「クルマで雪道を走る」となればスタッドレスタイヤの出番だが、万一大雪に見舞われて「チェーン規制」が行われるとスタッドレスタイヤでも走行できないから、タイヤチェーンのお世話にならねばならない。
このため万一のためにタイヤチェーンを携行することは有効なのだが、タイヤチェーンにもいくつかタイプがあり、どれがいいのか迷ってしまう人も多いだろう。そこでJAF(日本自動車連盟)が行ったタイヤチェーンのテストをもとに、タイプによる性能の違いを説明しよう。
文/ベストカーWeb編集部、写真/JAF、AdobeStock(トップ画像=photo 5000@AdobeStock)
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登坂能力では亀甲型非金属チェーンが優位に
タイヤチェーンのタイプだが、JAFではカー用品店などで売られている代表的な以下の3種類をテストした。このほかにもゴム製や布製のチェーンがあるがこれらは対象となっていない。
・金属チェーン(亀甲型)
・金属チェーン(はしご型)
・非金属チェーン(ウレタン系)
まずは前輪駆動のコンパクトカーを使って、坂道を登れるかのテスト。圧雪された勾配15%(約8.5度)と20%(約11.3度)の坂道を使って、それぞれ3回検証してみた。装着タイヤは新品の夏タイヤだ。
結果だが、15%の勾配ならば3種類どのタイヤチェーンでも上ることができた。
しかし20%の勾配となると、金属チェーン(はしご型)と非金属チェーン(ウレタン系)は斜面に入るとすぐに滑り出し、最後まで上ることができなかった。金属チェーン(亀甲型)のみ上りきることができたが、タイヤが空転し、車の挙動も乱れた。
旋回や制動力では非金属チェーンが優勢
続いて圧雪された広場に半径25mの円を書き、その円周に沿って走行する旋回テスト。進入速度20km/hと30km/hの2つのケースで検証した。
結果は20km/hならばどのタイヤチェーンも安定して走行できた。
しかし30km/hまで速度を上げると、安定して走行できたのは非金属チェーン(ウレタン系)のみ。金属チェーン(亀甲型)はチェーンを装着していないリアタイヤがスリップしてスピンし(オーバーステア)、金属チェーン(はしご型)は前輪がスリップして外側に膨らむアンダーステアが発生した。
はしご型の金属チェーンはタイヤの回転方向に対して垂直にしかチェーンが張られないため、横方向に対してはグリップ力が弱いことが推定できる。
最後は制動力テスト。40km/hから急ブレーキをかけ、停止するまでの距離を測った。
結果は、非金属チェーン(ウレタン系)がもっとも短い距離で停まることができた。ついで金属チェーン(亀甲型)、金属チェーン(はしご型)と続き、3回のテストの平均をとると、1位と3位では2.8mの距離の差が生じた。
チェーンを買ったら必ず装着テストを
試験の結果をまとめると、登坂能力では金属チェーン(亀甲型)、旋回能力や制動力で非金属チェーン(ウレタン系)が好結果を残すこととなった。
ただしこれらはあくまでタイプ別の特性を示すテストであり、タイヤチェーンの銘柄や路面状況、駆動方式などによって異なる結果が生じうることは記憶しておきたい。もっとも歴史の古い金属チェーン(はしご型)は奮わなかったが、手に入りやすく安価という点では捨てがたい魅力もある。
改めてタイヤチェーンを使うときの注意点だが、まず購入時はタイヤサイズを調べてサイズにあったものを選ぶこと、雪道に出る前に必ず装着テストを行うこと、などを覚えておきたい。装着時は肘まで隠れる防水軍手などを用意すると、手を汚さずに済む。
また金属チェーンは非積雪路ではまったくグリップしないので、路面に雪がなくなったらできるだけ早めに外すことも重要だ。関越道の関越トンネルは路面が削れて粉塵が舞うことを防ぐため、金属チェーンの使用を禁止している。
金属チェーンを装着していると脱着場での作業が付け外しが必要になるので注意したい。金属チェーンと非金属チェーンでは出せる速度も異なる。一般的に金属チェーンは30km/h、非金属チェーンは50km/h程度を上限と考えるのがいいだろう。
たとえタイヤチェーンを付けていても、急ハンドルや急ブレーキなど「急」の付く操作は避け、ゆっくり走ること。装着しているという過信が事故につながらないよう、安全運転に努めよう。
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