高速・観光バス車両の出入口は基本的に1カ所だけだが、路線バスの場合は何種類かのパターンがある。中にはユニークなドア配置の車両も見られ、バス趣味としても興味を掻き立てられるポイントのひとつだ。
文・写真:中山修一
観光バスみたいなドア配置!? 前1扉車
一般路線バスにも、左側・前輪の前に出入口の扉が1つだけ設けられた大型・中型車両がある。特殊なモデルというわけでもなく、一部メーカーでは「前扉仕様」のような名称で標準ラインナップに用意している。
最近の車種は送迎用に適しているとされるが、それほど利用者の多くない郊外路線や観光路線でも似たようなドア配置の1扉車が使われる。この場合、自動的に前乗り・前降りの利用方式が採られる。
1扉車が入る路線にドアが2カ所以上ある車両が混在している際は、主に後ろ側のドアを締切にすることで1扉車に合わせて対応する。
一般的な路線車の制約と同様に、高速道路等での走行はできないのが普通だ。
マイクロバスや日野ポンチョなど最近の小型バスでもまた1扉仕様が主流であるが、こちらは前輪の後ろ側にドアがセットされていて、大型・中型路線車の1扉仕様とは趣が異なる。
ちなみに大昔の路線バス車両は1扉が多かったが、現在の大型・中型の前扉仕様よりもマイクロバスのドア配置に近い。
今や大多数を占める2扉車
全国的に見て、現在最もポピュラーなのが2扉車と言える。前輪の前に1カ所と、ちょうど車体の中間付近に1カ所扉を持つスタイルだ。
2扉タイプは取り扱いのバランスが良好で、前乗り・後ろ降り、後ろ乗り・前降りなど、各地で異なる一通りの利用方法に対応できるのが特徴となっている。
後ろのドアが車体中間ではなく後輪の後ろに設けられた車両も存在する。最近はほどんど作られなくなったが、運用に入っている年式が旧めのクルマもまだ見られる。
前述の小型バスにも、日野ポンチョでは2扉車がラインナップにある。前扉のすぐ横に後扉があり、これなら1カ所で間に合うのでは? と勘繰ってしまいたくなるお茶目な配置が楽しい。もちろん乗降しやすくなるのは間違いない。
都会で結構流行った3扉車
前輪の前と車体中央、後輪の後ろにそれぞれドアを1カ所ずつ取り付けた、3扉仕様の路線車というものがある。よりスムーズな客扱いができるということで、利用者が多い都会のバス路線で頻繁に見られた時期があった。
実際の運用では、全てのドアを開ける時は終点のみで、途中の停留所では中央または後ろの扉を締切にして扱う事業者が多かったようだ。
路線車の主流になる勢いで浸透した3扉車だったが、2006年にバリアフリー法が施行されると3扉車は構造的に作りづらくなり、自然消滅するような形で姿を消していった。3扉車はすでに絶滅危惧種となって久しく、今や物凄く珍しい。
また、普通の路線車とかなり勝手が異なるものの、車体を2つ繋げた連接バスは連結部分を境に前2カ所、後ろ1カ所にドアを設けている。究極的ながら、こちらも3扉車の一種に数えられる。
「後ろ」か「中」か
ドアが1カ所だけクルマの場合「前扉」と呼べば意味は通じる。ここで少し悩むのが2扉車である。前側は前扉で良いが、後ろ側をどう呼ぶか、という点だ。
事業者によって言い方が「後扉」と「中扉」の2パターンに分かれる。前述の、後輪の後ろにドアがある2扉車や3扉車を考慮に入れると、「中扉」や「中ドア」が最も適した表現になる。
ただし、最近は2扉車=車体中寄りにドアのついたスタイルが大半を占めるため、便宜的に「後扉」や「後ろのドア」のような呼び方をしても、それほど差し支えなくなってきている。
出入口のドアの配置一つ取っても、路線バスの長い歴史や進化を垣間見るような奥深さを感じるものだ。
投稿 1枚だけもアリ!? 路線バスのドアが種類豊富すぎ は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。