはできないという。

 並行して、スカウターの表示が見える位置に調整。続いてアプリをスマホにインストールして、オプティクソンとブルートゥースで無線接続する。簡単にペアリングでき、操作方法を学べば、いよいよ走行だ。

 これら一連の手順はスタッフが懇切丁寧に教えてくれる。またスカウターの表示状況を確認するため、試着走行も可能だ。

 なおバッテリーは別対式で胸ポケットなどに収納する必要がある。稼動時間を確保するためにはバッテリーが大型になり、帽体に内蔵するとヘルメットが重くなってしまう。それゆえに外付けを選択したとのこと。稼動時間は約6時間。付属の充電器を使って3時間でフル充電できる。

 ちなみに専用アプリがなくてもスマホと接続は可能だが、ナビは表示されず、スカウターの設定変更もできない。

操作はチンガード左側にビルトインされたスイッチで行う。電源、メインスイッチ、音量+-の4つで直感的に操作可能。厚手のグローブでも問題ない

輝度を自動調整、太陽が正面にあってもハッキリ見える!

 撮影を兼ねてSHOEI本社のある秋葉原近辺から台場の東京ビッグサイト付近まで走行してみた。

 その後も様々な状況でテストしたが、結論から言えば、きちんと使えて安全性にも貢献できる、というのが率直な感想だ。

 まずスカウターの表示がクッキリ見えるのがいい。情報は右寄り下側に浮かび、感覚としては左右3cm程度の大きさ。SHOEIによると「約9m先に情報が浮かび上がる設定」とのことだが、筆者には60cmぐらい先の距離に感じた。

 なおメガネとコンタクトレンズで試したところ、どちらも見え方は良好。筆者は老眼でもあるが、全く問題なかった。

 しかも周囲の明るさに関わらずシッカリ表示が見える。筆者が別のスマートヘルメットをテストした際、周囲が明るいとスカウターが光を透過して表示が読み取れないことがあった。

 一方、オプティクソンはチンガードのセンサーが光を読み取り、輝度を自動調整する。太陽を正面から見た際も、しっかり表示が視認でき、これには感心した。暗くても表示はしっかり確認可能で、むしろ暗い方がハッキリ見える。

 ただし左横方向から強い光が射した際など若干見えにくくなる場面もあったが、基本的に表示は常にクリアだった。

HUD表示の撮影は困難だが、こんな感じ。写真はクルマ乗車中に撮影したもので、実際は視界の下側に表示される。下部にナビの矢印と曲がるまでの距離を表示。上部表示は切り替え可能だ

スカウターの表示と音声を頼りにアッサリと目的地へ到着できた

 ナビは、曲がるまでの距離と方向(矢印)、交差点名を表示。メインスイッチを押すと、上部セクションにある目的地までの距離、到着予定時刻、時計、ヘルメットのバッテリー残量、スマホのバッテリー残量と表示を切り替えられる。

 曲がるポイントが近づくにつれ、矢印の色が青→オレンジと変化するのがわかりやすい。さらに音声ガイドがあり、曲がる方向と交差点名のほか、「左2車線を利用してください」「カーブが連続します」などの親切な案内も特徴的だった。

 音声は走行中ながらよく聞こえる。自然かつクリア寄りの音質で、スマホの音楽もしっかり楽しめた。

 なおマイクを内蔵しており、音声入力やスマホでの通話も可能。着信があった場合、相手の電話番号がスカウターに表示され(スマホに登録されていれば名前を表示)、メインスイッチの短押しで電話に出られる。

 ただしブルートゥースインカムの機能はなく、他のライダーのインカムと通話したい場合はLINE通話などを使う必要がある。

 なおナビアプリは、グーグルマップよりは電波が途切れやすく、時折リルートしていたが、問題なく目的地に着けた。ナビの音声だけでも走行は可能だけど、やはり矢印や交差店名を目で確認できるのはより安心できる。

走行テストの模様。スカウターの表示と音声案内に従って走行したら、難なく目的に到着できた。ルートが複雑な首都高では特に有効かと思う

視野を確保したまま情報を得られるのがポイント

 オプティクソンは、ヘルメットとしての基本性能も申し分ない。パーソナルフィッティングもあり、ホールド感は極上。風切り音や周囲からの音が静かなので、音声も聞きやすいようだ。ベンチレーションは、開閉式の吸気孔が口元と額、常時開放式の排気孔が後頭部にあり、熱気がこもりにくい。

 重量は1797g(Lサイズ)。同社システムヘルメットのネオテックIIと同程度だ。デバイスを内蔵しながら重量バランスも良好で、さすがのSHOEIクオリティと言える。

 また、実走テストを何度も重ねたとのことで、細やかな気配りが随所に見られる。ケーブルが外れにくいロック機構やバタつきを抑えるホルダー、スカウターの跳ね上げ機構、スイッチの操作性などが使い勝手に貢献している。

 ナビに関しては経由地スキップが便利だった。経由地を過ぎてもずっとリルートし続ける場合があるが、スマホを直接さわらずにオプティクソンのスイッチ操作でスキップできる。

 筆者にとって、視界を確保したまま情報を得られるのがオプティクソン最大のメリットと感じた。

 私は普段スマホをハンドルにマウントしてナビとして使っているが、どうしても画面を見るために視線を下に向けてしまいがち。周囲の視野が狭くなって危険だが、オプティクソンなら正面を向いたまま、瞳のピント調整でナビの情報が得られる。安全性に大きく貢献してくれるはずだ。

 また、マウントしたスマホが振動で故障するケースがあるが、マウントせずに済むのもメリットだ。

 ただしスカウターの表示が気になったり注視してしまい、運転に集中できない人もいるかもしれない。これは人によると思われるが、筆者は大丈夫だった。

後頭部にスポイラーを兼ねたエアアウトレットを装備。付属のコードホルダーを帽体のフチに挟めば、ケーブルのバタつきを抑えられる

オプティクソンは結局、買いなのか!?

 オプティクソンは別売のバッテリーを含めると、価格は約15万円。ヘルメットには耐用年数があるため、難しいのは承知の上で、筆者としては後付け仕様の登場をお願いしたい。

 とはいえ、既存のスマートヘルメットは20万円越えがザラだし、高級ブルートゥースインカムだけで3~4万円する。何よりオプティクソンはきちんと“使える”製品に仕上げられており、決して高すぎる価格ではないと思う。

 ガジェット好きや新しいモノを試したい人、新感覚のツーリングをしてみたい人にオススメできる製品だ。

スカウターを使わない時は跳ね上げておくことも可能。テストを重ね、快適に使える製品に仕上げられていた。販売好調のため、これから予約すると納期までやや時間がかかる。現状はツヤ消し黒の方が若干人気

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投稿 スカウターは表示クッキリで実用的! SHOEIのスマヘル「オプティクソン」をテストしてみた自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。