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 HPDホンダ・パフォーマンス・デベロップメントの副社長であるケルビン・フーは、2023年にデビューを飾る新型LMDhカー『アキュラARX-06』について、現在のところカスタマーチームへ提供する予定はないものの、その将来的な実現可能性を完全に否定はしていない。

 1月28〜29日に行われるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第1戦『ロレックス24・アット・デイトナ』(デイトナ24時間レース)でメイヤー・シャンク・レーシングとウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティ・オートスポートからデビューすることになっているアキュラARX-06。HPDとアキュラは現在、このハイブリッドシステム搭載プロトタイプのデビューシーズンにおいて、ふたつのパートナーチームのサポートに集中する構えだ。

 将来的なカスタマーカー供給の可能性について尋ねられたフーは、次のように答えた。

「これはとても複雑なクルマだから、分からない。どのようなレベルのサポートが合理的なのか、評価が必要だろう」

「ポルシェがカスタマー供給するのは知っているが、彼らは世界中にそのインフラを持っている。それが彼らのやり方だ。我々が行う次のレベルであるGT3レースとは、まったく異なるビジネスモデルなんだ」

「(カスタマー供給は)興味深いものになるかもしれないが、何が本当に意味があるのかを考えなければならないだろう」

 2023年にLMDh車両をデビューさせる4マニュファクチャラーのうち、その初年度にカスタマーカーを用意しているのはポルシェだけだ。BMWとキャデラックについても、2024年のプライベーターへの提供可能性をまだ表明していない。

 HPDのフーは、「我々の(LMDhの)ビジネスモデルは、カスタマーレースを行うことではなく、ワークスチームを作り上げることだ」と語っている。

「だが、もし本当に優れたカスタマー・チームが現れ、彼らが能力を持っていたら……ただ、これらのチームが最初の基本的なステップに到達するためには、膨大な能力が必要だ」

「これは、DPiの一段上のものだ。まず社内でそのような能力を身につけなければならないし、その後にその意味するところを議論することになるだろう」

共通ハイブリッドシステムを構成する、ウイリアムズ・アドバンスト・エンジニアリング製のバッテリー
共通ハイブリッドシステムを構成する、ウイリアムズ・アドバンスト・エンジニアリング製のバッテリー

 一方、フーは、LMDhのカスタマーサポートがどの程度必要なのか、疑問を持っている。

「最近のカスタマー・レーシングはどうなっているのだろう?」とフー。

「私にはよく分からない。ポルシェのカスタマーチームは、どのようなレベルのサポートを受けることになるのだろうか?」

「我々はメイヤー・シャンクとウェイン・テイラーに完全に組み込まれているし、それが勝つための最良の方法だと考えている」

「カスタマーだって勝ちたいと思っていることは分かっている。だが、それをスムーズに機能させるためには多くの調整が必要だ」

「いつの日か、クルマのことを理解したら、ソフトウェアパッケージを手に入れ、それ(カスタマー供給の意味)を理解できるようになるかもしれない。 しかし、それが2023年の話ではないことは明らかだ」

■「ホンダから与えられた予算内で収めるのがHPDの仕事」

 フーによれば、LMDhのコストは当初想定していたよりも「間違いなく」高くなったという。彼は、このクルマが従来のDPiプロトタイプとは異なるレベルにあることを強調する。

「その多くは、サプライチェーンの問題だ」とフー。

「これもまた、当初考えられていたよりずっと複雑なんだ」

「エンジンにしても、オレカのシャシーにしても、ハイブリッドシステムにしても、当初予想されていたよりも多くのテストやトラブルがあり、修復の必要が生じている」

「それらはおそらく、全体的なコストを増加させた。 開発費が予想以上にかかったんだ。 この先、ランニングコストはどうなるだろうね」

「DPiに比べると、1台あたりのランニングコストはかなり高くなる。より重いので、消耗品も多くなる。パワーは(少し)上がる」

「マシンはかなり高価だ。専門の電気エンジニアやその他もろもろが必要になる」

「確かに高くはなったが、われわれは努力している。ホンダから与えられた予算内で収めるのがHPDの仕事だ。5セントたりとも無駄にしないよ!」

2022年12月、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイのテストで走行するウェイン・テイラー・レーシングのアキュラARX-06
2022年12月、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイのテストで走行するウェイン・テイラー・レーシングのアキュラARX-06