コロナ禍を背景に、ここ数年で買い物のキャッシュレス化はどんどん進んでいるようだ。コンビニ行くのに持っていくのは小銭入れではなく、スマホというのはもはや普通だろう。
それでは新車のような大きな買い物をするときはどうだろうか? 今回はディーラーでのお客さんのお金の払い方に注目した!
文/佐々木 亘、写真/Adobe Stock(トビラ写真:CJ Nattanai@AdobeStock)
■気になるのは利息の支払い!ユーザーがローンやリースを嫌う訳
近年複雑化するクルマの購入形態。近年勢力を伸ばす残価設定に代表される「ローン」や、KINTOなどが勢力を伸ばしつつある「リース」など、分割でクルマの代金を支払うスタイルも定着しつつある。
しかし、まだまだローンやリースの形態を嫌うユーザーも多いのも事実。販売店に取材してみると、クルマを現金一括で買う人は、新車注文の半数近く、中古車に至っては7割以上にのぼるようだ。
どの支払い方法を選ぶとユーザーメリットが大きいのか。クルマ購入時の支払い方法にスポットを当てながら、現金一括と同じようにディーラーで利用できる、クレジットカード決済の裏側に迫っていきたい。
超低金利時代と言われる昨今、国産ディーラーでは自社ローンに1.9%~2.9%程度の金利を設定している。銀行のマイカーローンでは、1~2%程度が多く、輸入車ディーラーでは、0.9%など、1%を切ってくるローン金利も珍しくない。
実際に300万円の元金でローンを組み、年利2.9%、3年で返済した場合、ローン完済までに支払う金額は313万5997円となる。ローンを組むことで、約13万6000円も支払いが増えるのだ。結構いいオプションが1つ追加できる金額であることを考えると、一括で払えるなら払ってしまったほうが良いというユーザー心理もよくわかる。
利息を払わず現金一括でクルマを購入する時、一度立ち止まってもらいたい。クレジットカードを利用することにより、お得が増す可能性があるのだ。
■販売店が気になるのは手数料!ローンなら収益になるがカードだと損失に?
現金一括払いとなった場合、販売店に現金を持っていく、あるいは銀行振込を行って支払うという形が一般的だろう。昨今では、販売店に大量の現金を置きたくないため(防犯上の観点から)、ユーザーに銀行振込をお願いすることが多い。
一方で、普段現金支払いと同じように利用するクレジットカード。これもディーラーで利用できる決済方法の一つである。昨今では、「ポイ活」に注目が集まり、ポイントの貯まるクレジットカードを利用する機会も増えていることだろう。
大きなお金が動くクルマの購入で、クレジットカードを利用すれば、多くのポイントが入るわけだが、ディーラーでは決済金額に上限を設けていることが多いのを知っているだろうか。
国内でのカード保有数が圧倒的に多い「楽天カード」や「イオンカード」、「三井住友カード」「アメックス」などでは、1つの取引で利用できる決済上限金額を30万円~100万円程度に制限しているディーラーが圧倒的に多い。
一方で、トヨタのTS CUBIC CARDやレクサスカード、ホンダのC-Card、日産カードなど、各メーカーのファイナンス部門が提供するクレジットカードがある。これらのカードを利用する場合、前述の一般的なクレジットカードよりも多くの金額をディーラーで決済できるのだ。筆者の経験では、500万円程度の決済は当たり前であり、中には1000万円超のクレジットカード決済を受け付けたこともある。
楽天カードもTS CUBIC CARDも、同じクレジットカードだが、なぜここまで決済できる金額に差があるのか。この裏には、クレジットカード決済を受け付けた販売店がカード決済会社に支払う「手数料」という問題が潜んでいるのだ。
クレジットカードの加盟店が支払う手数料は、決済金額の3%から5%程度と言われている。回収リスクが跳ね上がる業種では、加盟店手数料が10%を超えることもしばしばだ。
仮に5%の加盟店手数料を販売店が支払う場合、300万円の車両代金決済では15万円もの手数料負担がのしかかる。現金や振込で受け取れば300万円全てを受け取れるのに対し、クレジットカード決済になると販売店の手元には、実質285万円しか残らない。
決済金額が高額になればなるほど、重くのしかかるのがクレジットカードの加盟店手数料。そのため、手数料の高いクレジットカードでは、決済上限金額を設け、手数料により発生する損失を減らしているというわけだ。
先ほど取り上げた、自動車メーカーのファイナンス部門が発行するクレジットカードに関しては、加盟店手数料が一般的なクレジットカードと比べ小さい。そのため、比較的大きな金額でも決済を受け付ける。
ディーラー側から見れば、ユーザーがローンを組んでくれると手数料収入となるのだが、クレジットカード決済では手数料損失が発生する。加盟店手数料が高いクレジットカードでの決済は避けたいというのが、ディーラー側の本音だ。
■ポイント数重視ならメーカー系カード!しかしポイント利用の場所が少ない現状もある
ポイントを軸に考えた際に、自動車メーカー系のクレジットカード利用は有効なのだろうか。
一般的に、自動車メーカー系のカードの場合、還元率は1%程度となる。300万円の車両代金決済で受け取れるポイントは約3万円分。ただし、100円で1ポイントではなく、1000円で10ポイントなど、金額の切り捨てが発生することがあるので、ポイント還元率の計算には注意したい。
3万円という金額は大きいが、ポイントを利用できるのはクルマに関係することに限られることが多い。
部品購入や整備代金の支払いに利用できるが、故障は少ないし定期整備はメンテナンスパックで前払いしているとなると、ポイントの利用機会が無いということもあるだろう他のポイントへ移行することもできるが、還元率が下がってしまう。
このため、わざわざ自動車メーカー系のクレジットカードに新規入会して、大きな金額を決済するよりも、普段利用しているクレジットカードで、少額でも決済を行う方が、ユーザーメリットが高くなるケースも多いだろう。
車両代金の一部を普段利用のクレジットカード、残りは現金で支払うことにより、最低限の有効なポイントを受け取ることができる。 多様化する自動車購入代金の支払い方法。ユーザーが支払う利息、販売店が支払う手数料など、ローンやカードを取り巻くお金の流れを改めて知っておき、お得になる支払い方法を積極的に選んでいきたいものだ。
投稿 あなたは現金一括? それともキャッシュレス決済? 今時の賢い新車の買い方はどっちだ は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。