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 北の地方からは雪だよりも聞こえてきた。クルマの冬支度を考えている人もいるだろう。なかでも注意したいのが、普段雪の降らない場所で暮らす人が雪国に出かける場合の準備。普段の経験則が当てはまらないため、思わぬ事態が起きるからだ。

 そこで本格的な冬に突入する前に、雪道などを走るうえでのチェックポイントをまとめておこう。

文/ベストカーWeb編集部、写真/AdobeStock(トップ画像=candy1812@AdobeStock)

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■軽油は意外と早く凍る

ウィンドウウォッシャー液は原液だと−30度、2倍に薄めても−10度程度までは凍結しないが、極端に薄めていたり、水道水で代用している場合などは凍結の危険がある(titushkin@AdobeStock)

 まず出発前の準備から。自分の愛車の中で「凍っちゃまずいもの」を中心に点検しよう。

 最初はウィンドウウォッシャー液。雪道走行では窓が汚れるので、これが使えないと前が見えず危険でもある。そこでタンクにウォッシャー液が十分入っているかチェックするのだが、入っていればいいってことでもない。

 通常売られているウィンドウウォッシャー液は、原液だと−30度、2倍に薄めても−10度程度までは凍結しない。

 しかし極端に薄めていたり、水道水で代用しているような場合は危ない。一度使い切って専用のウォッシャー液に交換したほうがいいだろう。カー用品店などでは寒冷地用のウォッシャー液も市販されている。

 エンジン冷却に使われるラジエター液(LLC=ロングライフクーラント)はどうか。これが凍るとクルマが走らないので、まずは十分な量が入っているかをリザーバータンクなどでチェックしよう。

 東京近郊の場合は濃度30%程度のLLCが入れられていることが多く、これでも−15度程度までは凍結しない。それ以上の極寒地に出向くという場合は、ディーラーなどでLLCを交換したほうがいいだろう。サーキット走行などに適した高負荷対応のLLCも寒さには弱いので同様だ。

 燃料にも気を配りたい。雪道は走行抵抗が大きくて燃費も落ちるから、給油は余裕をもって行うこと。まさかのガス欠は命に係わる。

 ガソリン車ならば満タンで出発するのが基本だが、気を付けたいのがディーゼルだ。ディーゼルに入れる軽油は、場所や季節によって異なる特性のものが流通しており、冬の東京近郊では「2号」という軽油が売られることが多い。

軽油の使用ガイドライン(JIS規格)
軽油の要求品質(JIS規格)

 この2号軽油は−5度以下で目詰まりが生じはじめ、−7.5度以下で流動性を失うというから、意外に「凍りやすい」のだ。このため極寒地に出かける場合、ディーゼルは自宅近くではなく、現地で給油することをおすすめする。寒さに強いのは「3号」あるいは「特3号」軽油なので、スタンドのスタッフに確認すれば確実だ。

 なお雪道ドライブでは、ワイパーやエアコンなど電装品の使用量が増すためバッテリーの負荷も高まる。長く交換していなかったり電圧が低下しているバッテリーは交換するか、まさかのためにバッテリーケーブルを携行しておくのがいいだろう。

■タイヤチェーンは自宅で一度付けてみる

スタッドレスタイヤの進化で、タイヤチェーンを付けたことがない人も多い。タイヤチェーンを購入したら、豪雪地へ向かう前に一度装着して手順を確認する。何事もリハーサルは大切(JuliaNaether@AdobeStock)

 次はタイヤチェーンだ。近年はスタッドレスタイヤの進化が目覚ましいので、たいていの雪道はこれで乗り切れそうだが、きつい上り坂などが凍結してしまうとお手上げという事態も起こり得る。出先で大雪が予想される場合は、タイヤチェーンを携行しておくほうがいいだろう。

 タイヤチェーンを購入したら、出発前に必ず装着テストをすること。現地での装着作業は寒い雪の中ということが多いので、そこでの不安を軽減するためだ。その際絶対に必要なのが軍手。できれば防水性があり、肘まで覆えるロングタイプが、衣類などを汚さなくておすすめだ。

 ちなみにタイヤチェーンをどのタイヤに履かせるかだが、駆動輪(エンジンパワーを路面に伝える車輪)に装着するのがルール。FFなら前輪、FRなら後輪だ。

 では4WDはどうするか。これはそのクルマの基本レイアウトによる。実用車のようなFFベースの4WDならば前輪に、スポーツカーのようなFRベースなら後輪に装着しよう。4WD車にはべースとなる2WD車があることが多いので、カタログでそのベース車の駆動方式を確認すればOKだ。

 雪による交通規制だが、通行止めのほかに2段階あることも覚えておきたい。まずは雪の降った高速道路などに広く出される「冬用タイヤ規制」。これはタイヤチェーンのほか、スタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤを装着していれば走行可能だ。

 もうひとつが「チェーン規制」。これは「大雪特別警報」や「大雪に対する緊急発表」が行われるような異例の大雪時に、区間を限定して行われる。これが発令されている区間は、たとえスタッドレスタイヤを履いていても、タイヤチェーンなしでは走れないので注意したい。

 ちなみに全国の高速道路では、この「チェーン規制」が行われる区間があらかじめ決まっている。事前にチェックしておくといいだろう。

■屋根に雪を載せて走っちゃだめ!

屋根に雪を載せたまま走るのは厳禁。走行中、後方に雪が落ちると後続車を事故に巻き込む可能性がある。出発前に落としておこう(kelly marken@AdobeStock)

 最後に雪道運転の基本をまとめよう。まずドライブの計画は余裕をもって決めること。雪の路面は状況が刻々と変化するので、それまでの経験を鵜呑みにせず、ペースを抑えて走りたい。急ブレーキや急ハンドルなど「急」が付く操作は厳禁だ。

 雪道では多くのクルマが走った跡が轍となって残るが、この轍から外れて走ろうとするとハンドルを取られてヒヤっとすることがある。とはいえハンドルを始終握りしめていては疲れてしまうので、多少のふらつきは織り込んで、ハンドルを掌で遊ばせるような感覚で走るといいだろう。

 現地でクルマを駐めておくと、雪が積もって雪だるまのようになる。そんなときはまずドアと屋根の雪を払って車内に入り、ワイパーがオフであることを確認してエンジンをかけよう。雪が積もった状態でワイパーが動いてしまうと、ワイパーアームが折れたりモーターの故障に繋がるためだ。

 エンジンがかかったらフロントウィンドウの曇りを取るデフロスタとリアウィンドウの熱線デフォッガーを作動させ、じわじわ温めながらウィンドウ周りの雪を払う。

 ここで間違ってもウィンドウにお湯をかけたりしないこと。寒暖差の膨張にガラスが耐え切れず、最悪の場合割れてしまうこともある。なお屋根の雪を落とさずに走り出すことも絶対やめたい。不用意に雪が落ちると後続車の障害となり、事故の原因にもなるためだ。

 雪国では、ワイパーゴムがガラスと固着してしまうのを防ぐため、ワイパーを立てて駐車するのが基本。とはいえ「立てておいたら雪の重さでワイパーが曲がってしまった」という人もいるから、状況を見て判断したい。

 ワイパーに古新聞などを挟んで浮かせるだけでも効果があるし、ワイパーゴムを固着に強いスノーブレードに交換しておくという手もある。

 さて。いかがだったろうか。冬のレジャーは楽しいが、その楽しさを行き帰りのトラブルで台無しにしてはいけない。万全の準備で楽しいドライブを楽しみたい。

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