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 1月11日、ダカール2023は後半戦の2日目、ハラド~シャイバ間で114kmのSS(競技区間)を行ない、大会の山場と目される「エンプティクオーター」地域に到達した。日野チームスガワラはトラック部門総合9位でゴールし、累積順位も総合9位に躍進した。

文/トラックマガジン「フルロード」(日野チームスガワラSNSより)、写真/日野チームスガワラ・ASO

砂丘郡が広がるエンプティクオーターでの初戦がスタート

ステージ10で難所エンプティクオーターに突入。広大な砂丘郡が広がる砂漠地帯だ
ステージ10で難所エンプティクオーターに突入。広大な砂丘郡が広がる砂漠地帯だ

 エンプティクオーターは北にUAEアラブ首長国連邦、東と南にオマーンと国境を接するサウジアラビア南東部の砂漠地域。この日はハラドから467kmのリエゾン(移動区間)で同地域の北部に位置するシャイバのビバーク近郊へ移動し、114kmのSSに臨んだ。

 菅原照仁/染宮弘和/望月裕司組の日野チームスガワラにとってエンプティクオーターは、2021年大会で転倒を喫した因縁の地域だ。

 日野600シリーズは、水温上昇のトラブルを抱えながらも引き続き力強い走りで、このステージを9位でゴール。この日までの累積総合順位も9位に浮上した。

 SSは柔らかい砂丘群が砂地の丘陵とともに大勢を占め、距離は短いものの所要時間はトラック部門のトップで2時間9分46秒、9番手の日野チームは2時間40分8秒を要する厳しさだった。

トラッククラスでは前日に不幸な事故

 ところで、前日までトラック部門のトップを走っていたアレス・ロプレイス(チェコ)だが、第9ステージで死亡人身事故を起こしていたことが判明し、以降のステージを棄権した。

 亡くなったのは69歳のイタリア人男性で、砂丘の影から写真を撮っていたためトラックからは全く見えず、ロプレイスとクルーは事故があったことにも気づいていなかった。クルーたちはこの日のレース終了後にスタッフから事故について知らされたという。

 男性は病院に運ばれたが数時間後に死亡した。

 ロプレイスはチームのフェイスブックを通じて次のようにコメントしている。

 「ダカールラリーのトラック部門で人命が失われた。それはハンドルを握っていた私の過失によるものだ。言わなければならないのは、私やクルーたちはこの事故に全く気付いていなかったということだ。しかし事故をとらえた映像があり、人命が失われたという事実を変えることはできない。亡くなられた方の家族と友人、愛する人たちに心よりお悔やみ申し上げます」。

 いっぽう主催者であるASOは、トラッククラスで首位に立っていたロプレイスが競技を続行できないことを認めたうえで、ロプレイスが当局の調査に協力していると発表した。

明日からのマラソンステージに備える

無事シャイバのビバークに到着した日野600
無事シャイバのビバークに到着した日野600

 いっぽう、日野チームスガワラの日野600シリーズは冷却水を一杯に補充してこの日のSSをスタート。幸い距離が短かったため、終盤で水温の上昇傾向は見られたものの途中で(冷却水補給のために)停まることなくゴールすることに成功した。

 この日はハイブリッドシステムの不調があったものの、タイムロスがなかったことで好成績を獲得。ゴール後は42kmのリエゾンを走り、周囲を砂丘に囲まれたシャイバのビバークに到着した。

 1月12〜13日はアシスタンスの整備や部品補給を受けずに2つのステージを走破する「マラソンステージ」が予定されている。

 大きなループでエンプティクオーター地域を巡り、12日の晩はアシスタンスが不在のマラソンビバークとなる。車両のメンテナンスはクルー自らが行ない、 スペアタイヤやパーツも競技車に搭載しているものに限られる。

 このため、12日の競技中のパンクやトラブルが13日の競技に直接影響する。コースの難しさとともに今大会の正念場だ。日野チームはこの2日間を無事にクリアできるよう、メカニックたちが未明まで入念な点検整備を行なった。

チームメンバーのコメント

ステージはそつなくクリアした日野チームだが、エアコンが壊れて大変な一日だったようだ。メカニックの望月裕司(左)とコ・ドライバー染宮弘和も疲弊の色を隠せない
ステージはそつなくクリアした日野チームだが、エアコンが壊れて大変な一日だったようだ。メカニックの望月裕司(左)とコ・ドライバー染宮弘和も疲弊の色を隠せない

菅原照仁
最初は小さめ、最後は大きな砂丘を越えるステージで砂も柔らかかったです。水温のことがあるので無理はしていませんが、集中して走って、良い結果が出ました。

染宮弘和
砂丘がずっと続き、ドライバーが忙しいステージになりました。エアコンが壊れて窓を開けて走っているので、砂塵と騒音で結構大変でした。

望月裕司
今日は水温のトラブルが悪化せず、SSも冷却水の補給なしでゴールできて良かった 。明日からマラソンなので水を入れたポリタンクをたくさん積んで行こうと考えています。

濱井抄太郎
ハイブリッドは今朝になってキャパシタが機能していないことが判明したので今日はシステムを切って走りました。スペアがあるので今晩載せ替えてみようと思います。

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