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 2023年は世界三大レースのひとつであるル・マン24時間レースの100周年大会が開催されるメモリアルイヤーだ。同時に耐久の雄ポルシェ、かつてル・マンを席巻したフェラーリ、北米選手権からグローバルシリーズに進出するキャデラックなどの自動車メーカーが、ル・マン/WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに新型マシンを投入することから、プロトタイプレースにおける“黄金時代”の再来を予感させる年でもある。

 また、アメリカを中心に開催されているIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権では、WEC/ル・マンにも出場可能なLMDhという新しい車両規則が導入される。2022年のIMSA最高峰クラスには、アキュラとキャデラックが参加していたが、新シーズンはここにポルシェとBMWが加わり一層激しい戦いが繰り広げられることになる。本稿はそんな2023年のプロトタイプカー事情をまとめたもの。今月28~29日に開催されるIMSA第1戦デイトナ24時間レースや、3月にセブリングで行われるWEC開幕戦を迎えるにあたって事前情報の整理に役立ててほしい。

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■LMDhがついに発進! LMHとの対決も実現

 2021年からWECのハイパーカークラスで採用されているル・マン・ハイパーカー(LMH)規定の導入から遅れること2年、サプライチェーンの遅延問題などもあり当初の予定から1年遅れてIMSAの新プラットフォーム、LMDhがデビューする。

 北米のウェザーテック・スポーツカー選手権を運営するIMSAが、ACOフランス西部自動車クラブと共同で作り上げた同規定は2017年から2021年までの間、同シリーズの最高峰カテゴリーで採用されてきたDPi規定に代わるものだ。LMP2ベースのクルマにブランドごととオリジナリティを出すため、自動車メーカーが規定の範囲内でカウルデザインを変更できる点や、自社製エンジンなどに載せ替えることが可能な点が旧規定から引き継がれた一方、LMDhはモーターアシストを備えるハイブリッドカーとなったことがDPiとの大きな違いとなっている。

 また、DPi車両がIMSA専用マシンだったのに対し、LMDh車両はル・マン24時間の運営団体であるACOとIMSAのパートナーシップの下で誕生したプラットフォームであることからル・マンへの出場が可能に。同時にWECハイパーカークラスに参戦することも可能になった。反対に、すでにWECの最高峰クラスで走っているLMHカーについても、メーカーがIMSAの商業条件に合意すれば北米シリーズに参加することができる。

■WEC世界耐久選手権/IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権
プロトタイプカテゴリー参戦・参入予定メーカー

参戦開始 メーカー シリーズ プラットフォーム マシン
2021 トヨタ WEC LMH トヨタGR010ハイブリッド
2021 グリッケンハウス WEC LMH(ノンハイブリッド) グリッケンハウス007 LMH
2022 プジョー WEC LMH プジョー9X8
2023 フェラーリ WEC LMH フェラーリ499P
2023 ポルシェ IMSA/WEC LMDh ポルシェ963
2023 キャデラック IMSA/WEC LMDh キャデラックV-LMDh
2023 ヴァンウォール WEC LMH(ノンハイブリッド) ヴァンウォール・バンダーベルLMH
2023 イソッタ・フラスキーニ WEC LMH  ?
2023 アキュラ IMSA LMDh アキュラARX-06
2023 BMW IMSA/WEC(2024) LMDh BMW MハイブリッドV8
2024 ランボルギーニ IMSA/WEC LMDh  ?
2024 アルピーヌ WEC LMDh  ?

■初年度からカスタマーカーも登場

 トヨタGR010ハイブリッドやプジョー9X8などのLMHカーがパワートレインを含めてクルマを一から設計・開発するの対し、LMDhカーはオレカ、ダラーラ、リジェ、マルチマチックの計4社がそれぞれ製造する次世代LMP2カーをベースに新しいプロトタイプカーを製作する。このため後者は開発コストを抑えることが可能だ。また、パワートレインの電動部分も後輪を駆動させる共通ハイブリッドシステムを使用するため、この点でも主に自社開発のパワートレインを搭載するLMHカーと比べてリソースを節約できる。

 LMDhはこうした製造コストの面と、共通ハイブリッドを採用することによる運用面の敷居の低さで優れているのが特長だ。自動車メーカーにとっては一定レベル以上のクルマを安価で製造することができるうえに、伝統のル・マンへの挑戦、巨大市場アメリカでの露出拡大が望めるなどいいことずくめ。これを裏付けるように、2023年に登場するポルシェとBMWに続き、2024年に向けてランボルギーニとアルピーヌがLMDhプログラムを計画するなどメーカーの参入が相次いでいる。

 なお、ポルシェに関してはペンスキーが走らせるワークスカーに加えて、参入初年度からカスタマーカーを展開する。組み立てに係るサプライチェーンの問題からシーズン途中からの導入となる予定だが、3つのカスタマーチームに計4台のクルマを供給するとしている。

■LMHでフェラーリ・プロトタイプが登場。半世紀ぶりにル・マン復帰へ

 一方のLMHでは昨季2022年途中からの参戦となったプジョーに続き、フェラーリがWECのトップカテゴリーを戦う新しいブランドとして参加することが決定。既報のとおり、新型ハイパーカーのフェラーリ499Pが2023年のWEC最高峰カテゴリーに登場する。

 また、同じくイタリアからイソッタ・フラスキーニがハイブリッドシステムを搭載した新開発のLMHカーでル・マン出場を目指していることが伝えられているほか、バイコレス・レーシング改めヴァンウォールもシリーズ復帰を計画。すでにノンハイブリッド仕様のヴァンウォール・バンダーベルLMHでテストを重ねている。

2023年のWECに投入されるフェラーリ499P
2023年のWECに投入されるフェラーリ499P

“リヤウイングレス”という独創的なキャラクターのプジョー9X8を生み出したLMH規則は、LMDhに比べて車両設計時の自由度が高く、よりメーカーの色を出すことができる。しかし、LMP1-H時代のような過度な開発競争を防止する観点からBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)を前提としたルールとなっており、パワートレインでいえばフロントに置かれるMGUの出力は最大200kWを上限とし最高出力はモーターとエンジンで合わせて500kW(約680PS)に制限。BoPによって車種ごとに加速プロファイルが設定される。また、空力レベルも一定の枠内に納める必要がある。

 LMDhもモーターとエンジンの合計出力は同じく500kWとなっているが、力行は後輪で50kWのみとLMHに比べてアシスト量が少ない。エアロダイナミクスはL/D値が4.0になるようしなければならない。車両重量はどちらのハイパーカーも1030kgが下限だ。これらの数値の共通化はACOとIMSAによって実現された両規定のコンバージェンス(収束、収斂の意)によるもの。WECハイパーカークラスとIMSAの新しい最高峰クラスであるGTPクラスでは、各シリーズごとにBoPによって車両間のパフォーマンス調整が行われる。

■各メーカーの参戦体制&ドライバーを総まとめ

 ここからはWECあるいはウェザーテック・スポーツカー選手権、もしくは両方のシリーズに参戦するメーカーごとに、現時点で判明している2023年以降の参戦体制や計画などを紹介する。

●トヨタ(WEC/トヨタGR010ハイブリッド)

 まずはハイパーカー元年となった2021年にWECハイパーカークラスの初代チャンピオンとなり、2022年もシリーズとル・マンの両方で連覇を果たしたTOYOTA GAZOO Racingだ。引き続き小林可夢偉が7号車のドライバーとチーム代表を兼務する日本チームは、新シーズンも7号車と8号車計2台のトヨタGR010ハイブリッドをWECで走らせる。

 ドライバーラインアップは既報のとおり、7号車がマイク・コンウェイ/可夢偉/ホセ-マリア・ロペス、ドライバーズタイトルを獲得した8号車がセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮と両車揃って継続起用となった。

6名のドライバーの継続起用を発表したTOYOTA GAZOO Racing
6名のドライバーの継続起用を発表したTOYOTA GAZOO Racing

●グリッケンハウス(WEC/グリッケンハウス007 LMH)

 トヨタと同じく2021年からWECでハイパーカーを走らせているグリッケンハウス・レーシングは、2022年の終盤2戦(富士、バーレーン)を欠場。第4戦モンツァを最後に姿を見せていない。

 しかしジム・グリッケンハウス率いるアメリカのチームは、引き続きハイブリッドシステムを搭載していないグリッケンハウス007 LMHの1台体制で世界選手権に参加する予定だ。なお、ドライバーラインアップは現在のところ明らかにされていない。

グリッケンハウス・レーシングのグリッケンハウス007 LMH
グリッケンハウス・レーシングのグリッケンハウス007 LMH

●プジョー(WEC/プジョー9X8)

 世界選手権を戦うレーシングカーとしては非常に珍しい、リヤウイングを持たない独創的なデザインのマシンで2022年シーズンの途中からWECに参戦しているプジョー・トタルエナジーズ。第4戦モンツァで2台のプジョー9X8をデビューさせたフランスチームは、モンツァを含めその後の第5戦富士、第6戦バーレーンの各レースでテクニカル・トラブルに見舞われた。2022年のクリスマス前、南仏のポール・リカールで実施された24時間耐久テストではこれらの問題点を修正したという。

 彼らは2023年にふたたびWECで2台のマシンを走らせる。ドライバーラインアップは昨季最終戦から変わらず93号車がポール・ディ・レスタ/ミケル・イェンセン/ジャン-エリック・ベルニュ組。姉妹車94号車はロイック・デュバル/グスタボ・メネゼス/ニコ・ミューラーというトリオだ。

2022年第4戦モンツァでWECにデビューしたプジョー9X8
2022年第4戦モンツァでWECにデビューしたプジョー9X8

●フェラーリ(WEC/フェラーリ499P)

 リヤウイングレスのプジョー9X8とは対照的に上下2段構えのリヤウイングを持つフェラーリ499Pは、2023年シーズンに向けてもっとも注目を浴びている1台だ。その名にある数字は、同じく2023年にデビューするフェラーリ296 GT3のエンジンとアーキテクチャを共有するV6ツインターボエンジン(2994cc)の1気筒あたりの排気量に由来。末尾の“P”はプロトタイプを意味している。

 WECに参戦するチームの名称とドライバーラインアップは現時点で未発表だ。車両ゼッケンは50と51が選択されており、前者はワークス体制で最後にル・マンを戦った1973年から数えて50年となるのを記念したもの。後者は長年LMGTEプロクラスで戦ってきたAFコルセのクルマに付けられていた番号だ。

 フェラーリ499Pは11月にスペインで初の耐久テストを実施したが、3月のデビューまでに2度目の長距離走行を計画されている。

フェラーリ499Pのリヤウイングは2段構造になっており、下段はライトが埋め込まれている
フェラーリ499Pのリヤウイングは2段構造になっており、下段はライトが埋め込まれている

●イソッタ・フラスキーニ(WEC/名称不明)

 イタリア、ミラノに拠点を置くイソッタ・フラスキーニは2022年10月21日、突如ハイパーカーのイメージ画像を発表した。1900年の創業以来、初期のレーシングカーや高級車の製造を手掛けた同社は2023年にLMHカーでのWEC参戦を予定している。

 現在は船舶用や産業用のエンジンや発電機を製造していイソッタ・フラスキーニによると、ハイブリッドシステムと3リットルV6ツインターボエンジンを搭載した新型マシンは2月に公開され、計画ではル・マンの前哨戦にあたる第3戦スパ・フランコルシャンからシリーズに参加するという。この名称不明のマシンは、イギリスのウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング社のエアロダイナミクス設備を利用して開発され、イタリアのミケロット社で製造される予定だ。

 12月30日にはイギリスのLMP2チーム、ベクター・スポーツとパートナーシップ契約を結んだことがアナウンスされた。

イソッタ・フラスキーニのLMHイメージ(2022年10月21日公開)
イソッタ・フラスキーニのLMHイメージ(2022年10月21日公開)

●ヴァンウォール(WEC/ヴァンウォール・バンダーベルLMH)

 2022年にバイコレス・レーシングからチーム名を変更しWEC参戦を目指したものの、「選考基準を満たしていなかった」としてエントリー申請が却下されたヴァンウォールが、ふたたび世界選手権に戻ろうとしている。

 コリン・コレスのチームは、少なくとも1台のヴァンウォール・バンダーベルLMHをハイパーカークラスに送り込みたい考えであり、ギブソン製V8エンジンを搭載するノンハイブリッド車のホモロゲーション取得に向けて動いている。その中で行われたテストのひとつでは元F1ワールドチャンピオンのジャック・ビルヌーブや、元フォーミュラ・ニッポン王者でスーパーGT GT300クラスのチャンピオンでもあるジョアオ・パオロ・デ・オリベイラがステアリングを握ったことが確認されている。

ヴァンウォール・バンダーベルLMH
ヴァンウォール・バンダーベルLMH

■2023年WECハイパーカークラス参戦状況(予定)

メーカー チーム マシン ドライバーラインアップ 台数
トヨタ トヨタ・ガズー・レーシング トヨタGR010ハイブリッド ・M.コンウェイ/小林可夢偉/J-M.ロペス
・S.ブエミ/B.ハートレー/平川亮
2
グリッケンハウス グリッケンハウス・レーシング グリッケンハウス007 LMH  ? 1
プジョー プジョー・トタルエナジーズ プジョー9X8 ・P.ディ・レスタ/M.イェンセン/J-E.ベルニュ
・L.デュバル/G.メネゼス/N.ミューラー
2
フェラーリ  ? フェラーリ499P  ? 2
ポルシェ ポルシェ・ペンスキー・
モータースポーツ
ポルシェ963 ・D.キャメロン/M.クリステンセン/F.マコウィッキ
・K.エストーレ/A.ロッテラー/L.ファントール
2
ポルシェ プロトン・コンペティション ポルシェ963  ? 1
ポルシェ ハーツ・チーム・JOTA ポルシェ963 ・Y.イェ 1
キャデラック キャデラック・レーシング キャデラックV-LMDh ・E.バンバー/A.リン/R.ウエストブルック 1
ヴァンウォール  ? ヴァンウォール・バンダーベルLMH  ? 1 or 2
イソッタ・フラスキーニ  ?  ?  ? 1

■ポルシェとキャデラックがLMDhでWECにフル参戦

●ポルシェ(WEC・IMSA/ポルシェ963)

 マルチマチックベースのLMDhカーでスポーツカーレースに復帰する“耐久の雄”は初年度から本気モードだ。ワークスチームのポルシェ・ペンスキー・モータースポーツはWECとIMSAでそれぞれ2台体制を敷き、経験豊富なドライバーラインアップを構築した。加えて両シリーズでカスタマーカーを展開。WECではプロトン・コンペティションとハーツ・チーム・JOTAに、北米ではJDCミラー・モータースポーツとプロトンに顧客向けのポルシェ963を提供する。

 ワークスチームのラインアップは、WECの5号車がデイン・キャメロン/ミカエル・クリステンセン/フレデリック・マコウィッキ。僚友6号車がケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントールという布陣だ。

 1月のデイトナ24時間で開幕するIMSAでは、ニック・タンディとマシュー・ジャミネのペアにキャメロンが耐久レースでの助っ人として加わる。一方、マット・キャンベルとフェリペ・ナッセのコンビにはクリステンセンが追加される予定となっている。

ポルシェ963のカスタマカーはシーズン途中からの登場となる見込みだ
ポルシェ963のカスタマカーはシーズン途中からの登場となる見込みだ

●キャデラック(WEC・IMSA/キャデラックV-LMDh)

 ポルシェと同じく2023年デビューのLMDhカーでWECとウェザーテック・スポーツカー選手権の両シリーズに挑むキャデラック・レーシングは、チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)によって運営される。ただし、チップ・ガナッシが各シリーズに送り込むのは各1台だ。

 なお、ダラーラベースのキャデラックV-LMDhは、IMSAでは2台(デイトナでは3台)が走ることになっているが、その1台はウェーレン・エンジニアリング・レーシングによってオペレーションされる。ドライバーはピポ・デラーニ/アレクサンダー・シムズ組で、耐久レースではジャック・エイトケンがこれに加わる。

 CGR側はアール・バンバー/アレックス・リン/リチャード・ウエストブルックがWEC組。IMSA組はセバスチャン・ブルデー/ランガー・バン・デル・リンデが継続起用され、スコット・ディクソンがロングディスタンスレースで助っ人を務める。

WECに1台、IMSAでは2台が走るキャデラックV-LMDh
WECに1台、IMSAでは2台が走るキャデラックV-LMDh

●アキュラ(IMSA/アキュラARX-06)

 2022年ウェザーテック・スポーツカー選手権のチャンピオンメーカーとなったアキュラは、DPiマシンARX-05の後継機となるARX-06をオレカとともに開発。年末にアンドレッティ・オートスポーツとの提携を発表したウェイン・テイラー・レーシング(WTR)と、チャンピオンチームのメイヤー・シャンク・レーシング(MSR)に提供しタイトル防衛に挑む。

 両チームともすでにドライバーラインアップを固めており、コニカミノルタ・アキュラARX-06のバナーの下でIMSA GTP初代王者を目指すWTRは、リッキー・テイラーとフィリペ・アルバカーキのペアを継続。第3ドライバーにはルイ・デレトラズ、デイトナでの第4ドライバーにブレンドン・ハートレーを起用する。

 一方、デイトナとシリーズのダブル連覇を狙うMSRはトム・ブロンクビストのチームメイトにコリン・ブラウンを新たに迎えた。助っ人ドライバーは昨季2022年に引き続きエリオ・カストロネベスとシモン・パジェノーが務める予定だ。

チャンピオンチーム、メイヤー・シャンク・レーシングが走らせるアキュラARX-06
チャンピオンチーム、メイヤー・シャンク・レーシングが走らせるアキュラARX-06

●BMW(IMSA/BMW MハイブリッドV8)

 2001年以来のプロトタイプカーレース復帰となるBMWは、キャデラックと同じくダラーラLMP2をベースシャシーに選択。長らく協力関係にあるレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの下、BMW MチームRLLとして2台LMDhカーをIMSA GTPクラスで走らせる。

 旧DTMドイツ・ツーリングカー選手権用の4リッターV8エンジン『P66/1』をターボ化した『P66/3』が搭載されたBMW MハイブリッドV8をドライブするのは、コナー・デ・フィリッピ/ニック・イェロリー組と、フィリップ・エング/アウグスト・ファーフス組にコルトン・ハータを加えたトリオ、そして助っ人としてアナウンスされているシェルドン・ファン・デル・リンデとマルコ・ウィットマンの計7名だ。

 なおBMWは、アウディから同陣営に鞍替えしたチームWRTとともに、2024年シーズンよりWECハイパーカークラスにもBMW MハイブリッドV8で参戦を開始する。

BMW MチームRLLが2体制で走らせるBMW MハイブリッドV8
BMW MチームRLLが2体制で走らせるBMW MハイブリッドV8

●アルピーヌ(WEC/名称不明)

 シグナテックが運営するアルピーヌチームは過去2シーズン、特例を受けてオレカ製のノンハイブリッドLMP1マシンでWECハイパークラスを戦ってきた。2023年はこの特例の延長が認められずLMP2クラスに戦いの舞台を移すが、翌24年はLMDhでのトップカテゴリー復帰を果たす予定だ。

 提携するシャシーコンストラクターはもちろんオレカ。現在までのところ車両に関する情報は乏しく、2022年6月からダイノテストが行われていることが伝えられてものの、エンジンのタイプや排気量については明らかになっていない。一方、ハイブリッドシステムの運用面や、エンジンそのものにF1由来のノウハウが入っていることは確認されている。

●ランボルギーニ(WEC・IMSA/名称不明)

 ランボルギーニも2024年からLMDhで耐久レースを戦うブランドのひとつだ。イタリアのスーパーカーメーカーはフランスのリジェとパートナーシップを結び、バンク角90度のV8ツインターボエンジンを搭載した車両を製作する。

 この車両はWECに投入されると同時に、デイトナ24時間やセブリング12時間などIMSAの耐久イベントからなる“ミシュラン・エンデュランスカップ”に登場する予定だ。運営は今オフにフェラーリから提携メーカーをスイッチしたアイアン・リンクスが行う。車両開発には2022年12月にランボルギーニ・ワークスドライバーとなった元F1ドライバーのロマン・グロージャンも参画することになっている。

ランボルギーニ・ワークスドライバーとなったロマン・グロージャン
ランボルギーニ・ワークスドライバーとなったロマン・グロージャン

■2023年IMSA GTPクラス参戦状況(予定)

メーカー チーム マシン ドライバーラインアップ 台数
アキュラ コニカミノルタ・アキュラARX-06 アキュラARX-06 ・R.テイラー/F.アルバカーキ
(+L.デレトラズ/B.ハートレー)
1
アキュラ メイヤー・シャンク・レーシングw/
カーブ・アガジャニアン
アキュラARX-06 ・T.ブロンクビスト/C.ブラウン
(+E.カストロネベス/S.パジェノー)
1
キャデラック キャデラック・レーシング キャデラックV-LMDh ・S.ブルデー/R.バン・デル・ザンデ(+S.ディクソン) 1
キャデラック ウェーレン・エンジニアリング・レーシング・
キャデラックV-LMDh
キャデラックV-LMDh ・L-F.デラーニ/A.シムズ(+J.エイトケン) 1
ポルシェ ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ ポルシェ963 ・N.タンディ/M.ジャミネ(+D.キャメロン)
・M.キャンベル/F.ナッセ(+M.クリステンセン)
2
ポルシェ JDCミラー・モータースポーツ ポルシェ963  ? 1
ポルシェ プロトン・コンペティション ポルシェ963  ? 1
BMW BMW MチームRLL BMW MハイブリッドV8 ・C.デ・フィリッピ/N.イェロリー
・F.エング/A.ファーフス(+C.ハータ)
追加ドライバー:S.ファン・デル・リンデ/M.ウィットマン
2

※ ()内のドライバーは第3、第4ドライバー