中国の習近平国家主席が10日、サウジアラビアでの4日間に渡る公式訪問の日程を終え、帰国の途に就いた。
習氏が2016年1月以来、約7年ぶりにサウジを訪れたのは、同国を含む湾岸6か国首脳との“サミット”会合に出席するのが主な目的だったが、最大の眼目は中国とサウジの急接近だ。日本のメディアで伝えられている以上に、欧米や日本など西側諸国に暗い影を落とす可能性をはらんでいる。
思惑と打算の一致
今回、中国が湾岸諸国首脳との会合に臨んだのは、中東地域への影響力を強めることでアジアとヨーロッパをつなぐ「一帯一路」の経済構想を推進し、アメリカに揺さぶりをかける一環で行われたことは言うまでもない。
一方、サウジの事実上の指導者、ムハンマド・ビン・サルマン(MBS)皇太子にとっては、同盟国のはずのアメリカと人権問題で外交関係が近年悪化の一途を辿り続けている。皇太子は自国の石油依存を減らし、経済成長や収益の多角化を目指す「ビジョン2030」を主導しており、中国からの投資誘致に積極的だ。
まさに思惑と打算が一致する習氏と皇太子の会談はアメリカに対して誇示するような“演出”も。ロイター通信によると、8日の会談では、皇太子は笑顔で習氏を迎え入れ、軍楽隊が両国の国家を演奏。華やかなムードに包まれた中で行われ、7月のバイデン米大統領のサウジ訪問時の「控えめな歓迎とは対照的」(ロイター)だったという。
会談に際して両国は戦略的パートナーシップ協定を締結。ファーウェイのサウジ国内の施設建設が決まり、台湾は中国に属するという「一つの中国」の原則をサウジが支持することや、両国の人権問題を追及するアメリカを念頭に内政不干渉の原則を取ることなど、会談の成果は、バイデン政権に対し挑発的だった。
両国の協定にはあの国のことも
一方で、両国の急接近はアメリカ以外に別の第3国の存在を抜きに語ることはできない。