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12月11日(日)、アーティゾン美術館の魅力に迫る番組の第2弾アーティゾン美術館「パリ・オペラ座 – 響き合う芸術の殿堂」が放送される。

2020年1月に誕生した、東京・京橋の「アーティゾン美術館」。

同美術館は、ブリヂストンの創業者・石橋正二郎氏が収集した美術品を展示するために戦後間もない時代に作られた「ブリヂストン美術館」が前身だ。

BS朝日では2020年9月、『美の地平~ブリヂストン美術館からアーティゾン美術館へ~』と題して、同美術館が生まれ変わるまでの舞台裏を紹介した。


左:エドゥアール・マネ《オペラ座の仮面舞踏会》1873年 ワシントン、ナショナル・ギャラリー
右:エドゥアール・マネ《オペラ座の仮装舞踏会》1873年 石橋財団アーティゾン美術館

アーティゾン美術館は「創造の体感」をコンセプトに、これまでさまざまな展覧会を開催してきた。

今回の放送では、11月5日(土)から2023年2月5日(日)にかけて開催されている展覧会「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂」に注目し、見どころを紹介していく。

この展覧会は、建築、絵画、演劇、文学、音楽などさまざまな分野を内包する「総合芸術」の観点から、パリ・オペラ座と諸芸術との多様なつながりをテーマとする、これまでにない新たな企画。

番組では、日本を代表するバレリーナの1人、草刈民代がナビゲーターとして実際に同展を巡るとともに、展示されている国内外の約250点の作品について、本展の監修者、東京大学大学院・三浦篤教授の解説のもと、その魅力をわかりやすく伝える。


ジュール=ウジェーヌ・ルヌヴー《ミューズと昼と夜の時に囲まれ、音楽に魅せられた美の勝利(パリ・オペラ座円天井の最終案)》1872年 フランス国立図書館

収録のためアーティゾン美術館を訪れた草刈は、同美術館について「作品を鑑賞するだけでなく、美術館自体が居心地を楽しめる設計になっている気がします。まさに自分の感性を刺激してくれる美術館ですね」とコメント。

「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂」の会場では、バレエに関する作品の数々に見入り、瞳を輝かせる。

長く日本バレエ界をけん引してきただけに、三浦教授の解説にもバレリーナの視点でいろいろと質問。視聴者にとっても、作品のどこを見るべきか参考になるトークを繰り広げた。


エドガー・ドガ《踊りの稽古場にて》1895-1898年 石橋財団アーティゾン美術館

収録を終え、自身もパリ・オペラ座で稽古をした経験がある草刈は、「世界最高峰の劇場のひとつであり、バレエの歴史にまつわる需要なポイントと関わる展示がいくつもあって、興味深く拝見しました」と感想。

さらに、この展覧会の魅力を伝える番組については、「劇場自体に色々な要素があるので、さまざまな作品を見て、何と何がつながっているのか“広がり”を感じていただきたいです。時代が進むにつれ、どのように表現の幅が広がったのかもよくわかると思います」と、見どころを語った。

番組には、2007年パリ・オペラ座にて行われた「パリ・オペラ座 松竹大歌舞伎」に出演した歌舞伎俳優・市川猿之助も登場。番組コンシェルジュとして同劇場の歴史などを伝える。

そのほか、パリ現地に飛び、オペラ座に加えて、オルセー美術館、フランス国立図書館など、フランスの国宝級の数々を高精細映像4Kカメラで細部に至るまで撮影。臨場感あふれる映像で至宝の美しさを浮き彫りにする。

◆草刈民代 コメント(全文)

――収録の感想をお聞かせください。

パリ・オペラ座ということで、バレエの歴史にまつわる非常に重要なポイントと関わる展示がいくつもあり、興味深く拝見しました。

舞台作品は形としては無くなりますが、ヨーロッパの劇場は作品を保存する場所でもあり、おそらくどの劇場も資料は膨大に残っています。なかでもパリ・オペラ座は最高峰だと思います。

非常に価値のあるものがいろいろと並んでいる場所なので、この展覧会では劇場の表側でなく裏側の歴史を垣間見られて、とてもよかったです。

作品のなかには、マリー・タリオーニというロマンティック・バレエ時代のトップバレリーナの私物の手紙があります。「劇場にトゥ・シューズを頼んだけれど期日までに届かなかったので、自費で頼んだ靴を履かなければいけませんでした」との内容でした。

こんな貴重なものを日本で、しかも説明付きで見られると、遠い存在に思える人のことを身近に感じられますし、舞台芸術をさまざまなジャンルから楽しめる展覧会だと思います。

――草刈さんにとってのパリ・オペラ座とは?

2007年の終わりごろ、オペラ座で稽古をする機会に恵まれ、最高峰というものの何たるかを理解しました。日常的なことも含めて、システムの整い方などすべてのレベルが最高峰だったんです。

フランスは“アーカイブ”という意味においても、本当に多くのものを保存しています。それは芸術の価値、もっといえば人の価値、人がやったことの価値をすごく大事にしているということだと感じました。

マリー・タリオーニ自筆の手紙の多くが残っているのも、その人の価値がわからないと残っていないと思うんです。

もちろん世紀のスターといわれ一世を風靡した人ですから、私物の多くが残っているのも当然ですが、保存すること・保管することを通してその人の価値をどれだけ理解しているのかが伝わり、フランスがそういう文化だからこそ、今回のような展覧会が実現したと感じます。

――展示作品で心惹かれたのは?

やっぱりマリー・タリオーニのトゥ・シューズ。展示されているトゥ・シューズは1840年頃のものですから、残っているのがすごいことですし、そもそも日本人の私が実物を見られる機会って限られていると思うんです。

彼女は初めてトゥ・シューズで作品を踊った人です。トゥ・シューズの先は固そうでしたが、いまほどの固さではないので、おそらく当時はこんな踊り方だったんじゃないか、と実際に見たからこそ想像できました。

他にもパリ・オペラ座の歴史を知る上でポイントになる出来事がふたつあって、その両方に関わる作品があります。資料を読んでわかったつもりでも、実物を見るとより整頓されて、理解が進むと思います。

――視聴者のみなさんにどんなところを見てほしいですか?

“広がり”でしょうか。今回の展覧会は「パリ・オペラ座」という劇場の展覧会であり、劇場自体に色々な要素があります。さまざまなものを見ることで、何と何がつながっているのか“広がり”を知ることができて、とても興味深いですし、おもしろいと思います。

バレエ・リュス(1900年代初頭に人気を博したバレエ団)の時代になると、ココ・シャネルをはじめ、ファッションデザイナーなど多くのアーティストが関係して作品が完成するようになります。

どの時代、どの期間にどれだけ表現の幅が広がったのか。この展覧会では、そういうことがよくわかると思います。

――アーティゾン美術館に来ての感想は?

美術館自体が居心地を楽しめる設計になっている気がしました。ですから、作品を眺めるだけでなく、この空間を楽しむというか、いろいろな楽しみを見出せると思います。開催中の展覧会に加えて、いろいろなものを見て、自分の感性を刺激してくれる美術館ですね。