「【総まとめ】UPSERTとは?DBごとの違いは?」では、主要なDBごとの書き方をざっくり説明しました。
今回は、PostgreSQLでのUpsertに焦点を絞り、さらに深堀していきたいと思います。
参考までに、DataFrameからUpsertを生成するPython関数も紹介していますので、必要に応じてコピぺでご利用下さい。
尚、PostgreSQL Ver 15 からは SQL標準の MERGE 文が使えるようになりますが、普及にはまだまだ時間が掛かるため、この記事では on conflict ~を使った説明を行っています。
PosgreSQLは Insert into ~ on conflict ~ で Upsertを行う
PostgreSQLでUpsertを行う場合は、Insert into ~ on confrict ~を使います。
簡単に解釈すると、Insert Into ~にインサート文を記述し、 on conflict ~ に重複キーを指定、do update set に重複があった場合の update 文を記述します。
Insert Into の後に value ではなく select * from テーブル名 と記述すると、2つのテーブル間でUpsertによる同期が行えます。
-- oders に1行登録する場合(例:oders に1行インサートする) insert into oders values(1,'2023/01/01 09:00:00',10000,15) on conflict (shop_no,order_date,product_id) do update set count=excluded.count -- 2つのテーブル間で同期を取る場合 (例:old_oders ⇒ odersにUpsertする) insert into oders select * from old_oders on conflict (shop_no,order_date,product_id)
do update set count = excluded.count と記述していますが、これで values の 値を参照しています(詳細は後述)。
Upsertを使うにはユニーク制約が必要
PostgreSQLでUpsertをする上でポイントとなるのがユニーク制約です。
on conflict (キー1,キー2,・・・)で指定したキーの組み合わせで Insert か Update を判断するため、必ずユニークである必要があります。
通常はCreate文でプライマリキーを指定しますので、これがユニーク制約の役割を果たしてくれます。しかし、プライマリキーと異なるキーでUpsertを行う場合、ユニークであることを保証するために別途ユニーク制約を付与する必要があります。
--プライマリキーとは異なるキーでUpsertする場合、ユニーク制約が必要 create table mydata ( s_id integer not null, p_id integer not null, name varchar(50), primary key (s_id) --プライマリキー unique(s_id,p_id) --ユニーク制約 );
上記の動作は PostgresSQL Ver14 で確認していますが、バージョンによって挙動が異なる可能性があります。
もしお使いの環境で「ON CONFLICT 指定に合致するユニーク制約または排除制約がありません」というエラーが表示された場合、ユニーク制約を付けてみてください。
既に存在するテーブルに対して、後からユニーク制約を付ける場合は alter table 文を使います。
<ユニーク制約名を指定しない場合>
alter table テーブル名 add unique(キー1,キー2,・・・)
<ユニーク制約名を指定する方法>
alter table テーブル名 add constraint ユニーク制約名 unique(キー1,キー2,・・・)
alter table mydata add unique(id) alter table mydata add constraint mydata_unique_keys unique(id)
後ほど詳しく説明しますが、ユニーク制約に名前を付けると、少しだけ記述が簡単になります。
検証データ
本記事のUpsert文を実際に試してみたい場合は、以下のSQLを実行して下さい。
--サンプルテーブルの作成とテストデータ登録 create table oders ( shop_no integer not null, order_date timestamp not null, product_id integer not null, count integer not null, constraint oders_p_key primary key (shop_no,order_date,product_id) ); alter table oders add constraint oders_uniquekeys unique(shop_no,order_date,product_id) insert into oders values(1,'2023/01/01 09:00:00',10000,5); insert into oders values(1,'2023/01/01 09:10:00',10000,15); insert into oders values(1,'2023/01/01 09:20:00',10000,25); --下記はテーブル間のUpsert確認用 create table old_oders as select * from oders
1行をUpsertする
下記は、サンプルテーブルに (1,’2023/01/01 09:00:00′,10000,15) のデータをインサートし、レコードが既に存在していれば 数量(count)を 15に更新するサンプルです。
insert into oders values(1,'2023/01/01 09:00:00',10000,15) on conflict (shop_no,order_date,product_id) do update set count=15
プライマリキー名、又はユニーク制約名を使って conflict を簡略化する
今回は、プライマリキーに oders_p_key 、ユニーク制約に oders_uniquekeys という名前を付けています。
こうすることで、on conflict の部分が次のように簡略化できます。
on conflict on constraint プライマリキー名 又は ユニーク制約名
具体的には、次のようになります。
-- プライマリキー名を指定した例 insert into oders values(1,'2023/01/01 09:00:00',10000,5) on conflict on constraint oders_p_key do update set count=5 -- ユニーク制約名を指定した例 insert into oders values(1,'2023/01/01 09:00:00',10000,5) on conflict on constraint oders_uniquekeys do update set count=5
EXCLUDEDを使って、update set を簡略化する
Insert 文で指定した values の値は、EXCLUDEDという一時的なテーブル(のようなもの)に格納されており、これを使って参照が可能です。
今までは update 文に直接値を指定していましたが、 EXCLUDED.カラム名 で更新が行えます。
insert into oders values(1,'2023/01/01 09:00:00',10000,15) on conflict (shop_no,order_date,product_id) do update set count=excluded.count
テーブル間でUpsertする
2つのテーブルAとBがあって、Bの内容をAにUpsertしたい場合、select * from を使います。
insert into テーブル名A select * from テーブル名B
下記は old_oders から oders へ Upsertをする例です。
insert into oders select * from old_oders on conflict (shop_no,order_date,product_id) do update set count=excluded.count
ユニーク制約名を使えば、次のようにも書けます。
insert into oders select * from old_oders on conflict on constraint oders_uniquekeys do update set count=excluded.count
UpsertでInsertだけ行う(Updateしない)
なければインサート、あれば何もしたくない場合は、do に続けて NOTING を記述します。
-- oders に向けてインサートを行うが、既に存在する場合は何もしない insert into oders values(1,'2023/01/01 09:00:00',10000,15) on conflict (shop_no,order_date,product_id) do nothing -- old_odersから oders に向けてインサートを行うが、既に存在するレコードには何もしない insert into oders select * from old_oders on conflict (shop_no,order_date,product_id) do nothing
Pythonのサンプル
それでは、参考例としてDataFrameの内容からUpsert文を生成するPythonのサンプルプログラムをご紹介します。
使い方のサンプル
create_upsert にDataFrame、テーブル名、ユニークキーのリストを指定するだけです。
尚、下記サンプルで生成したUpsert文は、最初に紹介したサンプルテーブルに対して実行が可能です。
datas = [ [1,'2023/01/01 09:00:00',10000,55], [1,'2023/01/01 09:10:00',10000,65], [1,'2023/01/01 09:20:00',10000,75] ] df = pd.DataFrame(datas,columns=['shop_no','order_date','product_id','count']) sqls = create_upsert(df,'oders',['shop_no','order_date','product_id']) for sql in sqls: print(sql)
関数のソースコード
以下は、関数本体のソースコードです。数値以外のデータ(文字列、日付)はシングルクォートで括る必要があるため、dtype が ‘object’ か否かで判断しています。
また、insert into ~ values ~ の values に渡すカラム値は、文字列に変換したのち、’nan’⇒NULL に置換しています。このため、カラム値に ‘nan’ が含まれるとNULLに変換されてしまうのでご注意下さい。
import pandas as pd def create_upsert(df,table,key_columns): ''' DataFrameの内容からUpser文を作成する Parameters ---------- df : DataFrame データを格納したDataFrame table : str Upsert対象のテーブル名 key_columns : list of str ユニークキーのカラム 例:['shop_no','order_date',・・・]" Returns ---------- res:str 生成されたマルチテーブルインサート文 ''' # df から全てのカラム名を取り出す columns = ",".join([i for i in df.columns]) # シングルクォート格納用のリストを作り、カラムの型がobjectの場合のみシングルクォートをセット quote = ["'" if str(dtype) == 'object' else '' for dtype in df.dtypes] sqls = [] # 全ての行を取り出す for row in df.itertuples(): # 0カラム名(行インデックス)を飛ばし、必要に応じて各カラム値をシングルクォートで括る。 items = [quote[i] + str(row[i+1]) + quote[i] for i in range(len(df.columns))] # Insert文の作成 values = ','.join(items).replace("'nan'", "NULL") insert = f'insert into {table}({columns}) values({values}) ' # conflict文の作成 keys = ','.join(key_columns) conflict = f'on conflict ({keys}) ' # update文の作成 set_list = [f'{x}=excluded.{x}' for x in df.columns if x not in key_columns] update = f"do update set " + ','.join(set_list) # insert、conflict、updateを結合 sqls.append(insert + conflict + update) return sqls
まとめ
今回はPostgreSQLのUpsertに焦点を絞り、深堀しました。
PostgreSQLでUpsertを行うには、 Insert into ~ にインサート文を、on conflict ~ に重複を判断するためのユニークキー(又はキー名)を、do ~ に update 文を記述します。
もし、存在した場合に何もしなくない場合は、do nothing と記述します。
また、excluded に これからインサートしようとする値が格納されていて、 excluded.カラム名で参照できることも紹介しました。
PostgreSQLでUpsertが必要になった時は、是非この記事を参考にしてください。