連載「平和国家」はどこへは全7回です。
このほかのラインアップは次の通りです。
第1回 日本と台湾が連絡ルート構築 中国に対抗、水面下で設置
第2回 台湾有事の日米作戦計画、最終段階に 政府、4年前から想定
第3回 首相、理念乏しき「反撃能力」 契機は総裁選、背景に氏の影
第4回 海底ケーブル巡る水面下の攻防 情報基盤に迫るロシアの脅威
第5回 初の国産機の夢破れ 防衛部門に配置転換
2022年11月上旬、北海道大。工学研究院の永田晴紀教授は、大学当局から届いた1通のメールに気づいた。そこには「国内外の軍事・防衛を所管する機関」などから資金提供を受ける場合について、審査の仕組みを導入するとの指針が記されていた。
メールを読んだ永田教授は、防衛装備庁の助成制度を受けられる可能性が出てきたと感じ、喜んだ。過去に苦い経験があったからだ。
永田教授の専門はロケットの開発。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のチームとロケットエンジンに関する共同研究を計画し、防衛装備庁の助成制度への応募を検討した。ところが17年5月、大学側に申請手続きを門前払いされた。JAXAは別の共同研究者を見つけて防衛装備庁に申請し、採用された。助成額は5年で最大20億円だ。
防衛装備庁が15年度に始めたこの安全保障技術研究推進制度は、「防衛にも応用可能な先進的な民生技術を積極的に活用することが重要だ」として、防衛分野への貢献が期待される大学や企業などの基礎研究に助成金を出す仕組み。22年度は101億円の予算を計上している。開始当初から多くの研究者らが「大学は軍事研究に加担すべきではない」と反対の声を上げ、市民団体が大学に助成を受けないよう求める運動も起きた。
全国の研究者の代表機関・日本学術会議も動いた。同会議は、第二次世界大戦で科学者が軍事研究に協力したとの反省から、戦争を目的とする研究をしないとの方針を打ち出している。17年3月に声明を発表し、防衛装備庁の助成制度について「学術の健全な発展という見地から問題が多い」と慎重な対応を求めた。そのうえで、各大学に「技術的、倫理的に審査する制度を設けるべきだ」と歯止めをかけるよう促した。
日本学術会議は「学者の国会」とも称され、その影響力は絶大だ。これ以降、多くの大学で申請を控える動きが相次いだ。大学からこの助成制度への申請は16年度に23件あったが、声明を受けて半減した。
永田教授が助成制度について大学側に相談したのは日本学術会議の声明から約2カ月後。大学は申請を許可しない理由に「審査体制がない」ことを挙げており、声明を踏まえた形だ。
18年には北海道大大学院の教授らのチームが16年度から支給されてきた防衛装備庁の助成金を辞退した。助成途中での辞退は極めて異例だ。北海道大によると、辞退の際に「日本学術会議の声明を踏まえ、新たな(助成金の)契約はしない」と防衛装備庁に通知したという。
永田教授は「このまま安全保障技術研究推進制度への応募はできないと思っていた」と話す。22年11月に届いた大学当局からのメールを「審査制度ができれば、応募に道を開くものになる」と受け止め、期待に胸を膨らませる。
だが、大学当局の新たな審査制度に対してはキャンパス内で反発も広がり始めていた。
「方針の大転換 教員への説明必…(以下有料版で, 残り2091文字)
毎日新聞 2023/1/8 06:00(最終更新 1/8 06:00
https://mainichi.jp/articles/20230107/k00/00m/010/193000c
引用元: ・防衛の助成金、受けるべきか 歓迎と懸念 揺れる北海道大学 [蚤の市★]
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