先代型WRX S4(2015年式のアプライドB型)に乗り続けているベストカーWeb編集部員が本気で買い換えを考えているのが現行型WRX S4。実際に乗って、使って改めて評価してみた。
文、写真/ベストカーWeb編集部・渡邊龍生、撮影協力/河口湖ステラシアター
■国沢氏からは「新型に買い換えるしかない!」と言われたが……
現行型WRX S4がフルモデルチェンジを受け、登場したのが2021年11月25日。事前にプロトタイプ試乗会が行われた千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイにも行ったのだが、ほぼ撮影用にちょい乗りしかできていない状況だった。
個人的にはその際に乗った現行型のシャシーの剛性感は半端じゃなく、「おお、こりゃかなり本気でスバルが仕上げてきたな」と思わされたものだった。テスターとして参加した自動車評論家の国沢光宏氏の助手席から動画を撮影したのだが、同じく先代WRX S4を所有する国沢氏が「こいつは楽しい! 渡邊君、これはもう新型に買い換えるしかないぞ!」と、ツイスティな袖ケ浦で4輪ドリフトを心底楽しそうに堪能していたのをよく覚えている。
改めて自分が乗る先代型と現行型のディメンションなどを比較すると、まずはボディサイズ。全長4595×全幅1795×全高1475mm、ホイールベース2650mmの先代型に対し、現行型は全長4670×全幅1825×全高1465mm、ホイールベース2675mmと少しだけ大きくなっている。ただ、乗った感じではほぼ先代型との大きな差はないように思った。
続いて大きく変わったのがパワートレーン。先代型は直噴2L水平対向DOHCターボのFA20型を搭載し、最高出力300ps/5600rpm、最大トルク40.8kgm/2000~4800rpmというスペックでいわゆる「パワー型」のターボエンジンだ。5代目レガシィツーリングワゴン/B4のビッグマイチェン時に初搭載されたエンジンで、当時、撮影でこのターボエンジンを搭載したB4に自分が試乗した際に少々ピーキーながらその速さは強烈に印象に残っていた。
対する現行型は直噴2.4L水平対向DOHCターボのFA24型を搭載。排気量をアップしたユニットに変更し、そのスペックは最高出力275ps/5600rpm、最大トルク38.2kgm/2000~4800rpmとなっている。この2.4Lターボ、そもそもの出自が北米で販売されている3列シートSUVのアセント用に開発されたトルク型のエンジンで、従来までの水平対向3.6LDOHCエンジンのリプレイスとして用意されたものだ。
■ほぼ弱点がないのが現行型WRX S4だった……
今回、試乗したのは現行型モデルの最上級グレード、STI Sport R EXで車両本体価格は482万9000円。自分が今乗っている先代型2.0GT-Sアイサイト(アプライドB型当時はトップグレードだった)は356万4000円だったことを思えば、かなり高くなっていることがわかる。
さて、まずはSGP(スバルグローバルプラットフォーム)+フルインナーフレーム構造を採用したボディだが、一般道で走り出した瞬間から先代型とはまったく違う剛性感が感じられた。2ピニオン式の電動パワーステアリングの感触も上々で、ハンドリングは文句なしの切れ味。
都内から首都高速に入り、中央道へ。ここで威力を発揮するのがアダプティブクルコンだ。先代型にもついているのだが、残念ながら最高速度設定が114km/hまでで、正直この速度域だと高速で追い越し車線を走り続けるのにはちょい厳しかった。
それが先代のアプライドD型から最高速度設定が135km/hまでとなり、もちろん現行型も同じ速度域となり、さらにいろいろな部分がブラッシュアップされている。このあたりのユーザーインターフェースはさすがの完成度。ううむ、欲しくなってきたぞ。
レヴォーグでおなじみの「走りの確変」も同様で、トランスミッションのスバルパフォーマンストランスミッションは先代のスポーツリニアトロニックを改良したものだが、CVTながらレスポンスがいいのは同様で、ドライブモードセレクト時のレスポンスはCVTじゃないような感覚。食わず嫌いな人は一度試してみる価値があると思う。
そして内装のクォリティ。基本的にはステーションワゴンのレヴォーグに準ずるデザインと質感になり、多少プラスチックを採用した部分は先代型より増えたものの、このクラス(C~Dセグメントの中間)のセダンとしてはかなり頑張っているほうだと思う。サイドが張り出したレカロシートのホールド性やサポート性、座り心地も抜かりなし。
ちなみに後部席の広さは現行型がやや広くなった印象。が、トランクスペースはVDA法で初代が460Lだったのに対し、現行型は422Lに減っている。ユーティリティ的にはさほど差はないのかもしれないけど、やや気になった点ではある。
中央道から河口湖方面まで足を伸ばし、ワインディングを走ってみたが、ここでもガッシリとした剛性感はさすがで、スタッドレスタイヤを履いていたこともあり、雪の残る山道でのブラインドコーナーも危なげなくクリアしてくれる。弱点がないな、ほとんど……。
唯一、あえて注文を付けたい点があるとすれば、それは「ここ一番!」という際にアクセルを踏み込んだ時のエンジンパワー。常用域でトルクフルなFA24ターボだけど、なんだか無理くり上の回転を抑えつけたような感じになっていて、このパンチ力については初代モデルが上回っているように感じた。まあ、もとがトルク型エンジンだからキレのあるパワー感の演出は苦手なのかもしれないんだけど。
で、結論。現行型WRX S4は改めて国産セダンのなかでは稀有な存在であることがクローズアップされた試乗で、買い換える価値はやはり充分にあると思わされた。ただ、愛車は車検を通したばかりなので2年後、かな(笑)。
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