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 ガソリンスタンドやディーラー、コイン洗車場などで見かける門型洗車機。洗車は今でこそ有料が当たり前のサービスだが、高度経済成長期以前の日本に洗車機はなく、洗車自体もガソリンスタンドが行う無料のサービスという扱いだった。

 日本のモータリゼーションの発展とともに、洗車サービスの有料化が進行。それにともない門型洗車機の普及が進み、さまざまな進化を遂げてきた。1963年に日本で初めて移動式の門型洗車機を販売した「ビユーテー」に洗車機の歴史について話をうかがった。

文、写真/青山義明

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日本初の門型洗車機は1963年に誕生

「未舗装路で毎日泥だらけになるクルマを楽に洗える機械を何とかして作りたい」。そんな思いからアメリカ視察の際に、洗車機メーカーを訪れ、アメリカ製の門型洗車機「カル・カーバス」を購入したのが竹内鉄工の2代目 竹内茂夫社長。竹内鉄工はその後洗車機の販売部門のビユーテー(当時はビュウティ販売株式会社)を設立、そして洗車機製造・輸出を担当する竹内鉄工はタケウチテクノに名前を変え、2社で製造と販売を分けている。

 その竹内社長は日本に到着した「カル・カーバス」をさっそく使ってみたが、期待していた洗浄効果は得られなかった。そのため、この門型をヒントに洗浄効果のあるブラシを装着した日本オリジナルの門型洗車機を開発。それが日本初の国産門型洗車機「CAR BEAUTICIAN(カービュウティシャン)」。今から60年ほど前の1963年のことであり、ここから日本の洗車機の歴史が始まった(1970年代には米国に逆に進出を果たしている)。

 この1号機ができた当時、自家用高級車はお抱え運転手が洗車を行い、トラックには洗車の概念すらなかった。また、大衆車は給油の際のサービスとして、ガソリンスタンドの店員がホースをつかって水洗いしていた程度。日本にはまだ洗車という文化がなかったため、カービュウティシャンの販売も当初は苦戦。しかし、それでも1960年代の後半のモータリゼーションの発展に押され、販売台数は増加していく。

洗車機の進化により有料サービスとしての認知を獲得

当初の洗車機には洗車機能しかなかったが、1968年に登場した「ビューテー カスタムコンビ」は別体の乾燥機を用意し、洗車機で乾燥までを行うようになった

 無料のサービスとして扱われていた洗車だったが、業界の努力もあって1970年代後半に世界初ワックス掛けができる洗車機を開発し洗車の有料化を促進し本格的な洗車ビジネスを目覚めさせた。また、竹内鉄工を追いかけるようにライバル会社も次々と出現し、門型洗車機にワックス洗車などの機能も追加され、付加価値が認められていく。1980年代には水アカ落とし、1990年代には布洗車機、さらに2000年代にはコート剤と、目まぐるしい進化を遂げていく。

 洗車の内容は進化していくものの、この門型という洗車機自体の形状は基本的に変わっていない。幅3200mmのレールを基礎に埋める必要もあって、基本的には各社がそのレールに合わせてあり、そこに載せる門型の本体(乾燥機能を別体にしたセパレートモデルもあるが)は、モデルにもよるがざっくりいうと4m×3m×3mに収まっている。

 本体には、緊急時に洗車機を止める停止ラインが4方に張られ、緊急停止ボタンの用意もある。セルフ洗車機の場合はこれ以外に、別に用意された受付操作パネルと、車両誘導のためのガイドパイプが地面に設置される。

 現在はどのメーカーも洗車機の内部は基本的に同じ。ブラシの素材は各社で違いがあるが5本のブラシ(トップブラシ、サイドブラシ×2、ロッカーブラシ×2)に乾燥ブロアーを備え、洗剤や水を吹きかける高圧ノズルが備わっている。洗剤やコート剤などの薬剤のタンクは内蔵している。オプションでホイールまわりの洗浄や、下回りを洗う下部洗浄ユニットを備えていることもある。

エコ性能が求められる最新の門型洗車機

ビユーテーが販売するセルフ向けの最新モデル、「雅(Miyabi)」。オプションで、ホイール洗浄やスイング式下部洗浄なども用意する

 各社が技術を競っている門型洗車機。70~80年代は洗車技術の進化を競う時代だったが、近年は省電力、省スペース、静音、節水・汚水の水質改善等、環境に配慮した洗車機が多数登場。エコ技術を競う時代となった。

 ガソリンスタンドや洗車場周辺への配慮のため、静音設計が特に進んでいる。洗車機の音の発生源は、主にドライヤー(ブロアー)の音とブラシの接触音だが、ブロアーについてはサイレンサーを装着したサイレントタイプをラインナップ、ブラシの接触音についても、形状や素材の改良を進めており、以前のようにバチバチと当たる音ではなくなっている。

 細かく見ていくと、センサー類やブラシ、洗剤も進化している。車形を読み込むセンサーはより細かく車両を認識するようになっており、ノズルをより近くまで持っていけることで水や薬剤の使用量を低減。また、洗車後の水滴飛ばしについてもボディ形状をしっかりトレースしながら、より車両に近づいてブローを行い、さらに外気温も検知しながら乾燥速度を最適化するなど、乾燥効率を高める仕組みも取り入れている。

 ブラシについては、スポンジ系素材が現在の主流。形状や表面加工により、多くの水を含ませ、さらにブラシの植え方も変えており、洗い上げと騒音に配慮している。ブラシの回転数や回転方向といった細かな制御を行い、装備品への配慮も欠かさない。

 そして、さらなる進化が期待できるのが薬剤である。ビユーテーでは艶だけでなく、流撥水性や高耐久性にも対応する薬剤を洗剤メーカーと共同で開発している。洗車機に通すだけで簡単にフッ素系やガラス系のコーティングができるのはもちろん、すでにコーティング加工を施した車両のメンテナンスにも使えるように、薬剤の開発も行われている。門型洗車機はまだまだ進化の途中なのである。

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投稿 洗車機って進化してるのね……60年の進化にビックリ!! 日本の洗車機パイオニアに話を聞いた自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。