矢野特殊自動車が開発した「チルドウイングPharmaX」は医薬品輸送を前提に開発された大型冷凍ウイング車のコンセプトモデル。高価かつ厳格な温度管理が求められる医薬品を安心/安全に運ぶための機能を満載した同車両の特徴に迫る!!
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/矢野特殊自動車、トラックマガジン「フルロード」編集部
新型チルドウイングを医薬品輸送向けにカスタマイズ
冷凍車は冷凍機と断熱ボディによる保冷性能を備える特装車。冷凍車とウイング車の機能を併せ持つ冷凍ウイング車は、ウイング機構を搭載することから、バン型の冷凍車に比べて保冷性能が劣るとされている。
矢野特殊自動車は2020年に冷凍車に匹敵する保冷性能を実現した大型冷凍ウイング車「アイスウイングXF」を発表しているが、同車両は保冷性能を高めるため分厚い断熱材を使用しており、保冷性能は極めて高い反面、庫内寸法は小さい。
一方、今年(2022年)発表された新型「チルドウイング」は管理温度0度クラスの大型冷凍ウイング車で、アイスウイングXFの構造体をスケールダウンして搭載することで、保冷性能と庫内寸法を両立しているのが特徴。
この新型チルドウイングをベースに開発された医薬品輸送向けのコンセプトモデルが、今回紹介する「チルドウイングPharmaX」。名前は医薬品を意味する「Pharmacy(ファーマシー)」、最大を意味する「Max」、改良型を意味する「X」を組み合わせた造語で、同社の創業100周年記念モデルでもある。
庫内の温度を2〜8度で均一化させることを追求
「チルドウイングPharmaX」は昨今、大型冷凍ウイング車で医薬品輸送を行なうユーザーが増えていることを受けて、より高品質な医薬品輸送を実現するべく開発されたもの。開発にあたっては、医薬品を適正に運ぶための業界ガイドラインに基づき、庫内の温度を2〜8度で均一化させることを追求したという。
保冷性能に大きな影響を及ぼす断熱材には、新開発の高性能断熱材「ラムダ」を採用。ラムダは高い断熱性能により従来同等の厚みで従来以上の保冷性能を実現することや、従来より薄い厚みで庫内寸法を広げつつ従来同等の保冷性能を実現することなどが可能だが、医薬品輸送スペシャル仕様の「チルドウイングPharmaX」では保冷性能を重視して前者を採用している。
さらに庫内を2〜8度で均一化させるため冷凍ウイング車では珍しい「2エバ(エバポレーター=熱交換器を庫内前後に配置)」を採用し、庫内16個の温度センサーで走行中の温度状況をリアルタイムで把握できる独自開発のIoT温度監視システム「サーマルアイネット」も搭載。高価かつ厳格な温度管理が求められる医薬品の安心/安全な輸送を車両内外からサポートする。
同社は「輸送品質と輸送効率を高める技術パートナー」を掲げ、さまざまなオプション装備を開発して「技ありアイテム」として展開しているが、今回のは医薬品輸送を視野に入れたさまざまなオプション装備を多数装備しており、こちらも注目だ。
なお、同車両はコンセプトモデルのため、いまのところ市販する予定はないという。
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