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 ただでさえレベルの高い新型シビックタイプRの走りを、さらにグレードアップするモデューロの純正アクセサリー「テールゲートスポイラー」。サーキットなどに出かけなくても、ワインディングや高速といった日常のシーンで空力効果が体感できるアイテムとして話題だ。

 はたして本当にすごいのか? 今回はチューニング業界で活躍する自動車ジャーナリストにタイプRのステアリングをあずけ、「街乗り」「高速道路」「ワインディング」という3つのステージで「テールゲートスポイラー」の効果を確認してもらった。スポイラー付きのクルマに山ほど乗ってきた男はいったいなにを感じ、どんなジャッジを下したのだろうか!?

文/加茂 新、写真/池之平昌信

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リアスポイラーはコーナリングに弱い?

純正アクセサリーモデューロの「テールゲートスポイラー」を装着したシビックタイプR

 ホンダアクセスが、2008年にFD2型シビックタイプRから取り組んでいるのが『実効空力』というキーワード。日常速度域からでも体感できる空力効果のことで、速さを狙うためのものではなく、「誰でももっと安心して、気持ちよく走れる」ということを目標に開発している。

 そこで今回の新型シビックタイプR向けに開発されたのが、純正アクセサリーの「テールゲートスポイラー」だ。ノーマル車でもこの部分にはウイングが設けられているが、そのステーはそのままにウイングのみを交換するタイプ。翼断面形状が異なり、材質もドライカーボン製。価格は27万5000円だ。

 そして、下面に設置されているのがキーとなるシェブロン形状の実効空力デバイスだ。

ウイング下面には鋸歯状のシェブロン形状が見える

 シェブロンとは山形のパターンのことで、この「テールゲートスポイラー」ではウイングの下面にギザギザの鋸歯形状の造形が配置されている。ここがまっすぐでないことであえて小さな乱流を発生させることで、より多くの場面で体感しやすくなっているのだという。そもそもウイングは古くからあるもので、走行風の効果によってボディを下面に押し付ける役割がある。もしくはボディが持ち上げられるのを防ぐもの。それによる効果は1970年代からレースで実証されてきたが、難しいのはクルマは曲がるということ。

 いつも真っ直ぐに走っていれば、ウイングはフラットな形状で良いのだが、クルマは曲がる乗り物。ストレートでは良くても、ちょっと曲がりだすとフラットな羽ではその効果が弱くなりやすかった。直進では良いが曲がりだすと急にリアが不安定になる、といったことがレースの世界では言われていた。

ギザギザ形状が乱流を細かく切り刻む

ウイングの中央付近をガーニーフラップ形状とし、両端はあえて空気を受け流すデザインとしている

 そこで3D形状のウイングが開発された。直進にもコーナリング時にも効果を発揮する、そして、あらゆる場面で空力効果を突き詰めた結果生まれたのが、今回のシェブロン形状の実効空力デバイスなのだ。旋回から直進と、車両の姿勢が変わるあらゆるシーンに空力効果が追従し、操りやすくしてくれるのだ。

 こういったギザギザの空力的処理はボーイング787のジェットエンジン後部にも採用。シェブロンノズルと呼ばれ、排出する空気とまわりの空気が上手く混ざることで騒音が減少するという。

 今回のシェブロン形状のウイング下面も、上手く周りの空気をコントロールし、日常速度域から効くことを狙った。というか、実際にテストしたところ、テストドライバーがその効果を確認したというのだ。ギザギザ形状が乱流を細かく切り刻むのだと推測できる。

 ならば試してみようじゃないか、ということで、街乗り、高速道路、ワインディングでノーマルのウイングとホンダアクセスのテールゲートスポイラーを乗り比べてみた。テスターはチューニングカーライターのわたくし加茂である。

高速道路で印象が大きく変わった!

高速道路ではゆっくり巡航するだけでその効果が体感できた

 まず街乗り。正直40km/h程度の速度では大きな変化はないようにも感じられる。若干リアが落ち着いたような気がしなくもないが、同じ場所を同じようにグルグルしているわけではないので、正直外乱からの変化なような気もする。

 ところが高速道路に乗って、その印象は大きく変わった。80km/hくらいの巡航でも十分に変化が体感できた。リアがさらにどっしりと落ち着いてくる。よりいっそうリアに安定感が出たことで、クルマに一気に安心感が満ちてくる。別にノーマルがフラフラするわけでは決してないが、このテールゲートスポイラーにしたことで確実にクルマが左右に振られるような動きが減った。

 そして、相対的にフロントには軽快感が生まれた。リアの荷重が増えたことで、相対的にフロントの荷重が軽く感じられる。それはフロントが心許ないわけではなく、わずかに軽快になるというレベル。

リアの接地感が増すことでクルマに安心感が生まれる

 というか、そもそもFFハイパワーターボなシビックタイプRは、相応にフロントヘビーである。それを実効空力によってホンダアクセスはリフトバランスを整え、4輪の接地荷重を均一に近づけることでクルマに無駄な動きが起きることを防ぎ、横方向への動きを抑えることで、外乱に対してさらに強く、そして乗り心地を良くしようというのが狙いなわけだ。

 フロントはスムーズに向きを変えていく。シンプルにスムーズにノーズがインに吸い込まれていく。対してリアはしっかりと接地してクルマを支える。クルマに回転運動であるヨーが起きようとするところで、リアが振り出されない動きはとても重要。

リアを軸にしてノーズがインを向く気持ちよさ!

舵角一定で旋回できるループ橋でもノーズの軽快さを確認してみた

 クルマは曲がるときに回転するヨー方向への動きが生まれるが、上から見てクルマの中心に回転軸が来ると、ボンネットはインに入るが、リアは外に振り出してしまう。ドリフト的な動きになってしまうのだ。そうではなく、できればリアタイヤは横方向に動かず、ノーズがインに向いていく。これが気持ちよくて安心感を生み出す。リアタイヤはしっかりと横方向に支えてクルマがインに蹴り出す際の足場になってほしいのである。

 ホンダアクセスの「テールゲートスポイラー」によってリアの荷重が増え、リアが横方向にズレようとする動きがごくわずかになった。このリアが安定し、ノーズが軽快に向きを変えていくのは、極端に言えばまるでポルシェである。リアエンジンのポルシェ911はリアに重量物があるおかげで、リアはどっしりと待ち構える。荷重が軽いノーズはインに軽快に向きを変えていく。

ノーズの軽さが気持ちのいいコーナリングを生む

 少し大げさではあるが、実効空力によってリアの接地感が高まったシビックタイプRは、軽快なノーズと重厚なリアを手に入れ、走りがグレードアップしているのだ。

 そういった動きは普段乗りの領域から感じられる。同じ条件下でテストすればわかるだろう。また、今回ワインディングロードでの試乗も行ったが、そこでは曲がり始めにとくに感じやすい。このリアの安定感から来るスムーズなノーズのターンインは、曲がりはじめの動きが洗練されたといった感じ。

この効果を他で得るのは難しい

上が純正アクセサリー「テールゲートスポイラー」、下がノーマルスポイラー。形状も重さもまるで違う

 さらにわかりやすいのがサスペンションがソフトなコンフォートモードの時。純正サスの減衰力調整やスロットルレスポンスなどの走行モードが室内から変更できるのがこのシビックタイプRだが、コンフォートモードはとくに差が出やすい。一番ハードな+Rモードだと、かなりサスが引き締められるのでわかりにくいが、それでもステアリングの切り始めのところでリアの動きの安定感が感じられるようになった。

 ウイングは下面のシェブロン形状だけでなく、ガーニーフラップ形状の上面もそうだし、全体の断面はNACA4412というアメリカ航空諮問委員会が作った規格に準じた形状であるという。さらに左右の翼端板はAピラーをかすめてきた空気を剥離しつつ受け止める役割も持つなど、多岐にわたる空力的効果を狙って設計されている。標準装備のウイングもかなり軽量だが、それよりも軽い。

 価格はそれなりにするが、では、この効果を他のもので得られるのかというと難しい。ここまで車種に合わせて作り込まれている「テールゲートスポイラー」はアフターパーツでは早々お目にかかれない。ホンダ純正の作り込みが生み出す乗り味のカスタマイズパーツなのだ。

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投稿 日常でも空力を感じるのよ……”実効空力”で差をつけろ!! シビックタイプRの純正オプションウィングがスゴイ自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。