<恋愛コラムニスト・DJあおいの『
再就職先は女だらけの下宿管理人! 人生の沼にハマッた元エリート・設楽紘一(藤ヶ谷太輔)が、住人のズボラお仕事女子・西島いつか(関水渚)と“オトナの一つ屋根の下ラブ”を繰り広げるラブコメドラマ『ハマる男に蹴りたい女』。
毎話“じれキュン”必至のストーリーを、Twitterやブログで独自の恋愛観を語り著名人にもファンが多い謎の主婦・DJあおいが深掘り&考察する恋愛コラムの連載がスタート!
毒舌(?)ながらも愛のある言葉でストーリーを分析していきます。
大手飲料メーカー、カヅキビールで商品企画のエースとして辣腕を振るう設楽紘一。
齢31にして社長賞を3回獲得、タワマン暮らしで妻も外資系のバリキャリ。絵に描いたようなエリート人生は私のような庶民からは見るに堪えないほどに羨ましい、眩しくて直視できませんね。
31歳ならまだ仕事なんてそこそこに私生活を充実させるスタイルでいいのに、なぜエリートという人種は異様なほど仕事に執着してしまうのでしょう。
見栄や物欲ならある程度で満たされるはずだし、衣食住に問題がなければそこまで執着するほどのものでもない。
そもそも人生の本業は私生活であって、仕事なんて私生活を充実させるための副業でしかない。それが私たち庶民の思考パターンなのですが、エリートさんの人生は仕事が本業で私生活は副業というスタイルなんですよね。
仕事が人生の本業だなんて想像するだけで胃がキリキリと悲鳴を上げてしまいそうですが、そこまで仕事に執着してしまう理由とは、ほとんどの場合は“劣等感”に起因していることが多く、その劣等感の闇が深ければ深いほど仕事に没頭してしまうようですね。
さて、そんなエリート街道まっしぐらと思われた設楽くんなのですが、なんと物語の冒頭で実質上のリストラを宣告されてしまいます。
理由は若きエリートにありがちな暴走、結果を求めるあまりにプロセスを軽視してしまったため社内の秩序を乱してしまったのです。目的のためなら手段は問わないという暴君スタイルが仇となった形ですね。
これを機に設楽くんが目覚めてくれたら嬉しいのですが、人生ってどういうわけか不幸は群れを成してやってくるように出来ているんですよね。
もし神様が実在するのならこの連鎖システムだけは勘弁して欲しいと署名運動でもして直訴したいと常々思っているのですが、無情にもそんな設楽くんにさらなる不幸が畳み掛けます。
自宅に帰ったら妻の姿はなく、テーブルには離婚届と書き置きのメッセージ。
「あなたとのセックスしか好きじゃなかったのかも」
これは辛い、非常に辛い、思わず乾いた笑いが出てしまいそうなほど辛辣な一言。悪い男に弄ばれてしまった経験のある女性ならばわかるはず。
まぁ仕事が優先私生活は二の次というエリートスタイルの設楽くんでしたから、妻に対する愛情もおざなりなものだったのかもしれませんし、因果応報な部分もあったのかもしれませんが…。
こうして設楽くんは仕事と家庭を失い、かつ転職活動も上手くいかず、タワマンで無職暮らしというアンバランスな生活の中、そんな彼を見かねた幼馴染みのナオ姉が悪戯なアドバイスをする。
「愛人契約、する?」
生活費は全部出すから家事全般をやってくれる彼氏がほしいという女性が結構な数でいるのだとか、その斡旋、もちろんこれは虚実織り交ぜたナオ姉の粋なアダルトジョークなのですが、その中のセリフのひとつに「でもさ、身も心も疲れたら誰かにそばにいてほしくない?愛とか恋とかでもなくてもさ」というものがある。
これはある意味悟りの領域に入った者のセリフ、愛とか恋とかカロリーの高いものは身も心も辟易している状態ではかえって毒になり得る。愛人というのは飛躍しすぎだけど、友人のような親和性のある存在が必要なのでは?というナオ姉の優しさとも取れる、控え目に言っても素敵だ。
しかし仕事と家庭を失った設楽くんにはもはやジョークに込められたメッセージを解釈する余裕はなく「いかがわしい!」と一蹴してしまう。
そして後日、ナオ姉から一報が入る、「住み込み、食事付き、転職活動可」。
資金繰りにも困っているであろう設楽くんには願ったり叶ったりの条件の仕事の勧誘、その甘言に誘われ教えられた住所に向かう設楽くんだが「もしやこれは愛人契約なのか?」という疑念が拭えない様子。
そして踵を返そうとしたその瞬間、猛スピードで突進してきた自転車とぶつかりそうになり…!
その衝撃から目覚めた設楽くんを待ち受けていたのは今作のヒロイン(?)、自転車を運転していた張本人、西島いつかちゃんでした。
髪はお団子、コンタクトではなくメガネ、服装も装飾の意思のないカジュアル一直線、様式美より機能美を優先させた「ズボラ女子」を絵に描いたような出立ち、仕事に情熱を注ぐ余りに女性としての美を放棄した現代女性の生態に近いものを感じる、そういう意味で言えば設楽くんと同種の存在と言えなくもないのかもしれません。
設楽くんはすっかり愛人契約だと勘違いし、かのすれ違いコントのようなやりとりを交わし、ついに設楽くんは言ってはいけない一言をぶちかましてしまいます。
「俺はあんたを抱けそうにない!」
この一言はもしかしたらいつかちゃんのためを思っての一言だったのかもしれないし、エリートとしてのプライドがそう言わせてしまったのかもしれないし、人生のどん底で辛酸を舐めている真っ最中にそんな気にはなれないという意味があったのかもしれませんが、いつかちゃんはそんな事情など知る由もなく、脊髄反射的に霹靂一閃、設楽くんの横っ面を平手打ちしてしまうのでした。
結局依頼した仕事の内容とはシェアハウス的な下宿の管理人だったわけですが、勘違いによる失言の件もあって設楽くんはいつかちゃんに頭が上がらない様子。まだ管理人を引き受けたわけでもないのに、いつかちゃんにこき使われてしまいます。
それにしても、失言の件を考慮に入れても設楽くんに対するいつかちゃんのツン加減が執拗すぎる、まるで積年の恨みを晴らすかのような凄味さえ感じる。もしかしたらこの二人、過去に遺恨があるのかも?
この最悪なシチュエーションから冒頭のいつかちゃんが設楽くんを押し倒すシーンにどう繋がっていくのか、今のところまったく予想できない。ここからどんな展開が待っているのか隈なくウォッチしていきたいと思います。
(文:DJあおい)