2022年9月2日、ついに発売開始となったホンダ 新型シビックタイプR。搭載する2L、直4VTECターボは、10ps/20Nmアップし国産モデル過去最高の330ps/420Nmへと向上した。
ここでは、新型シビックタイプRの進化点をチェックするとともに、同じくハイパワー2Lターボを搭載するライバル、VWゴルフR、メルセデスAMG A45 S 4MATIC+と比較する。
本文/松田秀士、写真/池之平昌信、平野 学、VW、メルセデスベンツ
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■続々登場するハイパワー2Lターボ車
新型シビックタイプRのK20Cターボエンジンは国産モデル過去最高の330ps/420Nmを発生させ、6速MT仕様だ。そこでライバルのスペックを見てみよう。
先日、日本導入が発表されたVWゴルフRの新型20Rイヤーズは333ps/420Nm(ノーマルは320ps)を発生。ほぼシビックタイプRと同等の出力で、トランスミッションは7速DCT。
もう1台、2Lターボではずば抜けた出力を発生するのがメルセデスAMG45 S 4MATIC+だ。その出力は421ps/500Nmとずば抜けている。トランスミッションは8速ATだ。
国産勢のこれまでのハイパワーはランエボXファイナルエディションの313ps/43.0kgm、先代WRX STIの308ps/43.0kgm、そのコンプリートカーであるS208の329ps。つまり、新型シビックタイプRはこれら歴代パワーモデルを上回る出力を達成しているわけだ。
実際、新型タイプRの加速感は非常に力強くトランスミッションが3ペダルMTであること、さらにライバルモデルが4WDであることに対してFFであることから1430㎏と軽量。
ちなみにライバルである、ともに4WDを採用するメルセデスAMG A45 S 4MATIC+が1670㎏、ゴルフRが1540㎏である。つまり、新型タイプRはライバルよりも110~230㎏も軽量なのである。
■コーナリング性能が進化した新型シビックタイプR
この軽量車体さらにリアのマルチリンクサスペンションの進化、そして構造用接着剤の塗布エリアを先代比3.8倍に拡大するなどしてコーナリング性能をアップさせてきた。もちろん、これらの基本スペックをスープアップさせたとしても、最終的に路面と接地するタイヤ性能が重要であることに違いなく、265/30ZR19サイズのミシュランパイロットスポーツ4Sが採用されており、専用開発されたもの。
特にホイールはリバースリム構造と呼ばれる、コーナリング中にタイヤのイン側の歪を低減して内側の接地圧を安定させる構造が施され、なおかつ4本で先代ベースモデル比約3㎏の軽量化を達成している。
つまり、タイプRにはフロントの2輪しか駆動力が伝わらないため、目いっぱいフロントタイヤを使い切る工夫が凝らされているのだ。
■420Nmを受け止めるサスペンションのセッティングはハード目
しかし、いくらタイヤの性能を上げ、それを使い切るホイール構造が使われているとはいえ、400Nm超ものトルクを2輪駆動だけでコントロールするのには無理がある。ましてやTypeRはFF。FFは駆動にプラスして操舵も行うのだ。
タイプRのフロントサスペンションはストラット式。転舵軸と入力軸の2軸を持つデュアルアクシス・ストラットサスペンションで、ホンダが以前から採用しているタイプだ。キャンバー剛性も高めていて、深い操舵角までフロントのグリップをアップさせている。
サスペンションは全体的にハードで、特にリア回りは高速コーナーのターンインでもリアの安定感を確保する最大のセットアップがなされているといえる。
FFの場合、フロントタイヤには正(加速)にも負(ブレーキング)にも、さらに転舵時にもストレスがかかるのでタイヤグリップをドライバーがコントロールできる。しかし、リアタイヤは負(ブレーキング)の方向にしかなく、またタイヤへのスリップアングルは車体が旋回し始めて発生するので、フロントに対して遅れがちになる。
このため早くリアタイヤにグリップを発生させる必要があり、サスペンションのセッティングはハード目となる。サーキットのような路面が比較的滑らかなサーフェスでは遺憾なく性能を発揮するが、アンギュレーションが多様で強い一般道のような路面では100%性能を生かし切れるとはいえず、さらに乗り心地も減衰力可変ダンパーを採用しているとはいえ、ある程度犠牲にしなくてはならない。
■2Lターボ車の最適解はどのモデル?
ライバルの輸入車2車が4WDを採用している理由がそこにあると思えるのだ。限界性能の追求よりも実用域でのロードホールディングを目指すと、この300ps/400Nm超えのパワーに対しては4WDが必要であると結論付けているのだろう。
特にこの3車はFF車をベースとしているからエンジンとトランスミッションは横置きで、フロント荷重は大きい。それに対して軽いリア(タイヤ)に正にも負にも駆動を与えコントロール性を上げる。また、リアデフに左右の駆動力をコントロールする機能を採用して、コーナリング中のベクタリング機能によってより曲がりやすくする。
タイプRの場合、ベクタリング機能はアジャイルハンドリングと呼ばれる各輪に個別に制動をかけるブレーキベクタリングだ。ブレーキベクタリングはポルシェなどもEBD(エレクトリック・ブレーキ・ディファレンシャル)として古くから使われてきた技術。もちろんタイプRはFFゆえに培われた細かい制御技術が導入されている。
つまり、これらのことから一般道でのパフォーマンスに向いているのはやはり4WDのゴルフRであり、その究極はメルセデスAMG A45 S 4MTIC+といえる。
ただ、コストパフォーマンスという見地からタイプRの500万円切りはバーゲンプライスと言え、輸入2車の購入よりも余った予算でホンダアクセス製(モデューロ)の実行空力デバイスのリアウイングを導入するなど楽しみは多い。
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投稿 果てしなきパワーウォーズの行く末! 2Lターボは新型シビックタイプRのFFか、ゴルフRの4WDか、最適解はどっちだ!? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。