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まとめ

  • 「傷は消毒」というのは古い常識で、傷口を痛めて逆効果になるおそれがあります。
  • 新常識は『湿潤療法』で、傷は清潔&湿った環境を保って治します。
  • ワセリンを塗ったり、ハイドロコロイド素材ドレッシング剤を貼ったりすると良いでしょう。

「傷は早めに消毒しましょう」などの宣伝をよく見かけます。読者の皆さまにも、消毒薬を傷薬として日常的にご利用されている方がいらっしゃるかもしれませんね。では、傷は本当に消毒したほうが良いのでしょうか?

今回の記事では、傷を消毒することのメリットやデメリットについて皮膚科専門医が解説していきます。

この記事を書いた医師

やさひふ

Yasahifu

医師 / 皮膚科専門医 / 医学博士

Lumedia 編集長。怪しい医療情報に惑わされる患者さんを多く見た経験から Lumedia の立ち上げを決意。
皆さんのすこやかなお肌を守るため、Twitter で科学的根拠に基づいたスキンケア情報発信中。

傷の消毒は一般的にNG

結論から述べると、一般的な傷を消毒することは推奨されません (参考文献 1) !

浅い傷には消毒は不要ですし、深い傷でも感染していなければ消毒しなくて大丈夫です。

確かに以前は「傷は消毒して乾燥させて治すものだ」という考えが常識とされている時代もありました。「消毒してから滅菌ガーゼで保護する」というやり方ですね。しかし、近年では「傷が乾燥するとかえって治りが遅くなる」と考えられており、このような手法は用いられなくなってきています。

また、消毒自体が傷に悪影響を与える可能性もあります。傷を治すためにせっかく集まってきた良い細胞たちを、消毒薬が傷つけてしまうリスクがあるのです。それでは逆効果ですよね。

傷口からの感染を防ぐには?

「でも傷口ってばい菌などがいて汚いでしょ?」と心配な方もいらっしゃるかもしれません。

実は、感染対策として推奨されているのは「消毒による除菌」ではなく「きれいに洗浄すること」です (参考文献 1) 。水道水 (シャワーなど) で構いませんから、十分な量の水を使って、やさしく丁寧に洗うようにしましょう。石鹸を使うとより効果的にばい菌や汚れを落とすことができます。

A man provides first aid for cutting his hands, washing the wound with soap

ただし、強く洗ったり、あまりに頻繁に洗ったりすると、これまた逆に傷口を痛めてしまうおそれがあります。やり過ぎには気をつけましょう。

今どきの治療法は『湿潤療法』

消毒の代わりに推奨されている現代式の治療法は、傷口を乾燥させずに「清潔かつ湿った状態」をキープする『湿潤療法です (参考文献 1) 。

湿潤療法にはいくつかの方法がありますが、『ワセリン』などの油脂性軟膏を塗る方法や、『ハイドロコロイド絆創膏』などの傷口を覆うドレッシング材を貼る方法が特に便利でしょう。この2つについて解説していきます。

湿潤療法① ワセリン

油脂性軟膏として、たとえば塗り薬のワセリンを使った治療法については、アメリカ皮膚科学会も推奨しています (参考文献 2) 。

切り傷、擦り傷、引っかき傷などの軽めの傷は、ワセリンでしっかり保湿しておくことが効果的です。十分保湿すればかさぶたにならず、早めに治ります (かさぶたが出来ると治るまでに長引きやすいので、かさぶたになる前に治してしまうのが理想的です) 。

また、傷が拡大したり、痒くなったりするのを防ぐ効果も期待できます。

湿潤療法② ハイドロコロイド

貼り薬の中ではハイドロコロイド』を用いたドレッシング材の効果が過去の研究で十分に示されており、傷が早く治ると確認されています (参考文献 3) 。

ワセリンなどの塗り薬の場合は、軟膏を交換する際に傷口から「傷を治すために有効な細胞や液体まで一緒に取れてしまいやすい」という弱点がある (参考文献 1) のに対して、傷口にくっつきにくいタイプのドレッシング剤であれば「交換時でも傷口を傷めにくい」というメリットがあります (参考文献 4) 。

ただ、ワセリンに比べるとドレッシング剤の値段は高めです。例えば『ハイドロコロイド絆創膏アドバンス』という製品は、記事執筆時点で Amazon では「10 cm × 40 cm 1ロール」が1,085円で販売されています。一方でワセリンは 500 g で715円です。使いやすさやコストパフォーマンスなどを考慮して、どの製品を用いるか決めると良いでしょう。

また、ニキビパッチについてはこちらの記事を参照してください。

病院に行くべき傷は?

なお、湿潤療法も万能ではないことには注意が必要です。

すでに感染している傷の場合は、湿潤療法がうまくいかないことがあります (参考文献 1) 。傷のぐじゅぐじゅが目立って感染が疑われる場合などは、自己判断でワセリンなどを使うのは避け、病院で状態を評価してもらいましょう。

特に、犬や猫などの動物に噛まれて生じた傷については、たとえ見た目が綺麗でも感染症を起こしやすいので要注意です。抗菌薬を飲むなどの対処が必要なケースが多いので、湿潤療法のみでは対応できません。必ず病院で治療を受けましょう (参考文献 5) 。

また、壊死組織』という黒や黄色などの塊が付着している場合には、それをメスなどで取り除く必要があり、湿潤療法だけでは上手く治りません。こうした重めの傷についても、自宅で様子を見るのではなく、病院で相談して下さいね。

傷をきれいに治しましょう!

以上、傷の治し方について解説しました。

「傷は消毒」という考え方は古いもので、むしろ傷の治りを遅くしてしまう可能性があります。現代式の『湿潤療法』に基づいて、傷をきれいに洗った上でワセリンハイドロコロイド素材ドレッシング材などを上手に活用し、傷をきれいに治しましょう!

COI

本記事について、開示すべき COI はありません。

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