弁正は血筋の浮いた目で仲麻呂を見やり、泣きながら手を合わせて懇願(こんがん)した。「真備、どうだろう。押さえ竹を軸にして巻き取っていけば、巻物を広げずにすむと思うが」仲麻呂は弁正の哀れな姿を見ていられなくなった。密命を受けて以来封じていた同情心や惻隠(そくいん)の情が、帰国を目前…
弁正は血筋の浮いた目で仲麻呂を見やり、泣きながら手を合わせて懇願(こんがん)した。「真備、どうだろう。押さえ竹を軸にして巻き取っていけば、巻物を広げずにすむと思うが」仲麻呂は弁正の哀れな姿を見ていられなくなった。密命を受けて以来封じていた同情心や惻隠(そくいん)の情が、帰国を目前…