2023年の公共交通機関としての、あるいは趣味と対象としてのバスはどうなるのだろうか。問題点や願望も含めていくつか取り上げてみた。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真はすべてイメージです)
社会がやっと気が付き始めた運転士不足
あけましておめでとうございます。2023年もバスマガジン本誌ともどもよろしくお願いいたします。
さて、2023年のバスを取り巻く状況は決して良いとは言えない。大手の鉄道会社でも赤字をたたき出している状況でバス事業者は一層苦しい戦いを強いられるものと思われる。
鉄道はなるべく人を減らす方向に進んでいるようで、駅の無人化、有人窓口の廃止、乗車券類のネット販売の推進、ワンマン化の拡充、自動運転による運転士そのものの廃止を視野に入れた実証等、どこをとっても人減らしに躍起だ。
もはや人件費にまで手を付けなければならないほど疲弊しているという判断もできる。バスはワンマンが当たり前で、夜行のツーマンでさえ途中で交代してワンマン運転を続ける路線もあるほどだ。
バスの台数を維持したまま運転士を減らすのは自動運転の実用化を待つしかないが、残念ながら商用ベースに乗るには遠い道のりだ。
1台に1人の運転士確保が難しい?
ウィズコロナが一般的な認識になり、人の動きは活発になっている。当然ながら公共交通機関の利用も増えるはずなので、特に高速バスは増便して対応したいはずだ。しかし一般路線バスの運行で手一杯な事業者が多く、高速バス増便にまで手が回らないの事業者も多い。
日常の大切な足である路線バスは簡単に減便や廃止ができない事情があり、ラッシュ時の便数を確保すれば高速バス増便まで運転士が確保できない。バスは1台に一人の運転士が必要なので、バスの購入はいくらでもできるが運転士の確保が難しいというミスマッチが起きている。
実は労働環境は良好な職種
取材の際にバス運転士とお話をする機会があるが、確かに「労働環境が思ったほどよくない」と愚痴をこぼす運転士もいる。しかし、「マニアの皆さんが言うほど悪くはないですよ」という運転士もいる。
これは数多くあるバス事業者の一部をみて業界全体のイメージを抱いてしまう、「木を見て森を見ず」なのだろうと感じた。
今の時代は情報がすぐに流れるので、ダメなら良い環境(と自身が思う)事業者に転職すればよい。環境が悪い事業者はいずれ運転士がいなくなり淘汰される。
厳しいようだが、それが資本主義の原則でもあり労働者にとっては健全な流れだろう。運転士が不足していることを社会全体が気付き始めたので、見栄もイメージもすてて率直になり手を増やす努力や環境、法整備が求められるだろう。
バスの良さをもっと広めよう!
一般論ではバスは鉄道と比較して、遅く定時制で劣る。しかし時間に余裕のある旅行であれば、バスの良さは際立ってくる。都市部の地下鉄とは違いバスは基本的に外を走るので景色が見える。
どこをどう走っているのかはスマホのGPSを活用すれば位置が簡単にわかり、車窓で見えた気になる場所でぶらりと下車して立ち寄るのも容易だ。鉄道ではそうはいかない。
バスは鉄道よりも停車間隔が短いので、目的地至近で乗降可能な場合が多い。大都市のターミナル駅に新幹線や特急列車で到着しても、実際はそこが目的地というケースは少なく、乗り換えて別の場所に移動するのが一般的だ。
中・長距離を走る高速バスでは複数の停留所に停車するように路線が設定されているので、意外にも目的地近くで乗降できることがあるのもメリットだろう。このようなバスの優位性をもっと知ってもらうことは大切だ。
もっとバスを見ていただければ分かることはいっぱいある!!
バスマガジン本誌はバスの魅力を伝えるメディアなので、バスの楽しさやカッコよさ、情報をたっぷりと伝えることが使命なので、今年も楽しいバスの話題や役に立つ情報をお届けしたい。ところでバスマニアは鉄道マニアと同様に多岐にわたる自分だけの「専門分野」があることが多い。
もっぱら路線バスに興味がある人達、高速車等のハイデッカー車専門、特定メーカーに思い入れのある人たち、エンジンやシート、サスペンションなどの部品専門等々さまざまだ。
普段、何気なくバスを利用していて、ちょっといつもとは違うバスが来た時に「なんだろう?」と思われたことはないだろうか。
たとえば東京都内であれば、ほとんど音のしない燃料電池車のトヨタSORA、車両最後部まで通路に段差がないフルフラットバスのボルグレン、はたまた2台つながってやってくる連節車であるいすゞ・エルガデュオやメルセデスベンツ・シターロGが来ることもある。
ちょっと変わった珍しいバスが入り口でも構わないので、興味を持って乗ると何か発見があるかもしれない。マニアにならなくても単調なバス乗車時間が少しは楽しくなるかもしれない。
皆さんがそうなればいいなという願望を年頭に発信して新年のご挨拶としたい。興味を持ってもサッパリわからなければ、最寄りのバスマニアにお声をお掛けいただきたい。
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