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 UDトラックスは神戸製鋼所の加古川製鉄所内で大型トラック「クオン」を用いたレベル4自動運転の実証実験を2022年8月〜10月にかけ実施したと発表した。

 UDは2019年にもレベル4自動運転の実証実験を北海道で行なっているが、今回の試験ではより実用的なレベルまで段階を進めた内容となっている。そのあらましをお伝えしよう。

文/フルロード編集部、写真/UDトラックス・フルロード編集部

UDトラックスの風神雷神ビジョン

UDが日通、ホクレンとともに実証実験を行なったレベル4自動運転の車両。UDは当面の目標として構内など閉ざされた「限定領域」でのレベル4を目指すとしている
UDが日通、ホクレンとともに実証実験を行なったレベル4自動運転の車両。UDは当面の目標として構内など閉ざされた「限定領域」でのレベル4を目指すとしている

 UDトラックスは2018年より、2030年までの電動・完全自動運転車両の実用化を目指したロードマップ「Fujin&Raijin(風神雷神)ビジョン2030」を掲げ、風神は自動運転車両、雷神は電動駆動車両として開発を行なっている。

 電動車両開発では大きな動きはないものの、自動運転車開発においては他社に先駆け、2019年にホクレン中斜里製糖工場と隣接公道の一部を使用したレベル4自動運転の実証実験を実施。

 RTK-GNSS(高精度のGPS)や3D-LiDAR(レーザーを用いて周囲を立体的に測定するセンサー)などを活用し一度走行したルートを自動運転でトレースする技術を立証した。

構内などを想定した自動運転車両のビジュアルイメージ
構内などを想定した自動運転車両のビジュアルイメージ

 その後、UDはボルボトラックグループから離脱。いすゞ自動車の傘下に入ったため、風神雷神ビジョンは少なからず軌道修正が余儀なくされたはずだが、2021年11月に神戸製鋼所とレベル4自動運転技術の実証実験に関する基本合意を締結し、昨年8月末〜10月末にかけて同社・加古川製鉄所で実証実験を実施した。

 ホクレン工場の実験ではトレース技術にフォーカスし実際の積載は行なっていないが、今回は製鉄所のオペレーションに基づき積載物の運搬から搬入まで行なう、より実用的なフェーズまでコマを進めた。

加古川製鉄所の実証実験概要と結果

 今回の実証実験は、実際のオペレーションの環境下で、自動運転技術の正確な運用、RTK-GNSSや3D-LiDARといったセンサー類のロバスト性(構造物など外乱の影響によって変化することを阻止する性質)、自動運転および車両システムの信頼性の確認が目的。

 内容としては神戸製鋼加古川製鉄構内の水砕スラグ(高炉から生成する溶融スラグに圧力水を噴射することで急冷した砂状のスラグ。主にセメント用原料)運搬コースの一部のルートを使用し、レベル4自動運転技術を搭載したクオンのダンプトラック1台が重さ約17トンのスラグを積み、複数の異なる拠点との間で自動搬送を行なうというもの。

 さらに一連のオペレーションの自動化を目的に、ホイールローダーでスラグを積み込み、オペレーターの指示を受けて、あらかじめ登録されたスラグ投入口(ホッパー)へ搬送・搬入(投入)するという試みも行なわれた。

ホイールローダーでスラグが積み込まれるクオンダンプ。重量は約17トンほどになるが、もちろん構内専用ダンプだからできること
ホイールローダーでスラグが積み込まれるクオンダンプ。重量は約17トンほどになるが、もちろん構内専用ダンプだからできること

 なお、ホッパーへの投入は新明和工業の自動ダンプ機能が用いられたほか、今回の自動運転システムはSensible4社製のものが使用されている。

 今回の成果として、雨や霧などさまざまな天候下においても自動運転システムが正しく作動し、水たまりや段差、ぬかるみなどの不整地走行でも電子制御ステアリング「UDアクティブステアリング」により、高精度かつ安定した走行ができることを確認。

 また、衛星からの信号が遮断されやすい構内環境においても、RTK-GNSSや3D-LiDARを用いた測位・ナビゲーションに従い、記録した走行経路を正確に走行できることが証明された。

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