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 2022年に多くの新型車を発売し、メーカーのイメージの刷新に成功した日産。特にノートオーラやサクラといった小型高級車の成功が大きな力になっている。その後も新型フェアレディZにエクストレイル、セレナと新型攻勢もすごい!

 デザインも質感もライバルメーカーを上回る勢いを持つ日産デザインのすばらしさを清水草一氏に分析してもらった。

文/清水草一、写真/ベストカー編集部

■ラインナップの刷新で日産デザインが躍進

2022年12月21日に2WDの発売を開始した新型日産セレナ

 このところ、日産がいいクルマを連発し、ラインナップを充実させている。ほんの少し前までは、ノートとセレナ以外は総コケという感じだったが、ここ数年間で、あまり売れないクルマ(ラティオ、シルフィ、マーチ、フーガ、シーマ)を次々とラインナップから落とし、替わって新世代の優れものが加入。

 世代交代も進み、現在は、どこからでも点が入る強力打線になってきた。

 大きな節目は、2年前の3代目ノートの投入だった。e-POWER専用となった現行ノートは、必須的なオプションを付けるとライバルより大幅に割高な価格設定であるにもかかわらず、発売と同時に販売好調。

 ポイントは、ライバルよりも内外装の質感が高く感じられることにあった。どことなく「1クラス上のクルマ」に見えるので、値段が高くても売れている。

 続いて登場したノートの高級車版「ノートオーラ」はさらに絶好調。今年9月までの販売台数を見ると、ノートの51,350台に対してノートオーラは32,361台と、全体の4割近くを占めている。これまで国産の小さな高級車は売れたためしがなかったが、日産の高級路線は見事に当たった。前例を覆したのだからアッパレだ。

■サクラの発売で定着した高級路線

軽自動車のBEV(バッテリー電気自動車)が日産サクラだ

 日産の高級路線が最もわかりやすいのは、軽EVのサクラだ。同じメカを持つ姉妹車の三菱eKクロスEVは、内外装とも通常のeKクロスと大きく変えず、「普通の軽の感覚で乗ってもらいたい」という狙いだったのに対して、サクラはデイズとはかなり大きく変えて、ノートオーラ的な高級路線を採った。

 それでいて価格はeKクロスEVとほぼ同じ。私の眼には、サクラのほうが圧倒的に魅力的に映った。結果はどうだったか。2022年6月から11月までの累計販売台数を比較してみよう。
・日産サクラ/18,319台
・三菱eKクロスEV/3,423台

 かなりの大差になっている。日産と三菱の販売力は、おおむね4:1で日産が上回っているが、この2台に関しては5:1と差が大きい。

 現在は、サクラの納期が1年以上に伸びて受注を停止しているのに対して、eKクロスEVの納期は約半年で、受注を継続している。実際の人気は、販売台数よりも大きな差があると見て間違いない。これは、日産の高級デザイン路線の勝利と言っていいだろう。

BEVの日産アリアは高い質感と優れたデザインを融合

 一方、同じEVのアリアの内外装はどうかと言うと、こちらはライバルに対して、特段のアドバンテージは感じられない。アリアは十分上質でカッコいいが、ライバルのEVもおしなべて上質でカッコいいので、リードしているとは感じられない。

 アリアは600万円前後。価格的には高級車の部類に入り、内外装が高級なのは当然なのだ。トヨタのbZ4Xと比べても、すべてにおいていい勝負。世界的に見れば、どっちもどんぐりの背比べで、EV戦略の出遅れを取り戻すには程遠い状態だが、対トヨタという範囲内では、内外装とも互角だ。

 サクラの成功は、上級クラスの内外装の質感を、軽に持ち込めたことにある。ノートオーラに関しても、同じことが言えるだろう。

■ここ2年で登場した日産ニューモデルの評価

新型フェアレディZは、初代のデザインの雰囲気を取り入れ、うまく現代的にまとめ上げている

 その他、ここ2年以内に登場した日産のニューモデルの内外装を総括してみよう。

・フェアレディZ:レトロモダンなフォルムはシンプルで美しい。ライバルのスープラが大味でくどいデザインなのに対して、断然リードしているように見える(あくまで日本人的な感覚だが)。

・エクストレイル:初代、2代目は、箱型のシンプルなデザインで日本人好みだったが、3代目はグローバルデザイン化しライバルに埋没。今年登場した4代目は、ジューク発祥の複眼デザインを取り入れているが、ゴチャゴチャしていて得意の高級感は感じられない。

 ただ内装は非常に上質で、ライバルのRAV4をリードしている。販売は好調で、受注停止に追い込まれている。

・セレナ:動物的&怪獣的なノア/ヴォクシー、超シンプルでナチュラル路線のステップワゴンに対して、その中間である「オラオラシンプル」とも言うべきフロントフェイスで登場した。ミニバンのデザインとしては、万人受けしつつインパクトがあり、高級感もある。

 客観的に見れば、3台の中で一番魅力的ではないだろうか。今度のセレナは、強力なトヨタ勢に対して、先代と同等かそれ以上に善戦しそうだ。

 このように、過去2年間の日産のニューモデルの内外装を見ると、トヨタに明確に負けているクルマはなく、むしろリードしている。問題は受注停止の連発だ。いいクルマでも、買えないんじゃどうにもならない。

新型日産エクストレイルはグローバルデザインを採用。内装の質感は高い

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