すっかり廃れた背面タイヤ。SUVのリアにでかでかとスペアタイヤを背負っているアレだ。一見すると後ろからぶつけられた時なんか緩衝材になる気もするけど、あれどうなの!?
文:小鮒康一/写真:ベストカーWeb編集部
■当たり前だったのに……今やジムニーシリーズだけ
ひと昔前ではSUVの象徴ともなっていた背面スペアタイヤ。そのアイコンさたるや日産のパイクカーでもあるラシーンや、スターレットをベースにSUV風の加飾をプラスしたスターレットリミックスなど、乗用車ベースのSUV“風”モデルにも、SUVっぽさをプラスするアイテムとして採用されていたほどだ。
しかし、近年ではスペアタイヤを背負うSUVはすっかり少数派となり、キングオブオフローダーであるランドクルーザー300も背面スペアタイヤは採用していない。
今や国産車で背面スペアタイヤを採用しているのはジムニーとジムニーシエラ程度というのが実のところとなっている。
■デメリットだらけだった!? 背面タイヤが衝撃を吸収することはほぼなし……
このスペアタイヤを背中に背負うというスタイル、実はデメリットも少なくなく、それによって徐々に姿を消しているというのが実のところのようなのだ。
例えば、後方から追突されてしまった場合など、空気の入っているタイヤがあるために衝撃を吸収してくれるような印象があるかもしれないが、スペアタイヤというのはタイヤだけでなくホイールも備わっている。
そしてホイールというのは路面からの入力を直接受けるものであるため、かなり高い強度を誇っているのはご存知のことだと思うが、そんなホイールに向かって衝突したら、衝撃を吸収してくれるどころかより甚大なダメージを与えかねないのである。
もちろん実際には背面スペアタイヤの車両にぶつかった方が被害は大きいということはないが、タイヤが衝撃を吸収してくれるということはあまり期待できないというのが正直なところだ。
■パンク修理キット台頭も影響大!! 走行性能にマイナス面も
そしてもうひとつ、最近のモデルはスペアタイヤレスでパンク修理キットという車両が増えているが、これも背面スペアタイヤが減った理由のひとつと言える。
スペアタイヤはいざという時にあると助かるものではある。が、ユーザーの多くはスペアタイヤのお世話になることなく車両を乗り換えているケースがほとんど。
わざわざスペアタイヤを全車に搭載するのは、コスト面でもスペース面でも重量面でも歓迎しづらいものとなっているのである。
さらにリアの最も後端に重たいスペアタイヤを装着するということは、言うまでもなく運動性能にマイナスな影響を与えてしまうので、そういった面でも背面スペアタイヤは嬉しくないアイテムというワケなのだ。
■ジムニー未だ採用のなぞ!! スペースが最大の要因か!?
では逆に、未だに背面スペアタイヤを採用している車種はどんな狙いがあるのかというと、まず大きなところではスペアタイヤを格納するスペースがないということが挙げられる。
ジムニーなどは実際に荷室を見た人であればお分かりになると思うが、あのミニマムなスペースにスペアタイヤを格納するのは間違いなく不可能であり、とはいえ本格オフローダーとしてスペアタイヤをパンク修理キットに置き換えるのも難しい……ということで背面スペアタイヤとなっている。
またランクルのように床下にスペアタイヤを吊り下げるという方式も手段のひとつと言えるが、床下に大きなタイヤをぶら下げるということは最低地上高の確保はもちろん、悪路を走行する際にランプアングルやデパーチャーアングルの悪化にもつながってしまうため、本格オフローダーにおいてはできれば避けたいというのが本音のようだ。
なお、背面スペアタイヤはあくまで「積載物」扱いとなるため、ボディの全長には含まれない。そのため、ジムニーはスペアタイヤブラケットまでが全長ということになり、軽自動車枠内に収めているのである。
そのためスペアタイヤの搭載位置を変更するなどして、背面スペアタイヤを下ろしてしまっても何ら問題はないが、ブラケット自体も外してしまって全長が3cm以上短くなってしまうと記載変更が必要となるので注意が必要。
逆に現行ジムニーなどでシエラ用のブラケットを装着して社外ホイールを背面スペアタイヤとして装着する場合も、厳密に言うと軽自動車枠を超えてしまうため、そのまま乗っていると違法改造となってしまうのだ。
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