12月7〜8日に鈴鹿サーキットで行われる全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同/ルーキーテスト。エントリーリストは12月5日に発表されているが、大半のチームがレギュラーシーズンとは異なるラインアップとなっており、興味深いポイントも多い。
翌日からのテストに向けて準備が進む12月6日の鈴鹿サーキットで、各チームに今回のテストにおけるラインアップ編成の意図や“事情”を聞いた。
■笹原起用のトムス「明らかな何かがあれば……」
まずは、今季TEAM MUGENで2勝を挙げる活躍を見せていた笹原右京が、今回はKuo VANTELIN TEAM TOM’Sからエントリーすることが発表。36号車をジュリアーノ・アレジとシェアすることになった。
「笹原選手は2022シーズンはすごく速かったですし、うちもセットアップで悩んだところもあったので、そういったところのヒントになれば嬉しいかなと思っています。(笹原も)空いていたので、テストに乗ってもらおうということになりました」とトムス山田淳氏は説明した。
11月25日にTOYOTA GAZOO Racingから発表された2023年のラインアップでは、トムスの36号車のみがTBAとなっている。
今回のテストが来季のシート決定に関連しているかについて、山田氏は「そこまでは考えていないです。とりあえず、セットアップのヒントが得られればいいなという感じです」と述べる。ただ、「テストが終わってみて、(結果が)明らかな何かがあれば、ちょっと考えなければいけないですね」と興味深いコメントも残している。
なお、予定としては1日目がアレジ、2日目を笹原が担当するとのことだ。
この他、トヨタ系チームでは、TEAM IMPULは20号車を平川亮と関口雄飛ででシェアし、19号車はスーパーフォーミュラのeスポーツアンバサダーに就任したイゴール・フラガがテストドライブをする。
すでに同チームは2023シーズンも関口と平川の2台体制でエントリーすることが決まっており、eスポーツアンバサダーが実車をテストドライブする機会を作りたいというJRP日本レースプロモーションの意向に協力し、今回のエントリーが実現したようだ。
KCMGも7号車が小林可夢偉と野中誠太がマシンをシェアすることになっている。こちらもすでに来季の体制は決まっているのだが、トップフォーミュラでの経験を積ませるために、野中にもテスト参加の機会が与えられたようだ。
■王者野尻が不参加、ローソン1台体制となるMUGEN
一方、2023年の体制が発表されていないホンダ勢は、レギュラーシーズンと比べていろいろと動きがあるエントリーリストとなった。
まずは今シーズン、ドライバーとチームのダブルタイトルを勝ち取ったTEAM MUGEN。今回の合同テストでは、かねてより噂されていたレッドブルジュニアドライバーのリアム・ローソンが15号車で参加することが発表されたが、もう1台の1号車はテストに参加せず、2年連続チャンピオンとなった野尻智紀もエントリーリストに名を連ねていなかった。
実際にピットの準備風景を見ても、TEAM MUGENは1台分のガレージスペースのみを確保しており、1号車の姿は見当たらない。これについて、TEAM MUGENの田中洋克監督に聞くと「来年はエアロパッケージが新しくなることもあるので、今年のおさらいをやるにしても、そこまで必要ではないのかなと考えています。ただ、15号車に関しては(ローソンが)初めて乗るので、ここでスーパーフォーミュラの感覚をしっかりつかんでもらいたいなと思っています」とのこと。
2日間のテストでは、野尻や一瀬俊浩エンジニアら1号車メンバーも現地入りし、ローソンのサポートを行うという。
また、今季ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した佐藤蓮は、TCS NAKAJIMA RACNGの65号車でテストに参加することとなった。
「来年のことは何も決まっていませんが、ホンダさんからお話をいただいて、テストに参加させていただけることになりました。まずは2日間しっかりと走り切りたいなと思いますし、自分の今後につなげるためにも、ドライビングを見つめ直す機会にしたいです」と、意気込みを語る。
なお、今回のテストでは山本尚貴の64号車を岡田淳エンジニア、佐藤の65号車を加藤祐樹エンジニアが担当。ここもテストということで、新たな発見につながればという意図が大きいようだ。
ThreeBond Drago CORSEは福住仁嶺に加えて、三宅淳詞がテストに参加する。これについて道上龍監督は「我々は1台体制ということもあるし、これまで仁嶺やタチアナ(・カルデロン)がこのクルマに乗ってきたなかで、違うドライバーに乗ってもらって、我々のマシンの位置付けだったり、いろいろなところを確認ができればいいなと思っています。それで三宅に声をかけました」と説明した。
テストでの予定については「1日目は三宅に乗ってもらって、2日目は仁嶺に乗ってもらう予定。特に三宅にはTEAM GOHで乗っていた時の違いなどをフィードバックしてもらえればなと思います」と道上監督。三宅のテスト参加に期待を寄せる部分も大きいようだ。
今回『TEAM TBD』としてエントリーしている33号車は、発表の段階では謎に包まれていたが、現場に来てみると、同チームのメンテナンスは今季TEAM GOHを担当していたセルブスが務めていることが判明した。マシンはカーボン地の未塗装状態で、フロントウイングのフラップ部分のみ、ピンクのカラーリングが施されている。
詳細なチーム体制がどのようなものになるかは、近日行われるホンダのモータースポーツ体制発表を待つしかないようだ。なお、ドライバーは2日間ともF2に参戦経験のあるジェム・ボリュクバシが担当する。
■「いまさら彼らが走らなくてもいい」とタンデライアン村岡氏
そして、DANDELION RACINGは大津弘樹と太田格之進がテストに参加する。これについて村岡潔チーム代表は「ホンダさんから『太田選手をテストで乗せてほしい』ということで話をいただきました」と説明した。
初のスーパーフォーミュラでの走行に臨むことなる太田は「『ルーキーテストに乗せてもらえるかもしれない』というのは11月の段階で話があったんですけど、まさかダンデライアンさんでテストに参加させてもらえるとは思っていなかったです。チャンピオンも獲っているチームで、常に上位につけているチームなので、すごく光栄であるのと同時に、プレッシャーも感じています」とコメント。その表情を見ると、期待を膨らませている部分が大きいように見えた。
今季とくに予選Q1で速さを見せ、決勝でも表彰台を獲得するなど活躍を見せた牧野任祐がエントリーリストには載っていないが、この点について村岡代表に話を向けると「野尻をはじめ、牧野も大湯(都史樹)もそうだけど、これが新しいクルマだったら話は別かもしれないですけど、いまさら彼らが(このパッケージで)走らなくてもいいでしょう!」と切り返した。
「ここ数年をみていても、新人の勢いはすごいものがありますからね。この結果を受けて、いろいろとより良い方向に動いていくのではないかなと思います。だから、今回は大津くんにとっても、太田くんにとってもチャンスだと思います」と、来シーズンからエアロパッケージが変わることを踏まえ、このテストでは少しでもルーキーや若手ドライバーたちのパフォーマンスを見たいという思いもあるようだ。
ここまできて気になるのは、2022年はTCS NAKAJIMA RACINGでドライブした大湯の名前が上がってこないことだ。これについては現場でもさまざまな噂や憶測が聞かれたが、確信のある情報はまだつかめておらず、謎のままとなっている。ホンダは近日中に2023年の体制発表を行う予定であり、そこでの発表を待つしかないようだ。