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 矢野特殊自動車が「ジャパントラックショー2022」に出品した大型冷凍車「Sustaina Re:efer(サステナ・リーファー)」は、新断熱材の採用で庫内寸法を拡大すると同時に、パネル製造技術の改良でボディの長寿命化を図った意欲作。ドライバーの負担軽減を図る「技ありアイテム」も注目だ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/矢野特殊自動車、トラックマガジン「フルロード」編集部

高性能断熱材の採用で庫内寸法アップを実現

矢野特殊自動車が開発した大型冷凍車「Sustaina Re:efer」

 矢野特殊自動車が「ジャパントラックショー2022」に出品した「Sustaina Re:efer」は、同社がユーザーと共同開発した管理温度マイナス35度の大型冷凍車である。

 開発コンセプトは「人に、地球にやさしい」で、ドライバーが気持ちよく、楽に仕事ができるように、庫内寸法を広げることにチャレンジしているのが特徴。名前は持続可能を意味する「Sustainable」、再循環/再利用を意味する「Recycle」、冷凍車を意味する「Reefer」を組み合わせたものだ。

 保冷性能に大きな影響を及ぼす断熱材は、新開発の高性能断熱材「ラムダ」を採用。従来同等の保冷性能を維持しながら庫内寸法を広げるため、断熱材厚は薄型化され、庫内寸法は幅方向で30mm、高さ方向で40mm拡大し、容積では1.6立方メートルアップを実現している。

 なぜ庫内寸法を拡大するのかというと、冷凍車はボディに断熱材を使うため庫内寸法が狭いから。積み荷の中にはパレットから商品がはみ出しているものもあるが、庫内が狭いと商品同士がぶつかってしまい、最悪の場合、商品がダメになってしまう。こうした商品事故を防ぐのが狙いだ。

 同車両はアイスクリームや冷凍食品を運ぶ大型冷凍車で、これまでは保冷性能を維持するため断熱材を薄くすることができなかったが、高性能断熱材であるラムダの採用により、保冷性能を損なうことなく庫内容積アップが実現したというわけだ。

 ちなみに同車両はすでにユーザーに納車され、運行を始めているが、実際に乗務しているドライバーからは「よく冷えるし、庫内が広くて荷役作業がすごく楽になった」といった声が届いているそうだ。

パネル製造技術の見直しで高耐久性を実現

 いっぽう、断熱材の「保冷性能」と「強度」はトレードオフの関係にあるため、保冷性能を高めるということは、強度が下がるということになる。

 冷凍車は庫内の温度と外気温の差が最大で60度ぐらいになり、外側のパネルが熱されて伸び、内側のパネルが冷却されて縮まることで、ボディが膨らもうとする。このとき、断熱材の強度が不足していると、パネルと断熱材をつなぎ合わせる接着剤から断熱材が剥がれ、ボディが壊れてしまう。

 同社の冷凍車は「シャシーが古くなったら新しいシャシーに載せ替えて長く使える」というのを売りにしているが、保冷性能が高いラムダを使っても持ち前の「載せ替え可能」なボディ強度を実現するべく、今回は冷凍車のコア技術というべき「パネル製造技術」の改良にもチャレンジ。保冷性能の高さと、長寿命の両立を実現したという。
 
 なお、同社は「輸送品質と輸送効率を高める技術パートナー」を掲げており、さまざまなオプション品を開発し「技ありアイテム」として展開しているが、同車両には「ドライバーの負担軽減」に寄与するさまざまなアイテムを搭載していた。

 一例として、まず外板パネルは汚れが付きにくく、もし付いても落としやすい加工が施された「防汚アルミ」を採用。洗車の回数、時間を減らすことで、ドライバーの負担軽減を図っている。

 また、庫内には昇降式のローラーを床にクロスで配置し、パレットを軽い力で縦横に動かすことができる「クロスローラー(試作品)」を採用。「ジャパントラックショー2022」の会場で多くの現役ドライバーから注目されたクロスローラーは現在一部のユーザーがテスト中で、今後の市販化にも期待だ。

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