突然だが筆者は最近63歳になった「ザ・昭和のおっさん」だ。元々、ハイテクとかが“大好物”なのだが、そんな自分でも日々進化するADAS(先進運転支援システム)や思わず「こりゃあ未来だなあ」と感じさせる機能にはニヤリとしたり、その一方で「これ本当に必要なのか?」って感じることも意外と多い。
そこで、一度使うと手放せなくなる技術、そしてデジタルリテラシーが弱いと感じている50代以上のおっさんドライバーにとって「これいらないかも~」って思える装備などを周りの意見も聞きながらまとめてみた。
文/高山正寛
写真/トヨタ、日産、ホンダ、スバル、BMW、Adobe Stock
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■あると便利、そして必要な装備は何か?
まず大前提としてADASなどの装備はアクティブ/パッシブ含め、交通事故の減少や生命を守る点でも必要だし、その進化にも当然期待している。
余談だが筆者がまだ駆け出しの編集者だった頃、ハイパワーを売りにしたニューモデルの試乗する機会に恵まれた。ちょうど安全装備について今後装着義務化されるかどうか議論されている頃、そのクルマの担当者が言い放った言葉を私は忘れない。
「安全を前面に押し出しているクルマなんて売れないんだよ」って……(実際はもっとトゲのある言葉だった)。おいおいマジかよ、って怒りすら覚えたものだが、今の時代を見て欲しい。ドライバーの高齢化、複雑化する交通事情、車両側だけでなく自転車や歩行者側のマナー低下など数え上げれば切りがないほどだ。
閑話休題。これらの問題解決にもADASや快適装備は欠かせないものになってくるが、今回のテーマである50代以上のドライバーにとってあると助かるのは「体力の消耗やストレスを極力抑える」装備だ。その代表的なものとして以下に挙げてみる。
1:ACC
「アダプティブ・クルーズ・コントロール」の略でメーカーによっては呼称も異なる。
ADASや自動運転領域でも将来進化が期待される機能だが、実際自動運転「レベル2」を達成している日産アリアの「プロパイロット2」に試乗すると、アクセルやブレーキ操作だけでなく、ステアリング操作に関しても該当する高速道路上であれば「ハンズフリー走行」も行え、体力の消耗は結構抑えられる。
50代以上のおじさんであれば、もうベテランドライバーだ。
先の信号が赤になって停車する場合、助手席の奥さんや後ろに座る子供に気を使って、停止する直前でカクンとまではいかなくてもなるべくブレーキによるショックを与えないような気づかいを普段からしていると思う。え、社長の運転手じゃないんだから、そこまで気を使ってないって?
何がいいたいのかっていうと、ACCを使って高速道路の渋滞を走ったことがある人はわかるが、停まった時のショックの少なさに驚いて、「俺にはこんな気づかい運転はできない」と思ったはず。ちょっと話は逸れましたが……。
またハンズフリー機能はなくても、前走車との距離など感知してステアリング操作も含め自然な制御が行えるという点ではVWの新型BEV「ID.4」に搭載されている「トラベルアシスト」に感動した。
この機能は現在のVW車に多く採用されているが、元々ACCとBEVの相性は良く、VWに確認しても「日々細かいアップデートは行われている」とのこと。
逆に困ったことだがACCが登場したての頃、60代の知り合い(ぶっちゃけ親類)がこれを搭載した新車を購入し「このクルマは自動運転ができるんだ」って自慢してきた時には「それはちょっと違う」と言って口論したことがある。
失礼ながらデジタルリテラシーに弱い人は「これで何でもできてしまう」と勘違いしてしまう人が多い。
わかりやすいところで言えば「スマホを買えば何でもできる」と思い、いざ使えないと「全然ダメだな」とか言ってしまう人。いやいや、それって自分で使いこなそうとしていなからでしょ、って思わずツッコミたくなる。
命を載せて走るクルマなんだからマニュアル位きちんと読みましょう、と言いたい。これってジジイの戯言なんだろうか……。決してディスっている訳ではないし、上から目線ではないのでそこはご勘弁を。
■ストップ&ゴーの多い街中では便利
1:EPB&オートブレーキホールド
従来のパーキングブレーキを電気的に制御するのがEPB(エレクトリックパーキングブレーキ)、これに連動してEPBが作動した際にそれを維持させるのがオートブレーキホールドだ。
そもそも論で言えば、ドライバーは停止時にはしっかりフットブレーキで車両を保持する必要があるのだが、これがまだ50代を超えてくると足のふくらはぎ辺りが疲れてきて、しんどいと感じることもある。
実際、市街地など頻繁に信号などによりストップ&ゴーが多い場所ではこの機能は利便性が高い。またフット式のように走行中に踏ん張った際に間違って左足で踏んでしまったというミスも防げる。
昨今では軽自動車への搭載も増えているが、気になるのはこれによるコストアップ(車両価格の上昇)という点だろうか。
2:各種カメラシステム
これは今後さらにニーズが高まっていくし、50代以上だけなく、初心者にも欲しい機能と言える。
車両後退時の確認に使うリアカメラだけでなく、昨今では車両の両サイド、フロント、そして360度全方位を映し出す「パノラミックビューモニター」なども増えてきている。「なもん、逆に煩わしい。見なくても自分の感覚で停められるわ」と文句が来そうだが……。
この機能でありがたさを特に感じるのが狭い道や対向車とのすれ違い時だ。自分の車両(車幅)感覚がしっかりと把握できず接触事故を起こすなどいろいろなケースが考えられる。
同時に昨今の車両サイズの大型化、特に全幅の拡大やデザイン重視で前方の車幅感覚が掴みづらいクルマも増えている。
こうなるとカメラシステムは絶対必要で、さらに言えば車両全体に配置された超音波センサーとの連携で接触等を減らすことができる。一度慣れてしまうと、マジヤバい装備がカメラ関係の装備ではないだろうか。
■注目! これはなくてもいいんじゃないか装備
1:アイドリングストップ
これも50代に限ったことではないが、筆者的には不要と感じている。停車時にエンジンを停止させることで燃料消費を抑えたり、Co2削減にも寄与する点は否定しないが、昨今はこの機能を非搭載にした車両も増えてきている。その代表格がトヨタヤリスだ。
この機能を搭載するということは専用のバッテリーやシステムを加えることでコスト増になるわけだが、ヤリスの場合、アイドリングストップ機構無しでも目標とした燃費性能を達成しているということで搭載を行わなかった。
特にアイドリングストップ用のバッテリーはまだまだ価格が高く、最低でも価格は倍になる(実際はもっと高いモノが多い)。
また前述したEPB&オートブレーキホールドを使う場合、アイドリングストップが作動しているとエンジン始動→ブレーキ解除→発進、とテンポが遅れてしまう。
筆者が昨今アイドリングストップを使わない理由は交差点の右折時などこれらにより発進が遅れたり、ヘタをすると慌ててしまうことで急発進してしまったり、後続車からの追突やクラクションを鳴らされたりする可能性を感じるからだ。
アイドリングストップ装着による燃費向上をカタログ燃費で比べてみた。最近は同じエンジンとトランスミッションで、アイドリングストップの有り/無しがあるモデルは非常に少ない。例として挙げたのはトヨタ アルファード/ヴェルファイア(2.5Lエンジン車)。2台のアイドリングストップ「有り」と「無し」のカタログ燃費は、以下のとおり。
■アルファード(2.5ガソリン車/FF)
WLTCモード総合/無:10.8km/L、有:11.4km/L
WLTCモード市街地/無:7.3km/L、有:8.2km/L
WLTCモード郊外/無:11.7km/L、有:12.1km/L
WLTCモード高速/無:12.8km/L、有:13.2km/L
2:音声コントロールシステム
これは50代以上にはかなり「キツイ」機能ではないだろうか。音声認識技術はAppleの「Siri」、Googleの「OK Google」などを使い、コマンドを音声で入力することでステアリングから手を離さずにナビ&オーディオ&空調、その他“多彩”な機能が使える。
これ自体は今後のクルマにおいても期待される領域だが、これがなぜ「キツイ」のだろうか。
今の若い人はこの手のシステムを自由自在に扱っている。実際街中を歩いていても「OK Google」とか発話している人をよく見かける。
しかしこれが50代以上だと上手く使いこなせていない。正確に言えば発話することが「恥ずかしい」のだ。
今の音声認識技術は昔に比べてレベルが上がっている。認識率もかなり高い。実際、これらのシステムが搭載されている高級車に乗っている50~60代の複数ユーザーに話を聞くと皆、口を揃えて「使っていない」という。
非常に興味深かったので深掘りして聞くと、
ケースA:50台男性→まず同乗者がいる時に「OK Google」とか発話すること自体が恥ずかしい。
ケースB:60代の外資系企業の役員の方(語学超堪能)→「普段iPhoneを使っているし、CarPlayが使えるのだが『Hey Siri』の『Hey!』ってスラングに近いのでこの場合は『Hi』じゃない? よほど親しくないと『Hey』は使わないから、使いたくない」と。こういう意見もあるのか、と納得した。
ケースC:50代男性→発話して欲しい機能が出てこない時はガッカリするから。いわゆる認識エラーなのだが、A同様、隣で同乗者に笑われたことで「二度と使わん!」と心を閉ざしてしまった。
まあ、無理にとは言わないし、最新技術も好奇心で使ってみたいと思っている人にとって車両側に「拒絶」されるというのはメンタル的に堪えるだろう。
この他にも、最近装着が拡大されているジェスチャーコントロールという機能がある。
3:「ジェスチャーコントロール」の機能
これはインフォテインメントシステム周辺にあるセンサーを使い、手で空間をサッと動かすことで予めプリセット(または設定可能)の機能を動かすことができる。具体的には音楽の曲送り/曲戻しやエアコンの温度調整など操作可能の内容は多い。
しかし、これも音声同様にセンサー側の判別ミスもまだ多く、そのうち使わなくなってしまう確率が高い。音声認識も同様だが「面倒臭いから実際のボタンを圧して操作したほうが早い」と感じるのだ。
■単なるワガママじゃね? これは今後期待していい装備
最後に今は受け容れられなくても今後は必要になってくる装備を紹介する。
1:駐車支援機能パーキングアシスト
元々は高級車に設定されるような上級装備だったが、昨今は方式自体に差はあるが、日産サクラやトヨタアクアなどのモデルにも採用されている。この機能、まずその駐車位置を特定する段階でイラッとしてしまうケースがあるそうだ。
もちろん車両側がカメラやセンサーを使い駐車可能の候補を提案してから操作を行うのだが、そういう「提案」とかに対して「面倒くさい」と感じてしまい(自分の停めたい場所じゃない位置を提案されることが嫌)結局面倒臭いから使わなくなってしまうそうだ。
スマホの画面上をぐるぐると回し続けるリモートパーキングも面倒くさいかも。
ってさすがにそれは単なるワガママだろう! とツッコミを入れたくなるが、今後高齢化が進み、自分がイメージしていたように車両を駐車できなくなる機会は増えていくはずだ(あくまでも個人差あり)。
ただ実際に使ってみると自分で停めるより上手かったりするケースも少なくない。運転寿命を延ばす意味でもこういう装備にはある程度頼っても良いと思う。ゆえに50代以上のオジサンは今のうちから慣れておくことをオススメする。
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