2022年11月18日、レクサスはフルモデルチェンジを果たした新型RXの発売を開始した。グローバルで最も売れているレクサス車、つまり高級SUVの日本代表ともいえるRX。雄大な富士山のもと、自動車評論家 清水草一がPHEVの「450h+」、ガソリンエンジン「350」、パフォーマスモデルの「500h」に試乗。その仕上がりをチェックした!
※本稿は2022年12月のものです
文/清水草一、写真/LEXUS、ベストカー編集部 ほか、撮影/平野 学
初出:『ベストカー』2023年1月26日号
■見た目に大きな変更なしも上品でカッコいい
レクサスRXはレクサスの大黒柱。最量販車種につき、これが売れなきゃレクサスが困る。レクサスブランドはRXでオマンマを食ってるのだ。
そのRXが7年ぶりにフルチェンジを受けた。人もクルマも見た目が8割と申しますが、まずルックスはどうだ?
あんまり変わってません!
豊田章男社長は、「ヒットしているからこそ大胆に変えろ」と指示したそうですが、私には超キープコンセプトに見える。
スピンドルグリルからスピンドルボディへの進化も、グリルの上部やサイドがボカシっぽくなっただけで、特に新しさは感じない。
ルーフが浮かんだようなリアピラーの造形もほぼそのまんま。
でもまぁRXは、もともとスタイリッシュだった。
上品でカッコいいのにどこか控え目な雰囲気は、女子受け度満点。品のいいお金持ちが乗るクルマとして、世界中で絶大な支持を集めていた。
その正常進化版に文句を付けるつもりはございません。ただ、先代よりグッとカッコよくなったということもありません。
当初用意されるパワートレーンは3つ。
新設されたパフォーマンスモデルである2.4Lターボハイブリッド「500h」、NX搭載の2.5Lハイブリッドをプラグイン化した「450h+」、そして2.4Lガソリンターボの「350」だ。
海外向けにはある2.5Lハイブリッドの「350h」は、供給不足によりとりあえずナシ。
当初の販売比率はガソリンターボの「350」が7割を占めると予想されております。
■モーターのパワフルさを味わうとガソリン車は物足りなく思う
まず乗ったのは、PHEVの450h+だ。走り出すと、うーん、いいクルマだなぁ。
シャシーがしっかりしてて、サスペンションはしっとりしなやか。さすがTNGA。先代の乗り味も充分上質だったけど、さらにリファインされている。
450h+はプラグインハイブリッドだけに、普通に走っていたら、ずっとEVモードで滑らか〜に走り続ける。ずっとこのままでいい感じ。デンキでの航続距離は86kmだ。
そのままだとエンジンフィールがわからないので、スポーツ+モードに入れてアクセルを深く踏み込む。
するとエンジンが始動して、おなじみのトヨタハイブリッドシステム(THS)発進!
新型は従来の3.5L V6から、NXやクラウンクロスオーバーに採用の2.5L直4にチェンジされているので、フィーリングはちょっと粗い。
ただ、あくまで主役はモーターなので、エンジンの出番はかなり減り、燃費も向上している。基本的には静かで上質で、これぞレクサスRXというイメージだ。
続いて、当初販売の大半を占める予定の350(FF)に乗る。
従来の300は2Lターボだったけれど、新型は2.4Lターボ。最高出力は238psから279psにアップしている。
450h+から乗り換えると、ガソリンエンジンだけで走る350は、出足が大幅に鈍く感じてしまう。
人間、ゼイタクを知るといけませんな。279psのパワーも、1870kgの車重に対して、それほどパワフルには感じない。一度モーターのトルクを知ってしまうとイカンです。
ただ冷静にエンジンを評価すれば、全域にわたってバランスのいいトルクを出している。高回転域のヌケもいい。シャシーの上質さはもちろんそのままだ。
■500hはさすがのパフォーマンスモデル
ラストは、新型RX最大のトピック、パフォーマンスモデルの500hだ。クラウンクロスオーバーRSの「デュアルブーストハイブリッド」と同じシステムを搭載しております。
350と基本設計が同一の2.4L直4ターボエンジンは、前後2個のモーターのトルクと合体することで、異次元の走りを実現していた。
さすがパフォーマンスモデル。どこから踏んでも自由自在に加速する! しかもサウンドが超エモーショナル!
このサウンドは、スピーカーから出る人工音(アクティブサウンドコントロール)で補完されているのですが、ボリュームは調整可能。
普通に走ってる時はRXらしく静かに走り、一旦アクセルを踏み込めば、6速ATがキックダウンして「バルルルルル〜!」みたいな感じで加速する。う〜ん、とってもお金持ちっぽくて、圧倒的にステキ!
ただ、加速しまくると燃費もぐんぐん落ちる。調子に乗ってると7km/L台も割り込む。頑張っても実燃費11km/Lくらいでしょうか。
でもこれはパフォーマンスモデル。燃費を求めるなら450h+や、いずれ追加される350hを狙えばヨシ。そちらは先代450hのイメージで、静粛性満点でひたすら上品に走ってくれる。
で、お値段優先なら350ですね。新型RX、先代に比べると、おおむね50万円ほどお高くなっておりまする。
●レクサス RX(500h Fスポーツパフォーマンス)主要諸元
・全長×全幅×全高:4890×1920×1700mm
・ホイールベース:2850mm
・最低地上高:195mm
・車両重量:2100kg
・パワーユニット:直4、2.4Lターボ+モーター
・エンジン最高出力/最大トルク:275ps/46.9kgm
・モーター最高出力:フロント87ps/リア103ps
・WLTCモード燃費:14.4km/L
・トランスミッション:6速AT
・サスペンション(F/R):ストラット/マルチリンク
・タイヤサイズ:235/50R21
・価格:900万円
【番外コラム】レクサスLS改良モデルもチェック
レクサスのフラッグシップ、LSが一部改良。内容は主にサスペンション関係で、リアサス取り付け部の剛性を高め、サスチューニングで乗り心地を向上させている。
3.5L V6ツインターボ搭載のLS500に乗ってみると、全体に流れる水の如しですべてが自然。
現行LSは、登場当時は乗り心地が固すぎ→一部改良で一気にソフトに→一部改良で中庸に、という変遷をたどってきたが、今回ついに完成の域に達したか。その他、最新世代のマルチメディアシステムも採用された。
(TEXT/清水草一)
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