モータースポーツへワークスとして参戦するなどしていた三菱のスポーツブランド「ラリーアート」が復活。
自動車評論家 鈴木直也が、アジアクロスカントリーラリー(AXCR)に挑むトライトンの試験車に同乗試乗、その様子をレポート!
※本稿は2022年11月のものです
文/鈴木直也、写真/MITSUBISHI、ベストカー編集部 ほか、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2022年12月10日号
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■AXCRに挑む三菱トライトンをオフロードで同乗チェック
自動車ジャーナリストという立場を離れ、一介のクルマ好きとして、最近いちばん嬉しかったこと。それは三菱ラリーアートの復活だ。
ワークス参戦ではなく現地チームへの技術支援というカタチながら、11月にタイ・カンボジアで開催される“アジアクロスカントリーラリー2022”に、トライトンのラリーカーを走らせるという。
富士ヶ嶺オフロードでの取材会、まず出迎えてくれたのはレジェンド増岡浩さん。
お会いするたびに「ラリーアートは必ず復活させる」と語っていただけに万感胸に迫るものがあるはずだが、「小さく産んで大きく育てたいね」と、謙虚に将来を見据えている。
まずは、増岡さんの教え子、開発ドライバーの小出さんのドライビングでラリー仕様トライトン(実験車両)の同乗走行を体験する。
富士ヶ嶺オフロードは本来クロカン用のコースだから、ワンミスでクルマを痛めるトラップだらけだが、小出さんの攻めること攻めること。
トライトンはラダーフレームベースのダブルキャブピックアップだから、基本的にシャシーは充分にタフだが、ダブルウィッシュボーン/リジッドリーフの足が予想以上にストロークがあって、ロードホールディングがよさげ。
「あ、ジャンプする!」といったシチュエーションでも粘り強く路面をトレースし、着地のフルバンプでもぜんぜんガツンとこない。
2.4Lディーゼルは133kW/430Nmだから競技車両としてはそれほどパワフルではないが、スピードに乗せてギャップのあるストレートを爆走するようなシーンがめちゃ似合いそう。
助手席からではあるが、タフで扱いやすそうな特性が見て取れた。
アジアクロスカントリーラリーは、マッド路面や川渡りなどが多く、スピードもさることながらタフネスが重要な要素。
ライバルはみな「実質ワークス」と見なして闘志を燃やすはずで、負けられないというプレッシャーもある。
復活ラリーアートのデビュー戦は11月21~26日。吉報を待とう!
●編集部付記
チャヤポン・ヨーター選手(タイ)が合計タイム8時間22分42秒の総合首位、リファット・サンガー選手(インドネシア)が17分14秒差の総合5位でゴール!なんと初参戦で総合優勝を果たした! おめでとう!!!
■あらためて実感! 三菱車の凄まじい走破性
いくら伝統の4WD技術とはいえ、背の高いミニバンボディでオフロード走行はどうよ? デリカD:5、乗る前はたいていの人がそう思う。ところが、乗るとびっくり。
カタチは1BOXなんだけど、ボディ剛性をはじめとする中身はクロカン4WDレベルの強靭さ。
「ここゼッタイ底付きする!?」というシーンでも、きわどくサスストローク内でショックをいなし、むしろ飛ばすほどにオフロード走行を楽しめるクルマであることに気がつく。
このD:5に比べると、アウトランダーPHEVは「走れて当たり前」と思われてむしろ気の毒。
前後2モーターの絶妙な制御で、ぜんぜん苦労なくオフロードをカッ飛ばせるけど、SUVとはいえ車重2トン超えのクルマでこの身のこなしはなかなか。
シャシーもボディも強靭に仕立てないと、ここまでの走りは実現できないよね。
(TEXT/鈴木直也)
■三菱トライトンAXCR試験車 主要諸元
・全長×全幅×全高:5300×1815×━mm
・ホイールベース:3000mm
・車両重量:━
・エンジン:直4 MIVECディーゼル+ターボ
・総排気量:2442cc
・最高出力:133kW(181ps)
・最大トルク:430Nm(43.8kgm)
・トランスミッション:6速MT
・サスペンション:(Fr)ダブルウィッシュボーン式/(Rr)リーフスプリング式リジッド
【競技用装備】
・CUSCO製フロント/リア ディファレンシャルLSD
・CUSCO製フロント/リア ショックアブソーバー(減衰力調整式)
・WORK製ホイール
・横浜ゴム社製GEOLANDAR M/T G003
【番外コラム】チーム三菱ラリーアート増岡 浩総監督はかく語りき
Q.今回のアジアクロスカントリーラリー参戦の狙いと目標は何でしょう?
A.今、三菱自動車の一番の主戦場はアジアでして、そこで販売台数が多いのがトライトンなんですね。ラリーアートは「小さく産んで大きく育てる」のを目標としていますが、まずはビジネスの実績を作らないといけない。そこで商品力強化を狙っての参戦ということです。技術的なフィードバックは、やはり大きいですから。
次に目標ですが、まぁ我々がやるからにはもちろん勝ちたいというのはあるんですが、今年は市販車に近い形でやりますので、まずは上位入賞を狙いたいと思います。
Q.今回、ラリーアートは技術支援という形ですが、ワークスとしての活動はどうなのでしょう?
A.う~ん、我々本体がやるとしたら、やはり電動車でしょうね。活動範囲がグローバルになるんで。将来的には世界に出ていきたいというのは僕の夢でもあるんですが、今はアジア地域に専念して、しっかりとした土台を作りたいですね。
Q.増岡さんはずっとラリーアートブランドの復活を望んでいましたよね。
A.そうですね。ただ僕的には今みたいなドレスアップ部品だけでなく機能部品もやりたい。誰もが欲しくなるような、走って曲がって止まれるクルマ、です。「これから」に期待していてほしいですね。
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