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 2022年10月13日に記者会見を行ったソニー・ホンダモビリティだが、2023年1月5日には米国ラスベガスの『CES 2023』で、新ブランドのプロトタイプEVとなる「AFEELA」を公開した。2025年中にこの高付加価値EVの受注を開始するが、エンタメのソニーと自動運転などに強みを持つホンダの融合からどんなクルマになるのか、国沢光宏氏が予測する。

文/国沢光宏、写真/ホンダ、ソニー、ソニー・ホンダモビリティ

■AFEELAとホンダEVの価格レンジには大きな差が?

2023年1月5日に開幕した北米の「CES 2023」で初公開されたソニー・ホンダモビリティの新EV、AFEELAのプロトタイプと水野泰秀ソニー・ホンダモビリティ会長兼CEO

 ソニーとホンダの協業となる『ソニー・ホンダモビリティ』のコンセプトカー(電気自動車)が2023年1月5日からラスベガスで始まったハイテクの見本市、『CES 2023』に新ブランド『AFEELA』のプロトタイプとして出展された。このモデルについて漏れ伝わる開発現場の情報などをレポートしてみたい。どうやらソニーとホンダの温度差は少なくないようだ。

 まず、プラットフォームだけれど、当然ながらホンダとなる。今までソニーがCESに出展していた車両はカナダに本拠地を置くマグナの子会社である『シュタイア』で作ったもの。マグナってボッシュやデンソーのような自動車部品メーカーだし、クルマ通なら知っているとおり、シュタイアはBMWのX3など年間30万台近い完成車を生産している大きな企業だ。ここに丸投げしていた。

 そのままマグナと組むのかと思いきやホンダを選んだ。したがって今までCESで発表してきた『VISION-S 』シリーズとまったく関係ない車両になる。ホンダはオハイオ工場などで生産するための電気自動車を開発中で、ソニー・ホンダモビリティの新型車も新しいプラットフォームを使う。当然、日本で販売するとしたら、オハイオ工場で生産したモデルということ。

ソニー・ホンダモビリティが発表したAFEELAプロトタイプモデル。フロントマスクはホンダ車テイストに近いか?

 興味深いのは価格レンジ。ホンダが開発している電気自動車の概要を調べてみると、どうやら500万円前後のイメージらしい。シビック~アコードといったクラス。対するソニー・ホンダモビリティ製の電気自動車は1000万円くらいになるようだ。トヨタとレクサスの価格差より大きい。VWトゥアレグとポルシェカイエンだって同等エンジンなら2倍にならないですから。

 なぜ、そんな大きい価格差があるのか? ADASと車内エンタティメントに注力しているからだという。詳細はCES 2023で発表された以上のものはわからないが、自動運転レベル3を狙ったり、ソニーが得意とするAVやゲームなどの要素をふんだんに取り入れたりしていくようだ。ソニー好きからすれば、もう辛抱堪らないレベルになるとのこと。CES、先端技術のお祭りですから。

■ソニーとホンダの決定的な違いはいったいどこにあるのか?

こちらは以前にソニーが発表していたコンセプトモデルのビジョン-S 02

 開発現場はどうなっているか? そもそも論なのだけれど、ソニーからすればホンダをマグナと同じように考えているらしい。

 参考までに書いておくと、企業の価値を示す時価総額(株式相場×発行株数)を見ると、ソニーの12兆6500億円に対し、ホンダは半分以下となる5兆4900億円。ソニーとしてはホンダに開発と生産を委託するくらいのつもりでいる。代表もソニー側。開発コストは半々と聞く。

 もちろん、ソニー側の対応を見ていると決してホンダを下請け扱いにしていない。敬意を表しているように見える。ただ、ホンダ側を取材してみたらすでに反発しているようだ。

 ソニーとホンダの決定的な違いはふたつ。ソニーが収益源としているエンタメは、自動車と違って命を預けない。加えて価格だって安く、多少のバグがあっても許容される。自動車産業からすればすべて簡単に譲れない要項。

 もっとわかりやすく言えば、クルマの場合、起動ボタンを押せば100%不具合なく立ち上がることを目指す。家電&エンタメであれば、1000回に1回くらいなら許容される。したがって仕様変更のハードルは自動車業界の常識からすればかぎりなく低い。当然ながらアレコレとソニーからリクエストが出てくることだろう。ソニーとしても「魅力的な商品」を目指したいですから。

 そんなイメージでホンダ側に伝えると、いろんなことが「間に合わない」という返事になる。これをソニー側は「やる気がない!」と受け取りがち。すでに現場で齟齬も発生しているようだ。

 お互い尊敬し合えればいい意味で今までにない魅力を作れると思う。ただ、自動車産業とエンタメ産業の立場の違いは、皆さんイメージするより大きいんじゃなかろうか。自動運転の価値観など、特に厳しい?

 興味深いことにホンダ側が協業のため送り込んでいる開発チームの人選は、なかなか苦労している様子。20人程度しかいないLPL(車両開発のチーフエンジニア)や、同じく60人ほどしかいないLPL代行(LPLに3人くらいずつ付く番頭役)を割くことはできない。

 微妙な内容を含むため、ホンダ関係者の口が硬いものの、喜んで協業に出ようという人はいないと聞く。このひと言だけで想像つきます。

【画像ギャラリー】ソニー×ホンダの本格的始動で生まれる高付加価値EV、「AFEELA」はどんなクルマになって登場するのか!?(27枚)画像ギャラリー

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