<ドラマ『星降る夜に』第3話レビュー 文:横川良明>
えらいものを見てしまった…。
何だこのピュアな2人は。
星降る夜の出会いから少しずつ距離を近づけていった雪宮鈴(吉高由里子)と柊一星(北村匠海)。その恋模様がいよいよ本格的に動きはじめた。
2人の空気感があまりにもキュートすぎて、もうラストのあたりは心が沸きっぱなし。今こんなに心が沸くのはこの2人か三笘のゴールくらいです。
一体何がそんなにいいのか。『星降る夜に』第3話の名場面とともに激しく語りたい。
◆あのおでこキスに、心のホイットニー・ヒューストンが歌い出した
とにかく圧倒的だったのが、北村匠海のワンコ感だ。
鈴にキスをしようとして「ステイ」と待ったをかけられるところから始まって、北村匠海が持てる可愛さを総動員して、視聴者の心を撃ち落としてくる。
返ってこない返事にむくれているところも、ビデオ通話をしたら鈴が風呂上がりでテンパるところも、佐々木深夜(ディーン・フジオカ)に嫉妬を丸出しにするところも、愛犬みが強すぎて、今すぐ北村匠海にビーフジャーキーを差し入れしたい。
2人で朝焼けの海岸沿いを歩くところとか、北村匠海に尻尾がついてる気がしたんだけど、あれは僕の目の錯覚…?
しかも、佐藤春(千葉雄大)のアドバイスによって引くことを覚えたせいで、一星の恋愛偏差値が40くらい上がってる。進研ゼミでもこんなに上がらないってくらい上がってる。
鈴のスプーンを強引にたぐり寄せてくわえるまでは、通常運転。そこからキスするかと思いきや、そっけなく突き放すところとか、何を考えているのかわからなくて余計にドキドキする。
今まではただ攻めてくるだけだったから手に負えたけど、引くことをマスターした一星は無双すぎる。さざ波どころか、全人類の心をさらうビッグウェーブ。春は、とんでもないガチ恋モンスターを育ててしまった…。
そして、引くことを覚えたことにより、もともと持っている天真爛漫な人なつっこさも威力倍増。
昔のことを思い出して少しナイーブになっている鈴を元気づけようと、よくわからないダンスを踊りはじめる一星の破壊力は、スカウターなら一瞬で爆発するレベル。昔よくあった、音に反応して踊り出すおもちゃみたいで、いくら出せば柊一星を養えるか本気で問い合わせしたい。35年ローンでなんとかなりません…?
しかも恐ろしいことに可愛いのは北村匠海だけではないのだ。
「鈴が本当に俺を好きだと思うまでキスはステイします」とお預けの仕返しをする一星。でも、上には上がいた。「しょうがないな」と小さく笑ったあと、真剣な目で一星を見つめ、キャップをとり、鈴がおでこにキスをする。
エンダァァァァァァァァァァァァァ!!!!
もうね、久しぶりにドラマを観ながら息が止まった。心のホイットニー・ヒューストンがめちゃくちゃロングトーンを響かせてた。
これを尊いと言わずして何を尊いと言う。キスを終えて、少し恥ずかしそうにうつむく吉高由里子が可愛すぎて、そのあと手をつないで踊るところまで含めて、延々ループ再生してしまった。人類が一瞬で幸せになれる30秒だわ。
◆一星のめげない強さが、鈴の光になった
しかも単にときめきをくれるだけじゃなく、ヒューマンストーリーとしてのメッセージ性もますます強度を増している。
遺品整理士として、時におせっかいと言われながらも、亡くなった人の想いを生きている人に届けるために全力を尽くす一星。鈴も一星の「余計なお世話」に心救われたひとりだった。
だが、すべての人にそれが通用するとも限らない。
遺品の中から渡せなかった婚約指輪を見つけた一星は、残された手紙を頼りに、宛名に記された「南」という女性を探す。3年越しの本当の気持ち。きっと「南」も喜んでくれるに違いない。
そんな淡い幻想は呆気なく砕かれる。やっとの思いで辿り着いた石田南(川津明日香)は受け取りを拒否。しつこく食い下がる一星を突き飛ばして去ってしまう。いまは夫も子どももいる南にとって、一星の想いは文字通りの「余計なお世話」でしかなかった。
でも、一星はへこたれない。コーヒーをぶっかけられても、ビンタをされても、自分の信念を貫き通す。そのまっすぐさが、鈴には眩しかった。
緊急搬送された妊婦を死なせ、医療訴訟にまで至った鈴。どんなに裁判で過失がなかったと認められても、「人殺し」という遺族の声が耳からこびりついて離れることはなかった。
きっと鈴は何度も頭の中で「あの日」を繰り返したのだろう。どうすれば患者を助けることができたのか。あのとき、受け入れなければ未来は変わったのだろうか。
そのあと、どれだけ多くの妊婦とその家族に感謝をされても、「あの日」を忘れることなど鈴にはできなかった。
だからこそ、厳しい現実に足を挫かれても、立ち上がり、また前へと進んでいく一星が救いだった。めげない強さが、光だった。
失敗は誰にでもある。ただの一度も間違いを犯さない人生なんてない。どんなに一生懸命頑張ったとしても報われないことの方がよっぽど多いかもしれない。
でも、前を向いて歩いていくことをあきらめなければ、自分が自分を裏切ることさえしなければ、いつかきっと誰かに想いは届く。朝はまた必ずやってくる。
そう私たちにも言ってくれているようで、海辺に立つ鈴と一緒に、朝の光を浴びているような気持ちになった。水平線から覗く太陽みたいに、体の奥底の方から新しいパワーが生まれてくるようだった。
『星降る夜に』は傷を抱えた人々がたくさん登場するけど、重きを置いているのは、彼/彼女らの過去ではなく、そんな過去を持った人たちがどう今を生き未来へ踏み出していくか。
希望と再生の物語だからこそ、こんなにも心洗われるのだろう。こんなにも胸が昂るのだろう。
ヒューマンストーリーとしての深い味わいに瞼を熱くしつつ、吉高由里子&北村匠海の愛らしさにのたうち回りながらハイボールをクイっとやる。これぞ火曜の夜の正しい過ごし方。
さらに、おそらく鈴の過去の傷に関係しているのであろう人物の影も忍び寄っていて、この先の展開が読めないところがますます面白い。
果たしてシークレットキャストになっているその人物は誰なのか。
この幸福感は嵐の前ぶれのような気がして仕方ないけど、どうか鈴と一星にはこのまま幸せでいてほしいと願いつつ、次回の放送を、一星のおばあちゃん(五十嵐由美子)と一緒に小躍りしながら待っています!(文:横川良明)