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XV改名したけど……せっかくのネームバリュー捨てていいの? 名称変更の功罪

 XVがモデルチェンジを機に、クロストレックに改名。せっかく培ったブランドを捨てていいのか? なんて余計な心配をしてしまったりする。

 今回は、改名で成功した例と失敗した例を挙げ、歴史に学んでみたいと思います。ちなみに、「成功」「失敗」の判定はあくまで国内販売を基準にいたしておりますので、よろしくお願いします。

文/清水草一、写真/TOYOTA、DAIHATSU、SUZUKI、MITSUBISHI、NISSAN、HONDA、SUBARU

■ヴィッツ改名でさらに飛躍!! 成功例4選

●トヨタ ヴィッツ→ヤリス

1999年の登場以来大ヒットし、3代・20年間にわたってトヨタのボトムラインを支えたトヨタ ヴィッツ。2000年のモデルチェンジと同時に名称変更してトヨタ ヤリスとなった

 ヴィッツは日本名で、海外ではもともとヤリスだったが、初代ヴィッツは99年の登場以来大ヒットし、3代・20年間にわたって、トヨタのボトムラインを支えた。

 ヤリスは、20年も慣れ親しんだヴィッツというブランド名を捨て、国際名に統一したわけだが、フタを開ければ3代目ヴィッツを超えるヒットになっている。

 そもそもヴィッツユーザーは、「ヴィッツ」という車名にそれほど愛着があったわけではなく、ヤリスという新しい車名に即座に馴染んだ。加えてヤリスは、世界一の燃費を誇るハイブリッドモデルや、超スポーツ志向のGRシリーズをラインナップ。ブランドイメージもかえって上昇したようだ。まさに大成功。

●トヨタ ラッシュ/ダイハツ ビーゴ→トヨタ ライズ/ダイハツ ロッキー

 ともにダイハツが開発を担当する小型SUV。ラッシュ/ビーゴ時代はパッとしなかったが、ライズ/ロッキーになって大ブレイクした。その背景にはSUVブームという超追い風があったが、DNGAの採用によってクルマの質感も大幅に向上。

 国内SUV販売台数のトップを争う大成功となった。もともとラッシュ/ビーゴの車名にはブランド力がほとんどなかったので、旧車名を捨てたのも、若干は追い風になったかも?

●スズキ パレット→スペーシア

 パレットは販売台数でライバルのタントに大敗北を喫したが、スペーシアはタントといい勝負を展開し、年によっては上回るところまで挽回している。スペーシアギアの追加でイメージも向上し、改名は大勝利となった。

 ただこのケースは、パレットがタントに対して室内容積で劣るなど、商品力自体が足りなかった面が大きい。つまり、失敗作の名前を1代限りで捨てただけなんですね。

●三菱 エアトレック→アウトランダー

 エアトレックは地味でパッとしないクルマだったが、アウトランダーになってからぐっと存在感を増し、3代目の現在は「アウトランダーPHEV」が三菱の看板車種に。間違いなく改名の成功例だ。

 ただ、エアトレックの輸出名は「アウトランダー」だった。つまり国内名を海外名に揃えただけではありまする。

■デザインがウケなかった最大の要因か!? 微妙な結果2選

●日産 ジューク→キックス

海外市場では成功をおさめた日産 ジュークだが、個性的なデザインの影響か、国内では海外ほどの人気は得られなかった。後継モデルでは名称を変更して日産 キックスとなった

 2010年に登場したジュークは、海外では大成功を収めたが、国内では昆虫の複眼を思わせるエグいデザインが受け入れられず、鳴かず飛ばずだった。そこで日産は、ジュークの後継モデルの車名をキックスに変更した。

 キックスという車名は、もともと日産がコンセプトカーの名前として2度使った後、三菱パジェロミニのOEM版の社名として使った経験がある(2008~2012年)。

 日産にとっては、歴史は古いがあまり日の目を見ない車名だったが、ジューク改めキックスも、販売はいまひとつ振るわず、存在感はジューク時代から横ばいだ。

●ダイハツ ミラココア→ミラトコット

 ミラココアは、ムーヴラテでダイハツが切り開いた「カワイイ軽」の後継モデルだったが、ムーヴラテ時代に比べると販売が振るわなかった。

 そこでダイハツは、ブリブリのカワイイ軽をやめ、女子向けナチュラルテイストに転換。車名も「ミラトコット」に変更したが、デザイン的にまったく特徴のない単調なイメージになり、販売は上向いていない。

■セドグロにブルーバード……セダンだらけの失敗例6選

●トヨタ コロナ→プレミオ/アリオン

トヨタ コロナはコロナプレミオを経て、最終的にはトヨタ プレミオとなっていく

 中継地点に「コロナプレミオ」がありましたが、最終的にはプレミオ/アリオンとなり、昨年、長い生涯を終えました。合掌。

●日産 セドリック/グロリア→フーガ

 セド/グロじゃもう古臭くてダメだ、フーガで風雅な風を吹かせるぜ! という狙いだったが、長期低落傾向はまったく止められず、2022年夏で生産終了。涙。

●日産 セフィーロ→ティアナ

 セフィーロの販売不振により、心機一転車名を変更。「モダンリビング」な内装が好評で初代はそれなりに売れたが、2代目、3代目はまったのペケで、一昨年、国内での生涯を閉じました。ただし中国など海外では、まだまだ日産の看板モデルとして頑張ってます!

●日産 ブルーバード→シルフィ

 途中「ブルーバードシルフィ」をはさみましたが、3代目で「シルフィ」になり、昨年、その生涯を終えました。ただ中国では元気に4代目にフルチェンジされ、今も日産の看板モデルです。アメリカでも「セントラ」の名前で売られてます。

●日産 パルサー→ティーダ 日産 サニー→ティーダラティオ

 ともに販売不振に喘ぎまくり、ゴーン体制下で車名を変更。それなりに盛り返すも、時代の波には逆らえず、ともに消滅いたしました。

●ホンダ フィットアリア→グレイス ホンダ フィットシャトル→シャトル

 ともに消滅したので失敗例に入れましたが、そもそも小型セダン/ワゴンがまったく売れず、国内では将来性もないと見極められたためで、どっちもクルマとしてはよかったんだよねぇ。

■改名は売り上げに影響せず!? 大事なのはクルマのデキ

 とまぁこのように、改名して結果的に失敗となったモデルは、そのほとんどがセダンなどの背の低い乗用車系。改名が失敗したわけではなく、時代の流れに逆らえなかっただけです。

 逆に成功例も、改名の成功というより、クルマのデキの向上や時代の波に乗った面が大きい。改名は、あまりユーザーには影響を与えてないってことですネ! クロストレックも、時代の波に乗っている小型SUVなので、たぶんうまく行くでしょう!

【画像ギャラリー】改名を機にブレイクする演歌歌手やお笑いコンビもいます!! クルマの名称変更の成功例と失敗例(34枚)画像ギャラリー

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