年末年始のネットで注目された一般社団法人「Colabo」(代表理事:仁藤夢乃)の会計処理を巡る問題で、Colabo側を追及している元ゲーム開発者の男性からの住民監査請求結果について、都庁記者クラブに加盟する大手新聞社は4日午後以降、報道するようになった。
Googleニュースによると、三が日の時点で住民監査請求の結果を取り上げた記事を載せたメディアは、SAKISIRU、文春オンライン、JBpress、アゴラのみだった。
請求に「理由あり」と認められたのは、東京都では舛添要一前知事の公用車問題以来、6年ぶりの「珍事」。都の監査事務局による正式公表が年明けの開庁日の1月4日まで持ち越されたが、請求した男性が自身のSNSなどで内容を開示し、概要が知れ渡ったため、ネット民の間では「なぜ大手メディアは報じないのか」と不信感を募らせる事態となった。
そうした中、真っ先に大手メディアで最初に取り上げたのがサンケイスポーツの電子版。「Colabo」がツイッターのトレンドワードに入ったという切り口で4日朝、電子版で配信した。しかし正式公表の前に大手メディアでの報道はこれだけ。サンスポは産経新聞発行媒体ではあるものの、都庁記者クラブに記者が出入りしているわけではなかった。
そして4日の昼に正式公表され、東京都のサイトにアップ。請求した男性や、Colaboの名前は匿名ながら監査内容の全容が明らかになり、SNSではこの中身の解釈や分析で話題は持ちきりになった。夕方になり、ようやく都庁記者クラブメディアでのネット速報が配信を開始。19時ごろまでに時事通信、産経本紙、共同通信、毎日新聞の順に掲載された。
朝日新聞は深夜22時過ぎになってアップ。読売新聞は同日中にネットで配信せず、翌朝、都内版紙面に掲載した記事を午前8時過ぎにようやくオンラインで配信した。
ネット時代には見過ごされがちだが、各紙の問題意識の程度を探る上で注目される紙面(東京本社発行版)での扱いは、基本的に東京のローカルニュースに収容された。読売(都内版)はベタ記事どまり、朝日(同)は見出しが2段、毎日は3段で扱っていた。
東京新聞は前日、共同通信の速報版をネットで載せていたが、紙面では掲載されなかった。日本経済新聞は唯一、電子版でも紙面でも掲載しなかった(5日時点)。
日頃の各紙の論調で「左派寄り」の朝日や毎日の方が扱いが大きいことに意外だと受け止める向きもあるかもしれない。毎日については「記者が資料を読み込んで理解した上で記事を書いている」(メディア関係者)との評価を得ていた。
ただ、デジタル報道センターの酒造唯記者がこの日、各紙の朝刊での扱いを総評した際、「SNSから得られるニュースがいかに偏っているかを示す好例だろう」とネット民を揶揄するツイートをしたことで一気に炎上。都庁クラブの「健闘」を台無しにしてしまった。
Colabo、本紙で扱ったのは産経だけ(第3社会面2段)。朝毎読はいずれも都内版(日経、東京は記事なし)。各社ともそのレベルのニュースだという判断で一致している。SNSから得られるニュースがいかに偏っているかを示す好例だろう
— 酒造唯@「誰が科学を殺すのか」科学ジャーナリスト賞2020を受賞 (@yuishuzo) January 4, 2023
一方、日経については紙面でもネットでも全く掲載されなかった背景について、系列の日経ビジネスがかつて、Colaboの仁藤代表に「次代を創る100人」に選出した過去との関連が取り沙汰された。大手新聞で唯一ピクリとも動かなかったことでネット上の不信感を買う余地を残した。