2013年、女優・グラビアモデルとして活動をはじめ、翌2014年、連続テレビ小説『マッサン』(NHK)に登場するワインのポスターモデル役で話題を集めた柳ゆり菜さん。
映画『純平、考え直せ』(森岡利行監督)、映画『無頼』(井筒和幸監督)、『ゆるキャン△』シリーズ(テレビ東京系)など多くの映画、ドラマに出演。2022年12月9日(金)に映画『散歩時間~その日を待ちながら~』(戸田彬弘監督)が公開される柳ゆり菜さんにインタビュー。
◆高校時代、EXILEのバックダンサーを務めたことも
大阪で生まれ育った柳さんは、小さい頃は可愛いものが嫌いで洋服は黒、髪の毛はショートカットでランドセルも黒を選ぶような子どもだったという。
「スカートは1枚も持っていなくて全部ズボン、それもダボダボのズボンをはいていました。母は可愛い洋服を着て欲しかったのに、髪の毛もすぐ短く切っちゃうし、困っていました」
-ダンスはいつ頃からはじめたのですか-
「8歳からです。最初は姉に付いて行って、ちょっとイヤイヤだったんですけど、最終的には自分のほうがハマっちゃって、10何年続けました」
-EXILEのバックダンサーをされたこともあるとか-
「はい。EXPG(EXILE PROFESSIONAL GYM)に特待生という制度があって、それで行かせていただいたときに、入ってまだ1週間くらいだったんですけど、バックダンサーを務めることになって。高校2年生のときだったんですけど、とてもいい経験でした」
-その頃はもう芸能界志望だったのですか?-
「はい。女優になりたいという気持ちを中学3年生のときに自覚したので。すごいテレビが好きで、ドラマを見ていても、『私だったらこう演じたい』って考えながら見ていたんですけど、その感覚がどんどんどんどん大きくなるにつれて、演技がしてみたいと思うようになっていきました」
-ご家族はどのように?-
「ビックリしたみたいです。『ゆり菜が芸能界に行くとは思わなかった』って言われましたけど、『やってみたら?』という感じでした」
-お姉さまはタレントの柳いろはさんですね-
「そうです。姉が先にはじめていたので、その影響もあるんですかね。だからこそ行きたくない世界ではあったんですけど、演技がやりたかったら行くしかないなって」
2013年4月、前の事務所のオーディションを受けた柳さんは、特別賞を受賞して所属することに。オーディションからわずか2カ月後には、映画『うわこい』(吉村典久監督)で映画初出演にして主演を果たす。
-この映画は三角関係の恋のお話だと思っていたら、実は過去にすごいことがあったという設定で驚きました-
「そうなんですよ。私のキャラがサイコパスという感じで(笑)。子どものときに恐ろしいことをやっていたという、めっちゃ怖い話でした。まだデビューしてすぐだったので、何が何だかわからないまま必死でやっていました。懐かしいですね。
撮影も短くて1週間もなかったはずなんですよね。だから、セリフを覚えるのが大変でした。演技という演技ができてなかったかもしれないと思うと、恥ずかしいですけど、とにかく必死でした」
※柳ゆり菜プロフィル
1994年4月19日生まれ。大阪府出身。2013年、芸能界デビューし、数多くのグラビアに登場し写真集も出版。2015年、『週刊プレイボーイ』WEB版「週プレNEWS」による「2015年上半期グラビアアイドル表紙登場回数ランキング」で“初代グラビアクイーン”の座に。映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(河合勇人監督)、映画『ブルーヘブンを君に』(秦建日子監督)、映画『ゾッキ』(監督:竹中直人・山田孝之・齊藤工)、『ゆるキャン△』シリーズ(テレビ東京系)など映画、ドラマに多数出演。2022年12月9日(金)に映画『散歩時間~その日を待ちながら~』が公開される。
◆連続テレビ小説に登場するワインのポスターで話題に
2014年、連続テレビ小説『マッサン』(NHK)で柳さんが演じたのは、日本で初めてヌード写真を用いた壽屋(現・サントリー)の“赤玉ポートワイン”のポスターのモデルをモチーフにしたみどり役。朝ドラでのヌードポスターが話題に。
-『マッサン』のポスター、とてもステキでした-
「ありがとうございます。うれしいです」
-反響がかなり大きかったでしょうね-
「そうですね。初めての朝ドラで、一瞬しか出てこない役だったのでびっくりしました。デビューして間もなくで朝ドラがどういうものなのかもあまりよくわかっていないときだったんですけど、すごいことなんだなって。
でも、怖くてオンエアが見られなかったです。まだ客観的に自分を見ることができていない時期だったので、テレビとかに出ている自分を見るのがすごくイヤで、見られなかったです。
オンエアを見ることができるタイミングだったのに、テレビはつけたものの、ずっと手で顔を覆って伏せていて、自分が出たシーンが終わった頃に顔を上げて…という感じでした(笑)。
そうしたら、どんどん電話がかかってくるようになって。マネジャーさんに『すごい反響が良かったよ』って言われたので、『じゃあ、録画していたのを見てみる』って(笑)。でも、恥ずかしいって思っていました、そのときは」
-2015年には初代グラビアクイーンに選ばれて、グラビアアイドルとして広く知られるようになりました-
「そうでしたね。それだけ多くの人がグラビアモデルとして認知してくれたというか、すごく勢いよくやらせていただいたんだなあって思っています」
2017年には、テレビアニメが原作の実写版映画『破裏拳ポリマー』(坂本浩一監督)に出演。これは、破裏拳流拳法の継承者にしてさすらいの探偵・鎧武士(溝端淳平)が、特殊装甲服・ポリマースーツを身に着けて正義のヒーローに変身し、盗まれたポリマースーツを取り戻すべく戦う様を描いたもの。
柳さんは、武士が借りている事務所の大家さん・南波テルを演じた。
-アクションシーンもかなりありましたが、最初はアクションの予定はあまりなかったそうですね-
「アクション指導を受けて『ちょっとだけ受け身とかやってみてください』と言われてやってみたら、結構動けると思われたのか、少しずつアクションシーンが増えていったんです。現場で教えてもらってすぐに演じるという感じだったんですけど、監督に『アクションできるじゃん』って言われました(笑)」
◆濃厚なラブシーン、暴力シーンにも体当たりで挑戦
柳さんは、グラビアアイドルとして活躍しながらドラマや映画、舞台の仕事もしていたが、もっと本格的に映画に出たいという思いが強くなっていったという。
「どうやってシフトチェンジしようみたいなことを明確に考えていたわけではないんですけど、グラビアを主にやっていたときから映画に出たくて、何度か出させていただいたりしているうちにより強くなっていきました。
だから出たときに恥をかかないように、ワークショップに行ってお芝居の勉強をしたり、色々な監督の作品を観たりして勉強はしていたんです。そのタイミングが来たときにチャンスをつかもうと思って」
2018年に公開された映画『純平、考え直せ』は、柳さんにとってターニングポイントとなる作品。この映画は、歌舞伎町を舞台に、鉄砲玉になることを命じられた若いチンピラ(野村周平)と、彼に偶然出会った女性・加奈(柳ゆり菜)との運命の3日間を描いたもの。
柳さんは、濃厚なラブシーン、殴る蹴るの暴力を受けるシーン、髪の毛を無理やり切られるシーンなどに体当たりで挑んだ。
-『純平、考え直せ』で、女優さんとして認知された方が多いのではないかと思いますが出演されることになったのは?-
「この映画は公開まで2、3年かかっているので、撮影は2016年だったんですけど、私が出た舞台をプロデューサーさんが観にきてくださって、『柳さんでぜひ』というお話になって、そう言っていただけたことにビックリしました。
その段階の台本を見せていただいたら、髪を切られるシーンが坊主で、スキンヘッドになる予定だったんです。ストーリーもちょっと違っていて、そっちのほうがハードだったんですけど、それはそれですごくおもしろかったし感動して、『ああ、こんな恋がしてみたいなあ』って思ったんですね。
それで、私がこの作品に全身全霊で挑まない限り、映画の人たちが私のことに気づいてくれることはないなってそのときに思ったので、『これは絶対にやるべきだ!』と思ってやりました」
-実際に撮影が始まってどうでした?-
「大変でした。精神がすり減っていました。当時はわけもわからず、今ならわかることもあるし、今だったらもっとできたなあと思うところもいっぱいあるんですけど、あのときの私の全力は出せたんじゃないかなと思います」
-清楚(せいそ)な女の子がヤクザの鉄砲玉になろうとしている主人公に恋をして変わっていく様がとても良く出ていましたし、柳さんの本気度が伝わってきました-
「ありがとうございます。上手(うま)い下手で言ったら、多分下手だったと思うんですよ。でも、本気度のところでみなさん評価してくださって、本当にありがたい話だと思っています」
-まだデビューされて2、3年で挑戦されたのはすごいと思いました-
「何か年齢がいったからやるというのは、やめたいと思ったんですよ。『グラビア現役の今だからこそやって、こいつ根性あるなというところをもっと知ってもらいたい』という思いもありました。
5、6年前なので、そのときと今ではいろいろなことが変わっているし感覚も違うと思いますけど、今、あれを当時の私の年齢の女の子にやってほしいとは別に思わないんですよ。
それを避けて通れるなら避けて通っていいんじゃないかとは思うんです。だけど、あのときの私の立場と映画への愛と溢(あふ)れるエネルギー、熱情が存分に出せる映画だったと思います。
やらなくてもいいんじゃないかと言う人もいましたが、私にとっては激しいベッドシーンとかも全部、映画の過程の中で必要なものだなって台本を読んだ時点で思ったので、これだったらやりたいということでやらせていただきました。
難しいんですけど、あれでいろんなものが変わったし、人の見方が変わったし、あの作品が好きだと言ってくださる方がいまだに結構いるのでうれしいです」
-殴る蹴るの暴行を受けて、髪の毛を無理やり切られるシーンもありました。あれは地毛ですよね?-
「はい。そうです。最初は坊主になるという設定だったので、『髪を切れる?』と聞かれたときに、私が『全然いいですよ、髪ぐらい』って言って、かつらでもできたんですけど、地毛でやることになりました。
でも、切られたときは悲しかったです。スクリーンに出ている表情のままだと思います。何ともいえない気持ちになりました。まだ情報解禁ができなかったので、そこからはかつら生活が始まりました(笑)」
この映画に出たことによって、役者として生きていく覚悟ができたという柳さん。2020年には井筒和幸監督の映画『無頼』でヒロインを演じることに。次回はその撮影エピソード、舞台裏も紹介。(津島令子)
ヘアメイク:菅野綾香