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「ホイールの肥大化が止まらない!」だからこそスタッドレス装着前に知っておくべきインチアップ&タイヤのこと

 「最近のクルマはとにかくホイールがデカくなっている」こう感じている人は少なくないだろう。なんでホイールは巨大化したのか? そして標準タイヤを大径ホイール仕様に変える「インチアップ」を行うオーナーも多いという。ではインチアップすると何が変わるのか? 

 また、さらに冬場に頼もしい味方になってくれるスタッドレスタイヤとは、どういう状況で活躍し、ノーマルタイヤと何が違うのか? 今回はインチアップ&スタッドレスタイヤの基本を復習していきたい。

文/長谷川 敦、写真/写真AC、ダイハツ、トヨタ、日産、ピレリ、マツダ、ミシュラン、メルセデスベンツ

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インチアップっていったい何?

「ホイールの肥大化が止まらない!」だからこそスタッドレス装着前に知っておくべきインチアップ&タイヤのこと
ホイールが大きく、相対的にタイヤが薄いのがロープロファイルタイヤ。インチアップとは、標準タイヤをロープロファイルタイヤに変更することを指している

 インチが長さの単位であることは読者の皆さんも知っているはず。現在はメートル法が世界の基準になっているが、アメリカのようにインチを主に使っている国も多く、自動車のパーツもインチ基準のままになっていることがある。つまり「インチアップ」とはあるものを大きくすることを意味している。

 実は、クルマのタイヤで言うインチアップとは、タイヤ自体ではなくそれを支えるホイールを大きくすることを指す。タイヤの外径ではなく、ホイールのみを大きくするため、必然的にタイヤの厚み(扁平率)はそれ以前より減ることになる。これをタイヤのロープロファイル(ロープロ)化と呼ぶ。

 なお、タイヤとホイールの外径はそのままでも、タイヤの幅が広くなれば扁平率はやはり変化する。しかし、今回はホイールを大きくするインチアップについて考えることにする。

インチアップのメリット

「ホイールの肥大化が止まらない!」だからこそスタッドレス装着前に知っておくべきインチアップ&タイヤのこと
標準タイヤからロープロファイルタイヤに変更することでさまざまなメリットが得られる。そのなかで最も重要なのは、実は“カッコ良くなる”かもしれない

 では、インチアップを行うと何が変わるのだろうか?

●タイヤ剛性の向上
 ロープロ化によってタイヤの厚みが減ると、特に横方向の剛性が向上する。その結果、ハンドルを切った際のタイヤ変形が少なくなり、キビキビとした応答性が得られる。

●制動力のアップ
 タイヤの厚みが減れば、横だけではなく縦方向の剛性が上がる。これはつまり、加速の際のタイヤの“ヨレ”が減少し、ブレーキング時にもタイヤが変形せずにしっかり止まれるようになるということ。また、ディスクブレーキ車の場合、ホイールサイズの拡大によって標準よりもブレーキディスクのサイズを大きくすることができ、ブレーキ性能が上がって制動力がアップする。

●グリップが高まる
タイヤの幅を変えずにインチアップを行い、空気圧も標準タイヤと同じに設定すると、形状の変化によってトレッド幅(=接地面積)が広くなる。これによって高速でカーブを曲がる際にタイヤの“踏ん張り”が利くようになり、走行安定性が高まる。

 タイヤのインチアップを行う場合、標準よりもホイール幅が広くなるケースも多い、当然このことでも接地面積が広くなり、グリップ力が向上する。

●見た目がカッコいい
 おそらくインチアップを行う人の理由の大半がコレ。ホイールが大きく扁平率の高いタイヤはいかにも速そうで、クルマのルックス向上に貢献してくれる。ただし、これは個人の好みもあるから、本当にカッコいいと思うかは人それぞれではある。

インチアップのデメリット

「ホイールの肥大化が止まらない!」だからこそスタッドレス装着前に知っておくべきインチアップ&タイヤのこと
ロープロファイルタイヤを装着したクルマはやはりカッコいい。だが、標準タイヤを基準にセットされたクルマをインチアップするとデメリットも生まれてしまう

 どんなことにも良い面と悪い面の両面がある。そこでインチアップの弊害も見てみよう。

●燃費の悪化
 インチアップによって大型化したホイールは標準よりも重くなり、ロープロ化によるタイヤの軽量化と合わせてもトータルでのタイヤ重量は増加する。これが燃費を悪くする原因となるのは容易に想像できるだろう。

 また、タイヤのグリップ力向上は同時に転がり抵抗も増やすことになり、これも燃費の低下を引き起こしてしまうのだ。

●乗り心地が悪くなる
 タイヤが扁平化するとそれまでに比べてサイドウォール(側面)が硬くなり、路面からのショックを吸収しにくくなる。つまり乗り心地は悪化してしまう。また、幅広タイヤになると走行中のロードノイズも増加する。

●コストの向上
 標準タイヤに比べてロープロファイルタイヤは高価なことが多く、それは大径ホイールも同様。つまり、タイヤだけを同サイズのものに変えるより出費が大きくなってしまうのは避けられない。

インチアップの際の注意点

 ここまでインチアップのメリットとデメリットを見てきたが、それらを考慮したうえでインチアップに踏みきりたいという人は、次にあげる点に注意してほしい。

●同じ外径のタイヤにする
 インチアップを行う際に、標準と同じ外径のタイヤを選ぶのが鉄則。タイヤが大きくなると、その回転によって速度や距離を測るメーターの表示と実際の数値に違いが生じるという大きな問題が発生する。特にスピードメーターは実際の速度より低く表示されてしまうので要注意。

●ロードインデックスを合わせる
 タイヤを変更する際に重要なのがロードインデックス(荷重指数)だ。これはタイヤが支えられる最大の負荷を示す数値であり、タイヤをインチアップする場合、元のタイヤよりロードインデックスが下がらないようにするのが鉄則。

 例えばタイヤのサイズ表記が「165/55 R14 72 H」だった場合、「72」がそのタイヤの荷重指数となる。クルマのサイズによってタイヤに加わる荷重は変化するので、交換するタイヤの荷重指数が標準のそれを下回っていないかチェックすること。ちなみに先の表記では「55」が扁平率、「R14」がインチ数(サイズ)を表している。

●装着可能か事前に確認
 インチアップによってタイヤの外径がわずかに変わったり、形状も元のタイヤと違っていたりするケースも多い。さらにタイヤの幅も異なる可能性があり、もしかすると現在のクルマに装着できないなんてことも……。このあたりはタイヤ購入の前にしっかりチェックしておきたい。

●最小回転半径をチェック
 メーカー側でインチアップを行ったモデルは、標準タイヤ装着と最小回転半径が異なっている場合がある。これはタイヤ幅の増加によって、冬場にチェーンが装着できなくなったりしないようにするための措置だ。そこまで大きな変化ではないが、知っておいて損はない。

インチダウンのメリットとデメリット

 インチアップとは違ってインチダウンを行うケースはあまり多くない。ただし、冬季に使用するスタッドレスタイヤが標準タイヤに比べてインチダウンになることは考えられる。この場合、インチダウンで起きる現象はインチアップの逆と考えてよい。

 タイヤが柔らかくなって乗り心地が良くなるのがインチダウンのメリットだが、人によってはインチダウンにより見た目が悪くなったと感じるかもしれない。これがインチダウンのデメリットだ。

スタッドレスタイヤは何が違う?

「ホイールの肥大化が止まらない!」だからこそスタッドレス装着前に知っておくべきインチアップ&タイヤのこと
雪上走行には欠かせないスタッドレスタイヤ。スパイクやチェーンで路面を引っかけるのではなく、タイヤ構造とゴムの配合でグリップを確保するのが特徴だ

 これからの季節に大活躍してくれるのがスタッドレスタイヤだ。「スタッドレス」とはスタッド(鋲・びょう)のないタイヤのことで、雪道走行時に使われるスパイク(付き)タイヤと区別するためにこの名称になった。

 スタッドレスタイヤが雪道や氷結路面で通常タイヤよりも高いグリップ力を発揮するのは多くの人が知っているはず。路面に食いつくためのスタッド(スパイク)や、チェーンがなくても滑りにくいスタッドレスタイヤにはどんな秘密があるのか?

 実は、スタッドレスタイヤには標準タイヤよりも柔らかいゴムが使われていて、さらにトレッド(接地)面のパターンも標準タイヤとは異なっている。スタッドレスタイヤのトレッド面に刻まれた溝は標準タイヤよりも深く、雪を確実につかむことができる。

 加えてスタッドレスタイヤの表面には多数の細かい切り込みが設けられ、この切込みが雪や氷の表面を引っ掛けることでスリップを防止している。

 こうした工夫の結果、路面を傷めやすく粉塵公害にもつながる金属製スタッドを使わずに雪や氷の上を走れるようになった。

スタッドレスタイヤの注意点

●早めの交換を心がける
 標準タイヤからスタッドレスタイヤに変更する時期だが、これは雪が降り出してからでは間に合わない。また、新品のスタッドレスタイヤが本来の性能を発揮するまでには200km程度の慣らし走行が必要とも言われているため、降雪の多い地方に住んでいるなら早めにスタッドレスタイヤに交換して備えておきたい。

●過信は禁物
 標準タイヤに比べれば高いグリップ力を発揮するとはいえ、やはり雪上、あるいは凍結路面が滑りやすいことに変わりはない。こうした路面を走る場合、まずはスピードを抑え、急発進&急ブレーキ、急ハンドルなどの操作を行わないようにするのが肝心だ。

●夏場の使用はNG?
スパイクタイヤやチェーンを巻いたタイヤとは異なり、ドライ路面でも走れるのがスタッドレスタイヤの強みだ。そのため1年中スタッドレスタイヤを履きっぱなしという人も意外に多いが、ゴムが柔らかいことで摩耗しやすいのも事実で、ドライ路面での性能は通常タイヤのほうが上。こうした理由から、冬季以外は通常タイヤを使用することをお薦めしたい。

 一見同じように思える黒くて丸いタイヤも、サイズや構造、ゴムの種類によってその性能は大きく変化する。まずは自身の愛車にとってどんなサイズや種類が合っているのかを知り、最適なタイヤチョイスで安全かつ楽しいドライブを実現してほしい。

「ホイールの肥大化が止まらない!」だからこそスタッドレス装着前に知っておくべきインチアップ&タイヤのこと
ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの違いを図示したもの。同じように見えてもこれだけの違いがあり、スタッドレスが雪&氷上に適しているのがわかる

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