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走り屋の大好物はやっぱりFR!? 今も人気のFR車 vs. 負けちゃいねーぜFF車5選

 現在の国産車のなかでは希少な存在となってしまったFR(フロントエンジン・リアドライブ)のクルマ。しかし、ひと昔前にさかのぼってみると、それこそスポーツカー=FRという公式が成り立つほど充実なラインナップを誇っていた。その最大の魅力は操舵輪と駆動輪が分かれていることからハンドリングのバランスが良く、クルマをコントロールする楽しさが存分に味わえることにあった。

 ここでは、そんな楽しさを味あわせてくれた名車と呼ぶに相応しいFRモデルとともに、FFでありながらもFRと張り合った(張り合っている)モデルを紹介したい。

文/FK、写真/スズキ、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、FavCars.com

レビン&トレノはFRのAE86もいいけれど……FFのAE92も捨てがたい!?

走り屋の大好物はやっぱりFR!?  今も人気のFR車  vs. 負けちゃいねーぜFF車5選
スペイン語で「雷鳴」という意味を持つトレノ。姉妹車のカローラ レビンは固定式のヘッドライトに対して、トレノにはリトラクタブル式が採用された

 いまや神格化されたFRモデルと言っても過言ではないAE86のカローラ レビン&スプリンター トレノ。

 1983年5月に発売された標準モデルのカローラとスプリンターは5代目から駆動方式にFFが採用されたが、同時発売されたレビン&トレノはスポーティな走りを楽しんでもらえるようにあえてFRが採用された。

 ボディは2ドアノッチバッククーペと3ドアハッチバッククーペの2種類で、エンジンは1.5リッターの3A-U型と新開発の1.6リッターDOHC16バルブの4A-GEU型の2種類を設定。

 発売当初、GT系のトランスミッションは5速マニュアルトランスミッションでスタートしたが、1985年5月に電子制御4速ATのECT-Sが追加された。サスペンションはストラットに4リンク+ラテラルロッドという古典的な構成ながらも、それがかえってFRならではの走行特性とクルマを操るという楽しみを提供した。

 国民的自動車漫画で主人公が駆る一台として描かれたことも手伝って、後年になって人気は急上昇。現在の中古車市場でも平均300万円~400万円という状況となっている。

 そんなAE86から駆動方式がFFに、ボディも2ドアノッチバッククーペのみと大きく様変わりした後継モデルのAE92レビン&トレノも人気を集めたモデル。走行性能も高く、全日本ツーリングカー選手権では数多くのAE92が活躍した。AE86と比べると影が薄いが、あらゆる面でAE86を含めた当時のライバルたちを凌駕していたこともここに記しておきたい。

史上最強のシルビアといえば……走りに徹したスペックが魅力のS15でしょ!

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未曾有の好景気に沸いたバブル絶頂期の1988年、「アートフォース・シルビア」のキャッチコピーとともに登場した5代目シルビアのS13型

 1988年5月のデビューから1993年10月の販売終了までの3年5カ月で約30万台を販売した不世出のデートカーとして知られるS13型シルビア。

 その均整のとれたクーペらしい美しいスタイリングは若者を中心に人気を呼び、瞬く間に大ヒット。そんなスポーツカー然としたビジュアルはもちろん、FRという駆動方式も走りの楽しさを提供した。

 特に、最上グレードのK’sは最高出力175psを誇るターボエンジンを搭載。1991年のマイナーチェンジでは205psに出力が向上し、走りもいっそうパワフルさを増した。そんな流れもあり、マイナーチェンジ後のモデルはチューニングベースとして人気が沸騰。“ドリフト良し、グリップ良し”という素性の良さも手伝って、現在の中古車市場では150万円を下らない高値を維持している。

 だが、しかし! 販売台数こそS13型に及ばないものの、当時の走り屋にとっては1999年1月に登場した7代目S15型こそ、垂涎の一台だったに違いない。

 なかでも人気を集めたのは上位グレードのスペックR。MT車で250ps(AT車は225ps)を発生した2.0リッター直4 DOHCターボエンジンをはじめ、クロスレシオ化や1~3速にトリプルコーンシンクロを適用した6MT、後輪を操舵させて旋回時の安定性を高める電動スーパーハイキャスパッケージ、直進安定性と旋回性のバランスに優れるヘリカルLSDなどを採用。

 その人気は今なお健在で、中古車市場での平均価格も300万円前後で推移しているほどだ。

FC3Sはマツダが世界に誇る名機13Bターボを搭載した記念碑的モデル

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スポーツカーである以上、単に直進安定性が良くて速いだけではなく、運転に“心地良い緊張感”が存在することが重要、という意思統一を社内で図ったうえで開発が進められた2代目RX-7のFC3S

 1985年10月に新開発となる13Bターボを搭載した2代目RX-7、通称FC3S型が登場。

 エクステリアは小型・軽量という初代のイメージを一新する“これぞピュアスポーツカー”といった重厚なものになり、その走りを支えるエンジンも従来の12A型から13B型に変更。排気量654cc×2ローターの13B型は、空冷インタークーラー付ツインスクロールターボチャージャーを装備して185psの最高出力を発生した。

 フロントミドシップの思想を継承した50.5対49.5の前後重量配分も、その走りにいっそう磨きがかかった。

 1986年8月には特別仕様車のアンフィニを300台限定で発売。RX-7では初の2座席仕様を採用するとともにBBS社製の鍛造アルミホイール、専用ダンパー、アルミ製ボンネットフードを装備してピュアスポーツの色をより強めたスパルタンな一台だった。

 1989年のマイナーチェンジでは圧縮比の変更とターボチャージャーの改良で最高出力は205psにまで向上。1991年12月に3代目FD3S型へのフルモデルチェンジとともに販売が終了した。

 その3代目も繊細な曲面で構成された美しいスタイリングや、シーケンシャルツインターボとハイスピードEGIシステムの採用でエンジンの最高出力が255psにまで高められたことが大きなトピックとなった。

 2020年12月、マツダがFC3SとFD3Sのサービスパーツを復刻して再供給すると発表。2022年10月現在、FC3Sは30点、FD3Sは72点の補修パーツが復刻されている。

AE86最大のライバル、ワンダーシビックはレースの世界で他を圧倒した“FFの雄”

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クルマに求められる性能と機能を最大限に追求しながら、エンジンやサスペンションなどは小型・高密度で高性能な設計を行うM・M思想のもとに開発されたワンダーシビック

 AE86のライバルとして真っ先に思い浮かぶのは、FR全盛期にあって“FFの雄”的な存在として人気を集めた3代目シビック。

 1983年9月に登場し、ワンダーシビックの愛称でも親しまれた3代目は発売当初、1.3リッターと1.5リッターのCVCC直4 SOHCエンジンのみの設定だったが、1984年10月に1.6リッター直4 DOHC 16バルブのZC型エンジンを搭載したSiグレードを追加。

 市販乗用車で世界初の4バルブ内側支点スイングアーム方式のシリンダーヘッドを採用したZC型エンジンはカムシャフトをバルブの内側に配置し、ピボットを支点にしたスイングアームがバルブを作動させるもので、これにより吸気バルブで10.3mm、排気バルブで9.0mmのハイリフトを達成。吸排気効率を大幅に向上させ高回転・高出力化を果たすとともに、シリンダーヘッドのコンパクト化も実現。また、世界初の異形中空カムシャフトや小型・軽量の4連アルミシリンダーブロックを採用するなど、数々の軽量化を図ったことで高性能と小型・軽量化を両立している。

 足回りもフロントに操縦性や回頭性に優れるトーションバー・ストラット式サスペンションを、リアに路面追縦性に優れるトレーリングリンク式ビームサスペンションを採用してスポーティな走りを実現。

 その素性の良さが奏功し、全日本ツーリングカー選手権では無類の強さを発揮。1987年シーズンはクラス全戦全勝を達成するなど、レース史にその名を刻む一台として今もなお語り継がれている。

オールドファンも納得の走りが自慢のスイフトスポーツは今や希少なホットハッチ

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スイフトの標準モデルに対してトレッドを拡幅し直進安定性、旋回性能を向上したスイフトスポーツ。ボディは3ナンバーサイズでありながらも新プラットフォームや軽量衝撃吸収ボディの採用などで先代モデル比70kgの軽量化を実現

 セダン、ステーションワゴンとともに今や絶滅危惧種のひとつになってしまった感のあるホットハッチ。

 そんな状況のなか、2017年9月に発売されたスイフトスポーツは1980年代に隆盛を極めたホットハッチの流れを汲んだ貴重な一台であり、駆動方式こそFFではあるものの、当時を知るオールドファンにとっては気になる存在であることは間違いない。

 140psの最高出力を発生する1.4リッター直噴ターボエンジンがもたらす力強い走りが身上のスイフトスポーツの魅力は、何といっても約200万円というリーズナブルな車両本体価格に見合わない充実の装備にある。

 その一例をあげると、基本性能の向上や軽量化に貢献するプラットフォーム“HEARTECT”の採用にはじまり、ギヤ比のクロスレシオ化とショートストローク化でダイレクトなシフトフィールが心地良い6MT、従来のATの概念を覆すスポーティな6AT、コーナリング時のロールを抑制しつつ不快な突き上げ感も解消したモンロー製ストラット&ショックアブソーバーなど枚挙に暇がないほど。

 加えて、スポーティなエキゾーストサウンドに仕上げられた排気系をはじめ、吸気系、冷却系、懸架系も専用設計という徹底ぶりも◎。

 ノーズを前方にせり出させることで躍動感を表現したフロントビューが存在感をアピールするエクステリアも先代から空気抵抗を約10%低減するなど、スイフトスポーツが文句のつけようがないホットハッチであることに異論はないだろう。

 一般的に、1990年代中盤頃までは「スポーツカーといえば後輪駆動のほうが面白い」というイメージが強かったが、シビックやスイフトスポーツを筆頭にしたFFスポーツ車の活躍で、そのイメージはずいぶん薄れたように思う。2023年になった現代でもFRスポーツとしてのロードスターやGR86、FFスポーツとしてのスイフトスポーツとでは、「どちらが面白いか」という観点よりも、「それぞれ違う味わいのあるスポーツカー」というイメージが定着していると言える。

 もちろん走らせ方やシチュエーションによってどちらが楽しいか、有利か、は変わるものなので、お互いの面白さや利点を味わったうえで、なお「自分はこっちが好き」、「そうか、私はこっち」と、お互いを否定しないかたちで盛り上がりたい。

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