冬は公共交通機関にとって大敵の、悪天候に見舞われやすい季節でもある。その代表格が今年も各地を悩ませている雪であるが、雪によってバスが終日止まってしまうケースが見られる。その場合、バスが運休になる条件や基準値みたいなものは存在するのだろうか?
文・写真:中山修一
実は明確には決められていない!?
まず、雪とバス運行可否の関係については、豪雪地帯であったり、毎年ほどほど降ったり、滅多に降らなかったりと、地域によって気候がバラバラあるため、全国で統一されている基準は存在しない。
「積雪何センチ」のように、明確に数値で表している事業者もまた殆どないようだ。強いて言うなら、どこでも共通する運休の条件が一つだけある。(雪の影響で)乗務員が出勤できなかった場合だ。
もう一つ当てはまるのが「運行するには危険な状況と判断した時」であるが、こればかりは当日になって表の様子を見てみないと分からない本当のケースバイケースなので、条件と呼んで良いものか判断に迷うところだ。
道路の状態が運行を左右する
バスの運休が決まる要因の多くを占めるのが、バスの経路に含まれる道路の状態だ。
あまりにも雪が降りすぎて除雪が追いつかない場合や、除雪は行ったがバスを通すための十分な道幅が確保できない時、といった原因がよくある。
何センチ積もったか、という点は地域によって異なり、数値もあまり重要視されない。雪対策が取られている豪雪地帯なら、ある程度まで積もっても車道の除雪さえ完了すれば問題なく運行される。
一方で雪が殆ど降らない場所で積雪があると、うっすらな量でも危険と判断されて運休が決まる。
道路の直接の状態とは少し異なるが、強風で猛吹雪となり前方視界が確保できなくなった際も運休の判断材料に用いられるようだ。
安全のために慎重に判断する高速バスは運休しやすい!?
首都圏では雪が降ると真っ先に止まるのは電車というイメージが強いが、実はそれよりも早々に運行可否が出るのでは? と思わせるのが高速バスだ。
高速バスが雪で運休しやすいのは、降雪や積雪で高速道路が通行規制や通行止めになるタイミングが早いためだ。
ちなみに高速道路には、雪で通行止めにする基準が国によって一応設けられている。積雪量と前方視界が主な項目となっているが、こちらも高速道路が敷かれている場所によって値にバラツキがある。
バス事業者が運休の告知を行うのは、積雪が予想される前日の夕方〜晩にかけてが早いほうで、基本的には当日発表だ。事前に高速道路側で通行止めが決定していれば、高速バスも巻き込みで運休確定となる。
運行可否の予告が前日遅くか当日になるのは天気予報の精度も関係してくる。天気予報が当たる確率は前日でも100%ではなく、当日になっても(過去の予報を含めて)コロコロ変わるのが現状なので、結局ギリギリまで分からないのだ。
高速道路が通れないなら一般道で行けばいいんじゃないの? と考えたくなるのは自然な流れ。しかし迂回するには事業者が国から認可を受けた経路を通らないと違法になってしまうため、その日だけ即興で、というわけにも行かない。
雪すら攻める最強の公共交通機関!! 一般路線バス
公共交通機関中、悪天候でも「まず止まらない」存在感を放つのが一般路線バスだ。
雪の多い地域へ冬場に赴くと一般路線バスはごく普通に運行しているし、首都圏で雪が降ると最後まで動いているのが一般路線バスとタクシーであるほど、かなり雪耐性の強い乗り物と言える。
高速道路に比べると積雪ですぐ通行止めになってしまう一般道は少なく、自ずと路線バスが止まる可能性も高速バスより低くなる。
また、雪の際に自分でクルマを運転するのを避けバスに流れる需要が少なからずある。そんな時に路線バスは渡りに船な頼もしい存在となってくれる上、事業者的には商機につながる。
さすがの一般路線バスも雪で止まる可能性はゼロではなく、前述のように乗務員が確保できない時をはじめ、経路上の道路が積雪で使えなくなった場合、暴風雪などを理由に運休となった事例が見られる。
高速バス/一般路線バスとも、雪によりバスを運休させる際の数値的な条件というものはなく、国や自治体が定めた高速道路/一般道の通行止めの基準に合わせる他は、総じて「あいまい」にしているのが一般的なようだ。
何よりも安全運行が重要であるため、無理に線を引くよりも柔軟性を持たせておいた方がより効果的ということなのだろう。
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