F1チームは、100分の1秒、1000分の1秒を稼ぎ出すために日々研究を重ねている。莫大な予算を投じた開発が失敗に終わることもあれば、些細なアイデアがときには思わぬ効果を発揮することもある。マクラーレンが公開した記事ではマシンに貼られた『テープ』が生み出すメリットが解説されている。
F1中継を見ていると、予選などのセッションを前にメカニックがマシンに透明なテープを貼っている姿を目にすることがある。
先端技術の結晶であるF1において、テープとハサミというローテクな道具は少し場違いにも感じられる。しかし、この世界で行われることに無駄なものは一切ない。このテープもまた、パフォーマンスを向上させるために必要なのだとマクラーレンは言う。
テープを貼る一番の目的は、ボディワークのつなぎ目部分にある隙間を埋めることにある。車体に隙間があると、そこから空気が漏れ出し、車体内部の空気をリヤから排出する際の効率が落ちる。さらに漏れた空気は車体表面に形成された境界層を押し流し、ドラッグも発生させてしまう。
しかし、テープはこうした問題を簡単に解決してくれる。車体に貼られたテープは空気漏れを防ぎ、マシンの空力性能を高めてくれるのだ。
それでは、この『テーピング』にはどれだけの効果があるのだろうか。実際のところ、チームは「その効果は測定したわけではない」と明かしており、時間の余裕がないときにはこの作業自体を省略することがあると認めている。
しかし、だからといってこれが単なるおまじないに過ぎないと考えるのは間違いだろう。エンジニアたちは口を揃えて「ボディにテープを貼ることで得られる効果は小さいが、ゼロではない」と主張している。
効果がゼロでないならば、それを積み重ねることで差が生まれ、ライバルを出し抜くことができるかもしれない。100分の1秒、1000分の1秒の争いになるF1では、マクラーレンが言うように「ほんのわずかな進歩を追求することに価値がある」のだ。