12月23日にグランツーリスモシリーズは25周年を迎えた。全世界累計実売本数9,000万本突破し、ゲームという枠組みを越えて世界中のクルマファン、モータースポーツファンを楽しませてきた。
シリーズ25周年アニバーサリーデイを目前とした12月、グランツーリスモシリーズの開発を手がけるポリフォニー・デジタルは、メディア向けに東京スタジオのスタジオツアーを開催。ポリフォニー・デジタル代表取締役プレジデントの山内一典氏が自ら東京スタジオを案内した。ここではグランツーリスモファンにとっては“聖地”とも言えるポリフォニー・デジタル東京スタジオの様子をお届けする。
東京都江東区のイースト21ビジネスセンターにあるポリフォニー・デジタルの東京スタジオ。グランツーリスモ最大の開発拠点は、倉庫をリノベーションした1フロアに設けられている。山内氏を筆頭に、エンジニア、アーティスト、デザイナーなど、さまざまな分野のエキスパートが集結。九州の福岡アトリエやオランダ・アムステルダム、アメリカ・ロサンゼルスといった世界各地の拠点と連携しつつ、グランツーリスモシリーズの開発を進めている。
エントランスから東京スタジオに足を踏み入れると、かなり広めのメインホールが来場者を出迎える。グランツーリスモ7の試遊台が複数台置かれ、グランツーリスモ・ワールドシリーズなどのeスポーツ大会のテストも可能な環境だ。また、小規模であればイベントも開催できるように映像・音響機器が整えられている。
メインホール後方には『Devil’s Dinner(デビルズダイナー)』と名付けられたカフェスペースも。『Devil’s Dinner』といえばニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北コース)入口にあるカフェだ。ニュルブルクリンクの一般走行に訪れたクルマ好きの溜まり場となる、いわばクルマ好きの“聖地”だ。その『Devil’s Dinner』から名付けられたこともあり、カフェスペースのデザインはニュルブルクリンクをイメージしたものとなっている。
そして壁には、2018年のネイションズカップウイナーのイゴール・フラガを筆頭に、歴代グランツーリスモ・ワールドシリーズのウイナーの名前が並ぶ。
続いて訪れたロッカールームは『PIT STOP』という名称。さらに、室内のロッカーにはそれぞれグランツーリスモシリーズに収録されているコース図と名称が描かれている。30番が富士スピードウェイなのは、30度バンクからだろうか……? こういった遊び心もポリフォニー・デジタルらしいところだ。
続いては、グランツーリスモシリーズのサウンドの根幹を支えるサウンドルーム。取材の際には、コース上に置かれた音源(車両や観客の声、鳥の声など)の位置や音の放射方向を視認できるデバッグツールを使用し、各音声をチェックするサウンドプレビューが行われていた。走行車両は12月15日から配信された『フェラーリ・ビジョン・グランツーリスモ』だ。
サウンドルーム手前の休憩スペースには福岡アトリエと常時繋がるカメラ&ディスプレイが設置されており、休憩しながら福岡アトリエのメンバーと雑談もできるような環境が作られている。またピアノやギターが置かれており、クリエイターの多いポリフォニー・デジタルらしさが伝わってくる。
ホワイトボードに描かれたイラストは、山内氏が「10分くらいでなんとなく」雑談しながら想像で書いたもの。そのエピソードを聞いたメディアのリクエストに答えて、山内氏が素早くクルマの絵を描く姿も見せてくれた。
そして、いよいよ開発フロアへ。広大なフロアではさまざまなスタッフが開発に取り組む姿が見られた。
その開発フロア内にある『ライブラリー』へも訪れることができた。現在ではデータのほとんどが電子化されているため、ライブラリーに保管されているものは、グランツーリスモの制作の歴史の中で欠かせなかったクルマのカタログや、カラーサンプル、新旧さまざまな雑誌や書籍、モデルカーやプラモデル、DVDなど。室内は非常にアカデミックな雰囲気を漂わせていた。
収蔵品の中には、山内氏がニュルブルクリンク24時間レースに参戦した際のGT-Rのフロントフェンダーも。さらには、auto sportやレーシングオン、ビデオオプションなどの雑誌やDVDのバックナンバーが網羅されていた(ありがとうございます!)。
続いて訪れたのは、『ビデオルーム』。取材時は機材が出払っていたため、室内はすっきりとしている。グランツーリスモ・ワールドシリーズのライブコメンタリーの収録なども行われるスペースでもある。合成用のグリーンバックはワールドシリーズのライブコメンタリーやプロモーションビデオの撮影にも使用。グリーンバック合成には独自のシステムを使用し、「グランツーリスモの世界であればどこにでも立つことができる」というもの。
また、開発ブースの傍には、和室の会議スペースも。背後の棚を開けるとホワイトボードが出てくるという工夫もあり、海外からの来訪者には特に嬉しいスペースだろう。このほかにもポリフォニー・デジタルでは、会議室やオフィス空間にそれぞれ特色を持たせている。
さらに開発エリアを進むと、そこにはジムがある。「あまり運動をしない仕事なので、ジムは近ければ近いほどいいです」という山内氏の考えもあり、開発エリアのすぐそばに設けられている。山内氏も週2回ほどはこのジムを利用しているという。なお、山内氏が座るレッグプレスマシンは、ニュルブルクリンク24時間レース参戦にあたり、片足で120kgほどの力が必要なFIA-GT3車両のブレーキを踏みきるトレーニングのために導入したものだ。
また、スタジオツアー中に『GT家具』と呼ばれるものを発見。こちらは、ハンドルコントローラーを家の中で設置しても家族に怒られずに遊びたい大人にむけた家具とのこと。
プレイステーション5や椅子を収納するのことができ、普段はテレビ台として機能するポリフォニー・デジタルがプロデュースした家具の試作品だ。無垢材でできており、高級感が強い。このような試作品を通じた新たな分野のノウハウの蓄積も進んでいるようだ。
続いては、山内氏のオフィスの様子を一部ご紹介しよう。オフィスの棚には山内氏に向けて送られたさまざまな贈り物が並んでいる。その中にはルイス・ハミルトン、バレンティーノ・ロッシから贈られたヘルメットなど、モータースポーツファン必見のアイテムが並ぶ。
そしてスタジオツアーの最後に、グランツーリスモ公式世界大会のトロフィーデザインについて山内氏が自ら説明。このトロフィーは、イタリアの未来派の芸術家、ウンベルト・ボッチョーニが1913年に制作した彫刻『空間における連続性の唯一の形態』をモチーフにしている。
オリジナルの『空間における連続性の唯一の形態』は速度をテーマに制作した彫刻だ。人間が速度に出会った際の感動が込められているとのことで、2018年にグランツーリスモのワールドシリーズをスタートさせた際に、トロフィーのデザインとして選ばれた。
トロフィー製作にあたり、ボッチョーニの遺族の許諾のもと、ロンドンの国立美術館であるテート・モダンで展示されているフルスケールの彫刻をレーザースキャニングし、型を製作。東京藝術大学の鋳金の研究所で鋳造された。トロフィーのメイキングの様子は下記のGRAN TURISMO TV(YouTube)でも見ることができる。改めて、グランツーリスモが紡いできた歴史を振り返る際に、ぜひチェックしておきたいところだ。
■MAKING OF THE TROPHY FOR THE GRAN TURISMO SPORT WORLD FINAL
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