同クラスであるうえ「同門で価格がほとんど同じ」「プラットフォーム共用車である」「姉妹車同士」など、近しい間柄だけにどちらを選ぶべきか悩む2車がある。
ここではそんな2車同士の対決を8つピックアップ。これらの今気になる2車種を買うなら、どっちがオススメか?
※本稿は2022年11月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年12月10日号
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■中身は基本的に同じ姉妹車同士。選ぶなら? トヨタ ノア vs トヨタ ヴォクシー
両車ともに基本部分を共通化した姉妹車だが、ノアハイブリッドS-Z(7人乗り)の価格は367万円で、ヴォクシーの同グレードは374万円だ。安全&快適装備の内容は基本的に同じだが、価格はヴォクシーが7万円高い。ハイブリッドS-G同士で比べても、ヴォクシーが5万円上まわる。
この違いはヴォクシーのフロントマスクに装着された薄暮灯など、主に外観デザインの違いに基づくが、5万~7万円の差額は大きい。100V・1500Wの電源コンセント(4万4000円)、TV+CD・DVDデッキ(7万4800円)などのオプション装備に相当するからだ。
つまり同じ予算でノアを選ぶと、実用的なオプション装備を1つサービス装着できる計算になる。その意味では機能や装備に対して価格の割安なノアを推奨したい。またヴォクシーはエアロ仕様だけだが、ノアにはフロントマスクの形状が穏やかな標準ボディも用意され、幅広いユーザーに対応している。
●機能や装備に対して割安なノアの勝ち!
■キャラは違えど同クラスの人気SUV同士。選ぶなら? トヨタ ハリアー vs トヨタ RAV4
この2車種は、パワーユニットやプラットフォームの共通点が多い。ホイールベースも同じ数値だ。そのうえで個性化を図り、ハリアーは都会的で上質な内外装を特徴とする。RAV4は前輪駆動ベースのSUVながら、外観はランドクルーザーのような悪路向けに似た野性的な雰囲気を感じさせる。
グレード構成も、RAV4の2WDは少数に限られて大半が4WDだ。ハリアーが搭載しない独自の装備として、後輪左右の駆動力配分を変化させるダイナミックトルクベクタリングAWDも採用した。
直列4気筒2Lエンジンを搭載するハリアーG・4WDの価格は372万9000円で、RAV4の同グレードは366万6000円だ。ハリアーはRAV4に比べて約6万円高いが、デジタルインナーミラーなどを標準装着する。この2車は好みに応じて選べばいいが、装備や質感と価格のバランスでは、ハリアーが買い得で人気も高い。
●装備や質感がよく買い得なハリアーの勝ち!
■トヨタのコンパクトHBのハイブリッドを選ぶなら? トヨタ アクア vs トヨタ ヤリスHV
両車ともにパワーユニットやプラットフォームは共通だ。しかし機能は異なる。アクアは全長とホイールベースが長く、後席の足元空間も広い。内装もアクアが上質だ。
走りを販売の主力グレード同士で比べると、実用域の駆動力はアクアが少し高い。ホイールベースの違いもあり、安定性と乗り心地もアクアが優れる。
その代わりヤリスハイブリッドは、操舵した時に車両が機敏に反応して少しスポーティだ。WLTCモード燃費も、アクアのZは33.6km/Lだが、ヤリスのハイブリッドZは35.4km/Lに達する。
価格を比べると、アクアZが240万円、ヤリスハイブリッドZは235万円だ。装備はアクアがアルミホイールや100V・1500Wの電源コンセントを標準装着して、ヤリスにはシートヒーターなどが備わる。
先に挙げた居住性、質感、走行安定性、乗り心地、装備内容を考えると、価格が5万円高くてもアクアのほうが買い得だ。
●総合的なクルマの出来がいいアクアの勝ち!
■スライドドア採用でも背が違う。どっちがいい? ダイハツ タント vs ダイハツ ムーヴキャンバス
基本的には、全高が1700mmを超えるボディによる広い室内が欲しいユーザーはタント、それ以下で充分な場合はムーヴキャンバスを選ぶのがいい。
そのうえで選択を考えると、ムーヴキャンバスは内外装が柔和なデザインで質感も高く、ボディが軽いために動力性能にも余裕がある。したがって一般ユーザーにはムーヴキャンバスが適するように思えるが、価格は割高だ。ストライプス、セオリーともに売れ筋のGが167万2000円に達する。
一方のタントは、左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させて、開口幅がワイドに広がる機能などを採用しながら、Xグレードは154万円に抑えた。タントは使い勝手を向上させるユニークな装備を採用して、なおかつ価格は割安だから推奨できる。
●使い勝手がよく割安なタントの勝ち!
■価格帯が重なる中核SUV同士。どっちがいい? マツダ CX-60 vs マツダ CX-5
CX-60は新しい後輪駆動ベースのSUVで、直列6気筒3.3Lディーゼルターボなど4種類のパワーユニットを用意する。CX-5は前輪駆動ベースのSUVで、エンジンは直列4気筒のみだが、2.2Lディーゼルターボなど3種類を設定した。
ボディサイズはCX-60が165mm長く45mmワイドだが、車内の広さは同程度になる。CX-60はエンジンを縦向きに搭載して、ボンネットが長いためだ。その代わり前後輪の重量配分が優れ、運転感覚も適度に機敏に感じる。
ディーゼルのXD・Lパッケージ同士で価格を比べると、CX-60が約40万円高いが、装備も約10万円分充実する。したがって実質価格差は約30万円だ。CX-60は後輪駆動を採用して、ディーゼルエンジンも2気筒/1.1L増えるから価格差は妥当だ。
CX-60は操舵感と乗り心地に少し違和感を伴うが、マツダが追求する「魂動デザイン」と運転感覚をCX-5よりも明確に表現した。CX-60のXD・Lパッケージが最も買い得だ。
●買い得感が勝るCX-60の勝ち!
■プラットフォームが同じ人気SUV同士。おすすめは? 日産 エクストレイル vs 三菱 アウトランダーPHEV
エクストレイルは日産の主力SUVで、アウトランダーと同じプラットフォームを使う。パワーユニットは、エクストレイルは独自のe-POWERを搭載する。圧縮比を変化させる直列3気筒1.5Lエンジンにターボを装着して、発電機を作動させ、発電された電気を使ってモーターを駆動する仕組み。
アウトランダーは直列4気筒2.4Lエンジンが主に発電機を作動させ、前後のモーターを駆動する。20kWhのリチウムイオン電池も搭載され、売れ筋グレードの場合、エンジンを作動させずに85km走行できる。
推奨グレードは、エクストレイルがG e-4ORCEで価格は449万9000円、アウトランダーはPで548万5700円だ。エクストレイルは走りのバランスがよく、アウトランダーはモーター駆動の特徴を生かして車両を強引に曲げていく。充電機能の採用も考えると、価格が約100万円高くてもアウトランダーが買い得だ。
●PHEVとしては納得価格でアウトランダーの勝ち!
■ベースが同じ軽EV同士。どっちがおすすめなのか? 日産 サクラ vs 三菱 eKクロスEV
両車とも基本的な機能は共通だ。電気自動車だから加速は滑らかで静粛性も優れる。20kWhのリチウムイオン電池を搭載して、WLTCモードで航続距離は180kmだ。機能は共通だが内外装は異なる。
eKクロスEVはeKクロスと同様のデザインで、三菱車らしさを重視した。サクラはデイズとは異なり、アリアやリーフに似た仕上がりで、電気自動車らしさを表現する。
機能と価格のバランスは同程度だが、サクラは電気自動車らしさが濃厚で内外装も上質だから、一般的には推奨度が高い。しかし自宅の車庫にアウトランダーやデリカD:5と並べたいなら、eKクロスEVを選ぶのもありだ。
運転支援機能が不要なユーザーも、eKクロスEVなら上級グレードでも標準装着されずにオプションだからムダを防げる。納期も短い。お薦めはサクラだが、必要に応じてeKクロスEVを検討したい。
●EV専用デザインがオススメのサクラが勝ち!
■シビックを買うならHVか? 1.5Lターボか? ホンダ シビック vs ホンダ シビックe:HEV
シビックには1.5Lターボ、2Lをベースにしたe:HEV(ハイブリッド)、2Lターボで高性能なタイプRがある。選択に迷うのは1.5Lターボとe:HEVだ。
WLTCモード燃費は、ターボがプレミアムガソリンを使って16.3km/L、e:HEVはレギュラーガソリンで24.2km/Lになる。e:HEVの燃料代はノーマルエンジンの約60%に相当する。またe:HEVはモーター駆動だから加速が滑らかで、ノイズも小さい。
e:HEVの装備内容はターボのEXと同等で、価格は約40万円高い。ただしe:HEVは、購入時に納める税額が約12万円安く、実質価格差は28万円に縮まる。この差額なら、燃費、動力性能、加速感、静粛性などが優れたe:HEVを推奨したい。
●燃費や静粛性に優れているシビックe:HEVの勝ち!
【番外コラム01】そのほかにも軽自動車同門で食い合っているクルマあり!
軽自動車は薄利多売の商品なのに、海外では実質的に販売できない。そこでエンジンやプラットフォームを共通化した複数の車種を用意して、効率よく売っている。が、軽自動車は、全長、全幅、エンジン排気量は基本的に全車共通で、食い合いも生じやすい。
競争が生じるのは、スズキならスライドドアを装着するワゴンRスマイルとスペーシア、SUV風の外観と広い室内を兼ね備えるハスラーとスペーシアギアだ。ダイハツもタフトとタントファンクロスがSUV風で重なる。快適な居住性と使い勝手を両立させたホンダN-ONEとN-WGNカスタムも競合しやすい。
【番外コラム02】トヨタの車種 ラインナップに問題はナシ!?
トヨタは車種の削減などのリストラを進めるため、全店が全車を売る体制に改めた。
姉妹車も大半は整理されたが、国内で大量に売りたいノア&ヴォクシーは残している。ヴォクシーのフロントマスクはノア以上に派手で、価格も5万~7万円高く競合を抑えている。ハリアーとRAV4、C-HRとカローラクロスも、同サイズのSUVでありながら性格が異なり、好みの違うユーザーをカバーできる。
多少競合する車種もあるが、国内最大シェアメーカーだからラインナップも綿密だ。
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