比較的設備が整った都市部のバス停には屋根やベンチが備えられているが、通常はポールが立っているだけだ。バス待ちの苦痛を和らげる試みが岐阜県で地域との連携で進んでいるので取材した。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
■指令は「楽にバスを待てるようにせよ!」
みなさんはバス停のある風景といえばどんな姿を思い浮かべるだろうか。街中にあるバス停であればデジタルサイネージや広告の整った未来的なものだろうが、どこか地方の田舎道で道端にぽつんとバス停だけが立っている、そんな風景を思い浮かべた人もいたのではないだろうか。
バスを待っている間に暑さで汗を流しながら、また寒い日は手をこすりながらまだ来ないバスを待つという思い出を持っている人も多いと思う。ただそんな思いをしなくてもいいような、新しい試みが始まったバス停が稼動し始めたということで早速の様子を見てきたのでレポートする。
場所は岐阜県岐阜市である。筆者が訪れた前日は雪で天気は晴れていたものの道路沿いには雪が残り、歩くのもままならないくらいだった。駅前から織田信長が大きくラッピングされた市内ループ線に乗車し、目的のバス停を目指した。
■バスのりばではなく「バスまちば」なのだ
到着したのは岐阜市内にある「忠節(ちゅうせつ)」バス停である。ここも雪が路上に残っていてとても寒い。見たところバス停の設備としては普通に思えるが、これの何が新しくなったのかというと、この隣に立つコンビニエンスストア。これがバス停となったというわけである。
どういうことかというと、バス停に隣接するコンビニエンスストアと協力して店内にあるイートインスペースをバスが来るまでの待合所にしてしまおうということである。
その名も「バスまちば」である。この「バスまちば」は岐阜市や岐阜県などで作る「岐阜市総合交通協議会」と路線バスを運行する「岐阜バス」、それにセブン-イレブン・ジャパン、ローソンの2社が協定を結んで開設したもので、2022年12月14日から市内の6か所のバス停近くの店舗に設けられた。
また店舗内のイートインスペースにはバスの接近情報などを知ることができるデジタルサイネージが設置されていて、バスの利用者は空調の効いた店内で快適にバスを待つことができる。
またコンビニエンスストアにとってもバスを待っている間に飲み物等の購入など、売り上げ増加が期待できるということで、どちらにとってもいい効果が期待できるということだ。実際この日も外は寒かったのでバスが来るまでにコーヒーなど飲みながら待つ利用者の姿を見ることができた。
■デジタルサイネージでバスロケを表示
再び市内ループ線に乗車してもう1ヵ所別のコンビニエンスストアを見に行ってみた。こちらは市内中心部からは少し離れたところにあるバス停である。駐車場の前にバス停がありここも利用しやすそうだ。イートインスペースにはデジタルサイネージのほか、バスに関するチラシや花などの飾りつけもされていた。
デジタルサイネージはディスプレイを縦に使っているもので、文字は見やすくなっていたが、この日は外も晴れていい天気で更に積もった雪の反射もあって逆光となりちょっと見て確認するのは大変そうに思えた。
またこちらのコンビニエンスストアは座席の前にデジタルサイネージが置かれていたので誰かがそこに座っているとなかなか見ることが難しいように思えた。設置する場所や向きは改良が必要かもしれない。
岐阜市の発表によればバス停は岐阜市内に約1300ヵ所あるが、雨よけの屋根が整備されているのは75ヵ所、さらにデジタルサイネージが置かれているのは19ヵ所しかない。
以前からバス停の整備について要望はあったものの、スペースや費用の壁があり、なかなか実現できなかったという。今回設置された「バスまちば」はバス停から約100m以内にある店舗を選んだという。
■普及すればウィンウィンの関係が成立!
こうした取り組みは中部地方の10県では初めてだということで、来年度以降はさらに店舗を増やしていくという。筆者が見たところ、まだ始まったばかりなのでコンビニエンスストアで買い物はするものの、デジタルサイネージを見ることもなくバス停の横に立って待つ人もいた。
さらに道路の反対車線となると何分前くらいに店舗を出ればいいのか分からず横断歩道のタイミングを待っていると、バスが先に行ってしまうということも十分考えられる。
なんとかバスを便利に使ってほしいという想いが実現したことは素晴らしい。せっかくの実証を無駄にしないためにも、よりいいシステムにしていくために利用者の声を積極的にフィードバックし、システムをアップデートしていくことも課題だろう。
その上で、他のバス事業者や街にも広がっていくとバス事業者、コンビニ等の施設、利用者、地域社会にも安心安全なバス停になるので今後に期待したい。
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