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初の死亡事故で「ノーヘル」の危険性が注目される電動キックボード! 普及している米国との違いとは?

 2022年9月25日、東京都中央区で電動キックボードを運転していた男性が死亡する事故が発生した。国内で初めての電動キックボードによる死亡事故となる。男性は運転時、ヘルメットを着用しておらず、また飲酒していたという。

 本来、電動キックボードはヘルメットの着用義務があるが、今回事故を起こした男性の場合、ヘルメット着用は任意であり、着用の義務はなかった。なぜ、「ヘルメット着用は任意」となっているのか? さらに、普及が進んでいるアメリカの電動キックボード事情はどうなっているのか、モータージャーナリストの桃田健史氏が解説する。

本文/桃田健史
アイキャッチ写真/tsubasa-mfg – stock.adobe.com
写真/Adobe Stock

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■国内で初の電動キックボード死亡事故が発生!

国内で初めて電動キックボードによる死亡事故が発生。男性は運転時、ヘルメットを着用しておらず、また飲酒していたという(tsubasa-mfg – stock.adobe.com)

 ついに、死亡事故が発生してしまった。

 警察庁の発表によると、事故が起きたのは2022年9月25日の午後10時45分頃。場所は、東京都中央区のマンションの駐車場で、男性が乗る電動キックボードが車止めにぶつかり、男性は前側に向かって転倒。頭を強く打ったことが原因で死亡した。

 防犯カメラの映像から、男性は飲酒運転の疑いがあるという。

 電動キックボードについては、2022年4月19日に衆議院で道路交通法の一部改正に関する法律案が可決されたタイミングで「ヘルメットは努力義務」「16歳以上であれば運転免許は不要」という点がクローズアップされ、国会審議でも電動キックボード(等)の安全な利用を懸念するさまざまな意見が出た。

 これを受けて、テレビ、新聞、ネットなどで電動キックボードの安全性に対する意見や疑問が広く報道されたことが記憶に新しい。

 そうしたなかで今回、国内で初めての電動キックボードによる死亡事故となった。

■わかりづらいヘルメット着用のルール

 警察庁が2022年6月15日に公開した関係資料では、電動キックボードが関与する交通事故の発生状況が公開されている。

 それによると、2020年は事故件数は4件で、負傷者数が5人。2021年は27件で28人、そして2022年は1月から3月までの3カ月間で9件、9人だった。全体で40件、42人となった。

 ここで、確認しておきたいのは、電動キックボード(等)に対する改正道路交通法が施行されるのは、2024年夏頃になる見込みだ。

 これにより、「特定小型原動機付自転車」という新しい車両区分が生まれることで、「ヘルメット着用は努力義務」となる。

 つまり、今回事故が起きた時点では、電動キックボードの車両区分は原動機付自転車であるため、道路交通法上はヘルメットの着用義務があったのだ。

 ところが、今回事故を起こした男性の場合、ヘルメット着用は任意であり、着用の義務がなかった。

 そう聞くと、なんともわかりづらい。

■「ヘルメット着用は任意」となっているわけ

本来、電動キックボードはヘルメットの着用義務があるが、実証試験ではヘルメット着用は任意に(Михаил Решетников– stock.adobe.com)

 少し踏み込んで説明すると、そもそもは、国が新しいビジネスのシーズ(種)を見つけようと、「規制のサンドボックス」と言われる実証試験に2019年から電動キックボードを加えたことが始まりだ。

 それが2020年になり、産業競争力強化法という形になって、国として電動キックボードのシェアリングビジネスを行うベンチャー企業を支援するようになった。

 ここでいう”産業競争力”とは、日本がさまざまな産業で海外に対して負けないための競争力を指す。

 その実証試験で、ベンチャー企業側から「海外での電動キックボードシェアリング事例を考慮して、日本でもヘルメット着用を任意にして欲しい」という要望が出た。

 結果的に、現在も全国各地で行われている電動キックボードの実証試験では、最高速度を時速15kmとして「ヘルメット着用は任意」となっているのだ。

 今回、事故で死亡した男性も、この実証試験でのサービスを使っていた。  

 だから、ノーヘルでも交通違反扱いにならないのだ。

■電動キックボードはアメリカで発達

アメリカでのヘルメット着用ルールは州や地域によって異なるが、着用を強く推奨するとしているケースが多い(Fxquadro – stock.adobe.com)

 では、海外での電動キックボード事情はどうなっているのか?

 最も早く普及が進んだのはアメリカだ。早いといっても、大手シェアリング事業者のLimeやBirdが2017年から2018年にかけて事業を初めており、それからまだ4~5年しか経っていない新しいビジネス領域だ。

 こうしたベンチャーがカリフォルニア州でサービスを始めて、多少の時間差があって全米各地に事業展開し、これと同時にさまざまな電動キックボードのシェアリング事業者が誕生した。

 ここでアメリカ特有の事態が起きる。州、または市や郡(カウンティ)によって電動キックボードに関する道路交通法の内容が違うのだ。

 アメリカでは、州のDMV(運輸局)が道路交通法に関する独自の考えを持っており、自動車免許の取得可能年齢にも差がある。

 電動キックボードについても使用可能な最低年齢には差があり、多くの場合は16歳以上だが、州によっては14歳や15歳というケースもあり、なかでもミシガン州などでは12歳となっているなど、違いがある。

 また、通行区分についても、車道走行はNGで自転車専用道だけといったケースが多いが、これは州運輸局のみならず、市や郡によるさまざまなローカルルールが存在するからだ。

 ヘルメット着用についても、州や地域によって考え方に多少の違いがあるが、これまでの事故事例を鑑みて、着用を強く推奨するとしているケースが多いようだ。

■各国で異なるヘルメット着用義務の有無

 このほかの諸外国での電動キックボード事情については、警察庁が取りまとめた資料によると、ヘルメット着用については違いがある。

 具体的には、英国では義務はなくて推奨。フランスでは都市部では義務はなく推奨だが、都市部以外では義務。ドイツでは義務はなく推奨。そして韓国では義務化として未着用の場合は罰金を導入予定としている。

 電動キックボードはさまざまな国や地域にとって新しい乗り物であり、日本でもこれから事故事例や社会状況の変化を踏まえて、ヘルメット着用や使用年齢についてさらなる議論が進むべきだと思う。

 そのうえで、使用条件や使用場所でのローカルルールも必要になるはずだ。

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